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2007.12

 アフター・ウェディング 「アフター・ウェディング」の画像です

 スザンネ・ビア監督。デンマーク映画。インドで孤児の援助活動に続けるデンマーク人ヤコブは、デンマークの実業家から巨額の寄付金の申し出を受ける。ヤコブは、実業家ヨルゲンとの交渉を成立させるが、彼の娘の結婚式に出席するよう強引に誘われ、衝撃の事実を知る。そして、とても濃い人間ドラマが展開される。

 ストーリーは、やや人工的な感じを受ける。登場人物の造形も、幾分浅く感じられる。しかしながら、描き方には明確な作家性が表れている。目や指などの極端なクローズアップを多用し、人間存在の生々しさを突きつける。一方で風景や室内装飾で繊細な映像美を見せる。俳優たちの振幅の大きな演技も見事だ。また一人、デンマークの魅力的な監督に出会えた。私の2007年を締めくくる佳作。


 AVP2 エイリアンズVS.プレデター 「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」の画像です

 12月28日、劇場公開初日に「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」を見た。2004年に公開された「エイリアンVS.プレデター」の待望の続編。宇宙船の中でプレデターの体内からチェストバスターが誕生するというラストシーンが、どんな展開をみせるのか、大いに期待していた。ニュー・エイリアンは、船内でプレデリアンに成長し、プレデターを次々と殺戮。コントロール不能となった宇宙船はコロラドの森に墜落する。

 ところどころ、見応えのある場面はあるものの、全体に散漫な印象。凶暴だが美しくもあるエイリアン、醜いが戦闘シーンがかっこいいプレデターの良さが、生かされていない。「エイリアンVS.プレデター」に比べ、映像にキレがない。肝心のニュー・プレデター「ザ・クリーナー」とプレデリアンの戦いも、迫力に欠ける。わくわくしないのだ。子供も容赦しない痛ましいシーン、市民を簡単に犠牲にする政府の無慈悲さ、原発のある場所に原爆を投下する無謀さが、強く印象に残った。唐突なラストシーンが、続編を予告するが、見たいと思えない。やれやれ。年末にこんな悲しい思いをするとは。


 ベオウルフ/呪われし勇者 「ベオウルフ/呪われし勇者」の画像です

 ロバート・ゼメキス監督が、英国文学最古の英雄叙事詩を映画化した。原作はファンタジーの源流と言われている。研究者の中にはJ・R・R・トールキンがおり、『ホビットの冒険』や『指輪物語』への影響が指摘されている。キリスト教の価値観を相対化するような英雄的な生き方が示されている。

 6世紀のデンマークが舞台。フローズガール王が盛大な宴を催す中に、醜く巨大な怪物グレンデルが姿を現し、人々を虐殺する。このシーンの残酷さはすさまじい。戦士ベオウルフが、素手でグレンデルを撃退する場面も見応えがある。怪物の母を演じたアンジェリーナ・ジョリーの妖艶さも、楽しみのひとつ。ただ、映画としては物足りない。「ポーラー・エクスプレス」では、柔らかな3Dアニメが、とても人間らしく動いていた。一方「ベオウルフ」は、実際の俳優にCGを組み合わせたが、かえって俳優の微妙な表情が失われ、まるで前編が3Dアニメのように見えた。せっかくアンソニー・ホプキンス、ジョン・マルコビッチといった名優を起用しながら、その良さを活かせなかった。


 スリザー 「スリザー」の画像です

 「ドーン・オブ・ザ・デッド」で脚本を務めたジェームズ・ガンの初監督作。地球に飛来した不気味な宇宙生命体が増殖して人々を襲い、さらに寄生された人間もゾンビ化する。平和な田舎に突然起こる悲劇。B級SFお決まりの設定だ。デビッド・クローネンバーグやジョン・カーペンターの作品に魅了されたガン監督は、懐かしい味わいのコメディSFホラーを作り上げた。グロテスクさとコミカルさのブレンド具合が、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。

 ガン監督は「新しいものを見せつつ、昔人々を恐がらせたクリーチャーたちの復活を遂げさせたかった」と話している。グラントやブレンダの不気味な変身ぶりは、CGではなく昔ながらの特殊メイクを駆使。その質感は、やはり味わい深い。正当派美女のエリザベス・バンクスが、派手なアクションをこなすあたりは、現代的だ。


 エクスクロス 魔境伝説 「エクスクロス 魔境伝説」の画像です

 魔境伝説?と思っていたら、女子大生が人里離れた温泉地「阿鹿里(あしかり)村」を訪れる展開。魔境ではなく、秘境温泉ドラマじゃん。入浴シーンもあるし。ホラー映画なのに、あまり怖くなくて、爆笑アクションシーンや確信犯的なB級表現が満載。昔の夕張国際映画祭で、深夜に上映してみんなで大騒ぎしたようなタイプの映画だ。感動ものに慣れた人たちに、映画の別な楽しみ方を伝える作品に仕上がっている。

 上甲宣之(じょうこう のぶゆき)の痛快ホラー小説『そのケータイはXXで』を、深作健太監督が映画化。舞台あいさつで「上映中はお静かになさらず、悲鳴を上げたりつっこんだり、大騒ぎしながら楽しんでください」とコメントしているように、楽しめるB級娯楽路線を目指した。ドリフターズのお化けコントを意識したという。

 しより役・松下奈緒と愛子役・鈴木亜美のダブル主演だが、鈴木亜美の迫力が勝っていた。しかし、なんと言っても圧巻なのはレイカ役小沢真珠(おざわ・まじゅ)。ロリータファッション+眼帯+巨大ハサミというぶっ飛んだスタイルで登場する。中でも、鈴木亜美とのバトルシーンは、異様にテンションが高い。すごいものを見たという感じだ。


 椿三十郎 「椿三十郎」の画像です

 森田芳光(もりた・よしみつ)監督が、黒澤明監督の「椿三十郎」の脚本を再使用して映画化した。織田裕二が椿三十郎を演じている。これまでの作品で一番良いかもしれない。しかし、やや子供じみている。若侍は、松山ケンイチを含め、みんなあまりにも子供だ。室戸半兵衛役の豊川悦司も、鋭さに欠ける。全体に、子供じみた感じを受ける。それだけ、現代が子供じみているということなのだろうか。

 脚本が素晴らしいので、とても面白い。映像もよどみなく流れる。佐々木蔵之介の演技には、笑わせられた。14年ぶりに本格的に映画出演した睦田夫人役の中村玉緒も、良い味を出していた。ただ、黒澤明監督の「椿三十郎」で、あまりにも有名な最後のすさまじく血の吹き出す決闘シーンはカットされ、椿三十郎が切るところはスローの映像になっている。まったく迫力がなく、拍子抜けした。


 
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