キネマ点心のロゴです

pinキネマ霊園pin キネマフォーラム pin掲示板


 竜馬の妻とその夫と愛人  「竜馬の妻とその夫と愛人」の画像です

 2002年作品。日本映画。115分。配給=東宝。監督=市川準。原作・脚本=三谷幸喜。製作=富山省吾。エグゼクティブプロデューサー=森知貴秀。撮影=小林達比古。美術=山口修。録音=橋本泰夫。照明=中須岳士。編集=三条知生。音楽=谷川賢作。おりょう=鈴木京香、西村松兵衛=木梨憲武、菅野覚兵衛=中井貴一、虎蔵=江口洋介、坂本竜馬=トータス松本、勝海舟=橋爪功、谷 千城=嶋田久作、椿屋の客A=ギリャーク尼ヶ崎


 竜馬が愛した女=おりょう、竜馬を愛した男=菅野覚兵衛、竜馬を愛した女を愛した男=西村松兵衛、竜馬を愛した女が愛した男=虎蔵。4人が織り成すラブコメディ。題名からして「コックと泥棒、その妻と愛人」(ピーター・グリーナウェイ監督)をパロディにしている。ただし、内容は全然違う。テンポの良いギャグで引っ張っていくタイプの三谷幸喜と、物語りを中断しながらたゆたう映像をみせる市川準。正反対とも言える対照的な二人がどんな作品を生み出すのか、楽しみにしていた。

 期待通りたくさん笑わせて、最後にほろっとさせて、そして本当の最後にあっと言わせるという三谷幸喜の入念な脚本。市川準はコメディに叙情性を持ち込み、観る者を考えさせる。もたつく場面もあったが、全体的には協働作業は成功したと言える。不思議な雰囲気の佳作だ。中井貴一の巧みなコメディアンぶりが印象的。木梨憲武は、演技が表面的に見えるシーンもあるが、クライマックスではしっかりと感動させた。おりょう役の鈴木京香は、最近立て続けに良い仕事をしている。貫禄すら感じさせる名女優になった。


 DRIVE  「DRIVE」の画像です

 2002年作品。日本映画。102分。配給=日本ヘラルド映画。監督・脚本=SABU(サブ)。製作総指揮=樫野孝人、谷徳彦、坂上直行。製作プロデューサー=久保田修、平野隆。撮影=佐藤和人。照明=大坂章夫。アートディレクター=丸尾知行。音楽=山方浩。朝倉=堤真一、朝倉のおば=根岸季衣、銀行強盗=大杉漣、銀行強盗=安藤政信、銀行強盗=寺島進、抜け駆けした銀行強盗=筧利夫、強盗を脅す男=松尾スズキ、朝倉の彼女=柴崎コウ、ライブハウスのシンガー=松雪泰子


 奇想天外なアイデアやスピード感に満ちたストーリー展開で、観客を楽しませてくれるSABU監督。これまでの作品は、「主人公が突然事件に巻き込まれ、破滅へと突き進んでいく」という共通の構造を持っていた。しかし、今回は意外な展開を見せる。ネタばらしになっても、作品としての面白さは変わらないから書いてしまうが、なんとハッピーエンドが用意されているのだ。これも、監督の「驚かしのアイデア」なのかもしれない。

 主人公役は相変わらず堤真一。しかし、マンネリではない。持ち前のキャラクターを存分に生かしながら、SABUワールドを支えている。銀行強盗役の大杉漣、安藤政信、寺島進、筧利夫もそれぞれにいい味出している。抜け駆けした筧利夫以外は、新たな生き方を見つけるというストーリーも、意外な感じ。幼いころに両親が相次いで自殺した朝倉(堤真一)を育てたおば役の根岸季衣が、怪演しているのも見物。松雪泰子のパンクロッカーも、板についていた。


 天国の口、終りの楽園  「天国の口、終りの楽園」の画像です

 2001年作品。メキシコ映画。106分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ。監督=アルフォンソ・キュアロン。脚本=アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン。製作=ジョージ・ベルガラ。撮影監督=エマヌエル・ルベツキー。美術監督=ミゲル・アルバレス。音楽=ホセ・アントニオ・ガルシア。衣装デザイン=ガブリエラ・ディアケ。フリオ=ガエル・ガルシア・ベルナル、ルイサ=マリベル・ベルドゥー、テノッチ=ディエゴ・ルナ、ハノ=フアン・カルロス・レモリーナ、アナ=アナ・ロペス・メルカード、セシリア=マリア・アウラ


 メキシコの自然を背景にした17才の少年ふたりと人妻のロードムービー。ラテン的な雰囲気の中で、青春と人生のはかなさとかけがえのなさを描いている。開放的な性を前面に押し出しながら、人間の孤独や弱さを静かに見つめている。導入部から、画面の半分にボカシがかかるという、ひどい修正に怒りながらも、少年たちの若々しい無軌道ぶりを微笑ましく感じた。なかなかの佳作。

 ヒロインのルイサを演じたマリベル・ベルドゥーは、スペイン的な情熱と死の影を兼ね備えていて、華やかさは乏しいものの、なかなか魅力的。プロポーションも少年好みかな。フリオ役のガエル・ガルシアとテノッチ役のディエゴ・ルナは、息のあった演技をしていた。ラスト近くのキスシーンが印象的。実際でも友人同士だという。


 インソムニア  「インソムニア」の画像です

 2002年作品。アメリカ映画。119分。配給=日本ヘラルド映画。監督=クリストファー・ノーラン。製作総指揮=スティーブン・ソダーバーグ、ジョージ・クルーニー、トニー・トーマス。原作=ロバート・ウエストブルック。撮影監督=ウォリー・フィスター。美術=ネイサン・クローリー。編集=ドディ・ドーン。衣裳デザイン=ティッシュ・モナハン。音楽=デビッド・ジュリアン。ウィル・ドーマー=アル・パチーノ、ウォルター・フィンチ=ロビン・ウィリアムズ、エリー・バー=ヒラリー・スワンク、レイチェル・クレメント=モーラ・ティアニー、ハップ・エクハート=マーティン・ドノバン、フレッド・ダガー=ニッキー・カット、チャールズ・ニューバック=ポール・ドゥーリー、ランディ・ステッツ=ジョナサン・ジャクソン


 極めてユニークな手法で観る者を「メメント」に縛り付けたクリストファー・ノーラン監督の新作。白夜のアラスカを舞台に、猟奇殺人と不眠症の刑事というお膳立てで、どんな独創的な映画が出来上がるのかと思っていたが、ごく普通のサスペンスを、時系列に沿って展開する普通の作品だった。

 アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクという名優たちが登場するので、映画としての出来は悪くはない。しかしながら、俳優たちの演技を楽しむだけなら、全裸のままゴミ袋に入れられていた17歳の少女の死体は、髪を洗われ、爪を切られていたという設定は必要無かったのでは。作品の面白さは、刑事の生きざまにあったのだから。


 ジェイソン・X  「ジェイソン・X」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。91分。配給=ギャガコミニュケーションズ。監督・共同製作=ジム・アイザック。製作総指揮=ショーン・S・カニンガム。製作=ノエル・カニンガム。アソシェイト・プロデューサー=マリリン・ストーンハウス。脚本=トッド・ファーマー。プロダクション・デザイン=ジョン・デンダートマン。撮影監督=デリック・アンダーシュルツ。美術監督=ジェームズ・オズワルド。視覚効果スーパーバイザー=ケリー・レプコウスキー。メイクアップ・スーパーバイザー=ステイーヴン・デュプイス。SFX=ブニス・ベラーディ。衣装デザイン=マキシン・ベイカー。編集=デビッド・バンドマン。音楽=ハリー・マンフレデイーニ。ジェイソン・ボーヒーズ=ケイン・ホッダー、ローワン=レクサ・ドイグ、テクドロイドKAY-EM14=リサ・ライダー、ウィマー博士=デビッド・クローネンバーグ、ツナロン=チャック・キャンベル、ロウ教授=ジョナサン・ポッツ


 9年ぶりにジェイソンが帰ってきた。10作目。「ジェイソンX 」は、「ジェイソン・テン」であると同時に、新しいX としてのジェイソンを表している。未来の宇宙船の中で殺りくを繰り返すジェイソン。何とも期待させる荒唐無稽な設定だ。そして期待通り、何でもありのB級SFアクション・ホラー・Hコメディになっている。ふんだんに詰め込んだパロディの数々。とことん楽しませてもらった。

 最初に悪徳科学者としてデビッド・クローネンバーグ監督が登場するのが、嬉しい。そして、とても2455年とは思えない女の子たちの衣装デザインが、笑える。笑えるシーンは多いが、何といってもドロイド役のリサ・ライダーが好演。バージョンアップしたジェイソンと対決するシーンは、いい味出していた。新世紀版「13金」は、思わぬ掘り出し物。生みの親・ショーン・S・カニンガムが製作総指揮しただけのことはある。


 ウインドトーカーズ  「ウインドトーカーズ」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。134分。配給=20世紀フォックス映画。監督=ジョン・ウー(John Woo)。製作=テレンス・チャン、トレイシー・グレアム、アリソン・R・ローゼンツウィグ 、ジョン・ウー。製作総指揮=C・O・エリクソン。脚本=ジョン・ライス、ジョー・バッティア。撮影= ジェフリー・L・キンボール。音楽=ジェームズ・ホーナー。ジョー・エンダーズ=ニコラス・ケイジ(Nicolas Cage)、ベン・ヤージー=アダム・ビーチ、オックス・アンダーソン=クリスチャン・スレイター、エリック・ガニーヘルムスタッド=ピーター・ストーメア、チャールズ・チック・ロジャーズ=ノア・エメリッヒ、ニコラス・パパス=マーク・ラファロ、ロナルド・ハリー・ハリガン=ブライアン・ヴァン・ホルト、ジョン・ネリー・ネルズ=マーティン・ヘンダーソン、チャーリー・ホワイトホース=ロジャー・ウィリー、リタ=フランシス・オコナー(Frances O'Connor)、メリッツ=ジェイソン・アイザックス


 この作品は、新帝国主義となったアメリカの戦意高揚映画ではない。第二次世界大戦での実話をもとにした白人とナバホの友情の物語である。戦争を見つめるジョン・ウーの独自のスタンスを感じた。過酷な状況下で育っていく友情は感動的だ。人々がアリのように見える大時代的な戦争シーンと対照的な休息時のハーモニカと笛のジャムセッションの素晴らしさ。ジョン・ウー監督は、随所に見せ場を用意している。

  しかし、一方の日本兵は、ひたすら攻撃し死に続ける「敵」でしかない。敵の内面、葛藤を見ようとしないという意味では、新帝国主義の思考と軌を一にしている。かつての西部劇でのカウボーイたちと闘うネイティブ・アメリカンの描かれ方と、とても似ているともいえる。日本人だから、第二次世界大戦だから、ことさら気になったというわけではないと思う。


 バイオハザード  「バイオハザード」の画像です

 2002年作品。ドイツ・イギリス・アメリカ合作。101分。配給=アミューズピクチャーズ。監督・脚本= ポール.W.S.アンダーソン(Paul W.S. Anderson)。原案=カプコン「バイオハザード」。製作=ベルント・アイヒンガー、サミュエル・アディダ、ジェレミー・ポルト、ポール.W.S.アンダーソン。特殊効果スパーバイザー=リチャード・ユリシッチA.S.C.。音楽=マルコ・ベルトラミ、マリリン・マンソン。編集=アレグザンダー・バーナー 。撮影= デヴィッド・ジョンソン。プロダクション・デザイナー=リチャード・ブリッドグランド。アリス=ミラ・ジョヴォヴィッチ(Mila Jovovich)、レイン=ミシェル・ロドリゲス(Michelle Rodriguez)、マット・アディソン=エリック・メビウス、スペンサー・パークス=ジェイムズ・ピュアフォイ、キャプテン・チャド・カプラン=マーティン・クルーズ、ジェームズ・ワン・シェード=コリン・サーモン、J.D.サリナス=パスクエール・アリアルディ、リサ・アディソン=ヘイケ・マカッシュ


 前作「イベント・ホライゾン」は、さまざまなテクニックを駆使したSFサイコホラーで、中世を思わせるデザインが印象的だった。ただ、ブラックホール=地獄というあきれかえる設定にしらけ、どのアイデアも生煮えで二番煎じというマイナスイメージが強かった。しかし、何故か忘れられない映画だった。今回はゲーム「バイオハザード」の基本設定と雰囲気を借りながらも、独自の登場人物とストーリー展開で飽きさせない。古臭い価値観を主張することなく、メタリックな美意識で映像を統一し、シャープな恐怖を盛り上げることに専念している。ねらいは成功した。

 序盤に登場するレーザービームによる人間さいの目切りもインパクスがあったが、新しいゾンビ映画としてもグロテスクになる一歩手前の演出が心憎い。「エイリアン」を連想させる閉塞空間での恐怖演出も、見事に生かされている。ゲームのファンであり出演を望んでいたミラ・ジョヴォヴィッチは、美しく力強いヒロインを熱演。好感が持てた。「ガールファイト」で強烈な存在感を放ったミシェル・ロドリゲスは、チャーミングさを備えてタフな女性戦闘員を演じている。最近はやりの、男性陣の影が薄いアクション映画だ。


 
やむちゃ・バックナンバー
1996年       4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1997年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1998年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1999年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2000年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2001年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2002年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月

点です バーのカウンター(HOME)へ

 Visitorssince2002.09.03