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2004.05

 ビッグ・フィッシュ 「ビッグ・フィッシュ」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。125分。配給=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。監督=ティム・バートン。脚色=ジョン・オーガスト。原作=ダニエル・ウォレス。製作=リチャード・D・ザナック、ブルース・コーエン&ダン・ジンクス。製作総指揮=アーン・L・シュミット。撮影監督=フィリップ・ルースロAFC/ASC。美術監督=デニス・ガスナー。編集=クリス・リーベンゾンA.C.E。衣裳デザイナー=コリーン・アトウッド。音楽=ダニー・エルフマン。若き日のエドワード・ブルーム=ユアン・マクレガー、エドワード・ブルーム=アルバート・フィニー、ウィル・ブルーム=ビリー・クラダップ、サンドラ・ブルーム=ジェシカ・ラング、魔女=ヘレナ・ボナム=カーター、ノザー・ウィンズロー=スティーブ・ブシェミ、エーモス・キャロウェイ=ダニー・デビート、若き日のサンドラ・ブルーム=アリソン・ローマン、ドクター・ベネット=ロバート・ギローム、ジョセフィーン=マリオン・コティヤール


 父と子の確執と和解を描いたファンタジックな作品。ユアン・マクレガーの芸達者ぶりは、「ムーラン・ルージュ」以上だ。おとぎ話のような、荒唐無稽の物語に違和感なく入り込める。イマジネーションの広がりは、いかにもティム・バートンらしい。一万本の水仙畑のシーンは、現実離れしているが美しい。

 しかし、確かにティム・バートンは変わった。淋しさに耐えながら孤独と暗黒を楽しみ、世界を痛烈に茶化していたバートンは、もういない。予定調和的な世界が描かれる。父親のほら話が現実化するラストシーンは切ない美しさに満ちていた。ただ、血の永続性を語ってしまうバートンは、父親を美化する以上に保守的になっている。大人になるということは、保守的になるということではないはずだ。


 スキャンダル 「スキャンダル」の画像です

 2003年作品。韓国映画。124分。配給=シネカノン+松竹。監督=イ・ジェヨン。原作=ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ「危険な関係」。脚本=イ・ジェヨン、キム・デウ、キム・ヒョンジョン。撮影=キム・ビョンイル。照明=イム・ジェヨン。美術=イム・ジェヨン。音楽=イ・ビョンウ。チョ・ウォン=ペ・ヨンジュン、チョ夫人=イ・ミスク、チョン・ヒヨン=チョン・ドヨン、クォン・イノ=チョ・ヒョンジュ、ソオク=イ・ソヨン、左大臣の妻=チョン・ヤンジャ、ユ長官=ナ・ニハル、ソオクの母=イ・ミジ、チョン・ウォンの側仕え=チェ・ソンミン、ウンシル=ユン・ソンニョ


 成人指定作品。フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロの「危険な関係」韓国版というよりも、オリジナル色の強い作品。18世紀末、李朝時代の豪華絢爛で爛熟した貴族社会を描いている。男女の複雑な関係が時代の雰囲気を浮かび上がらせる。主演のペ・ヨンジュンは、冷血にしてドンファン、そして孤独な男チョ・ウォンという屈折した難しい役を優雅に演じてみせる。始まり方は安直だったものの、彼が愛に目覚め、これまでの生き方との葛藤に苦しむあたりから、物語が引き締まってくる。そして、ぶざまな死に方が、実に見事だ。

 イ・ミスクは、美貌と貫禄をそなえ、権謀術策にたけたチョ夫人役を演じている。鮮やかな色彩の韓服を着こなして艶やかだったが、逃亡のため船の中で失意の底に沈んでいる姿の方が美しかった。結婚前に急死した夫に9年間も貞節を守り続けている未亡人ヒヨン を演じたチョン・ドヨンの清楚さは、対照的。薄氷の張った湖の上を歩いて湖底に沈む自死の場面は、耽美的に表現されている。ペ・ヨンジュンに誘惑され妊娠する16歳の側室ソオクを熱演したイ・ソヨンは、大きな瞳が印象的で純真だが奔放な少女を好演した。


 アタック・ナンバーハーフ2 全員集合!  「アタック・ナンバーハーフ2 全員集合!」の画像です

 2002年作品。タイ映画。105分。配給=クロックワークス。監督・脚本=ヨンユット・トンコントーン。製作=ウィスーット・プーンウォララック。撮影=サヨムプー・ムックディープロム/ジラ・マリクン。美術=プティポン・アロンペン。音楽=アモーンボン・メータクンナヴァット。衣装=エカシット・ミープラスゥートクン。ジュン=チャイチャーン・ニムプーンサワット、ノン=ジョージョー・マイオークチィ、チャイ=ジェッダーポーン・ポンディー、モン=サハーパープ・ウィラーカーミン、ピア=ゴッゴーン・ベンジャーティグーン、ウィット=アピチェート・ウォンカウィー、ビー監督=シリタナー・ホンソーポン、三つ子のエイプリル=プロマシット・シッティジャムロゥンクン、三つ子のメイ=シッティポン・シッティジャムロゥンクン、三つ子のジューン=アヌチャー・ジャッゲーオ、アン=ハタイラット・チャルーンチャイチャナ


 「アタック・ナンバーハーフ」が帰ってきた!。メンバーも、ほとんど前回と同じで、前作の過去と、優勝後の時期を描いている。前作は実話に基づくスポ根コメディで抱腹絶倒のパワー炸裂だったが、今回は登場人物を落ち着いて丁寧に紹介していく感じ。前作に感激した私は、懐かしさいっぱいで観ていたが、サイドストーリー中心で同窓会的な雰囲気が物足りないという人もいただろう。確かに説明的でパワーが落ちている。

 それでも、ジュン、モン、ノン、ピア、ウィット、チャイの6人が登場すると、それだけで私は嬉しくなる。ぜひとも、前作を観た上で「2」を観ることをお勧めする。仲違いしていたジュンとノンの和解場面には、じーんとなる。終盤の再結成したサトリーレックがニセモノチームと国体出場をかけて戦う場面は、もっともっと白熱したシーンが観たかった。


 死に花  「死に花」の画像です

 2004年作品。日本映画。120分。配給=東映。監督=犬童一心。原作=太田蘭三(角川書店刊)。脚本=小林弘利、犬童一心。製作=横溝重雄、大里洋吉、早河洋。企画=遠藤茂行、宮下昌幸、木村純一。プロデュース=伊東満。プロデューサー=木村立哉、橘田寿宏、福吉健、西田なおみ、松田康史。撮影=栢野直樹。照明=磯野雅宏。主題歌=元ちとせ「精霊」。音楽=周防義和。美術=磯田典宏。録音=浦田和一。編集=阿部瓦英。菊島真(73歳)=山崎努、穴池好男(78歳歳)=青島幸男、庄司勝平(73歳)=谷啓、先山六兵衛(74歳)=長門勇、源田金蔵(80歳)=藤岡琢也、伊能幸太郎(72歳)=宇津井健、図書館の美女=戸田菜穂、井上和子=星野真理、明日香鈴子(64歳)=松原智恵子、青木六三郎(99歳)=森繁久彌


 犬童一心監督には、いつも驚かされ、感心する。この作品は、高齢者の映画ではあるが、青春映画であり、恋愛映画であり、高齢者と若者の交流映画であり、何よりも心温まるファンタジー映画だ。高級老人ホームで生活する高齢者たちが、死ぬ前に一花咲かそうと銀行強盗を計画するという物語だが、そこにたどり着く前も捨て難い。本人の希望通りのスタイルで本人がビデオで司会するジャズ葬の場面や、驚くべき焼却炉心中も十分に面白い。銀行強盗のために必死で穴を掘る過程にも、ユーモアあふれるアイデアがちりばめられている。そして、あっと驚愕するラストへとつながっていく。

 山崎努、青島幸男、宇津井健、谷啓、長門勇、藤岡琢也の個性が際立つ。熟練俳優の持ち味を、犬童監督は上手く引き出している。現場での円滑な協力関係が実感できる。森繁久彌も、じつに味のある演技だ。そして松原智恵子が、妙に若々しくみえる。若者の井上和子役・星野真理は、超ベテラン俳優たちに負けずに奮闘し、はつらつとしていた。


 ドーン・オブ・ザ・デッド  「ドーン・オブ・ザ・デッド」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。100分。配給=東宝東和。監督=ザック・スナイダー。脚本=ジェイムズ・ガン。製作=ストライク・エンターテイメント、ニュー・アムステルダム・エンターテイメント。撮影監督=マシュー・F・レオネッティA.S.C.。プロダクション・デザイナー=アンドリュー・ネスコロムニー。編集=ニーヴン・ハウィー。音楽スーパーバイザー=G.マーク・ロズウェル。音楽=タイラー・ベイツ。特殊メイク=デヴィッド・リロイ・アンダーソン。衣装デザイナー=デニーズ・クローネンバーグ。アナ=サラ・ポーリー、ケネス=ヴィング・レイムス、マイケル=ジェイク・ウェバー、アンドレ=メキー・ファイファー、スティーブ=タイ・バレール、テリー=ケヴィン・ゼガーズ、CJ=マイケル・ケリー、ニコール=リンディ・ブース


 「ドーン・オブ・ザ・デッド」は、ジョージ・A・ロメロ監督の記念碑的な作品「ゾンビ」をリメイクしたザック・スナイダー初監督作品。スピード感あふれる壮絶な映像によって、現代のゾンビ映画に恥じない作品になった。すでにタイトルから、無気味なハイテンションだ。映像の切り取り方が気持ち良いのは、監督がCM界のディレクターだったからだろう。俯瞰シーンの多用や粗い映像を挿入する編集も成功している。

 ゾンビは、じわじわ迫るのではなく、全速力で走って襲いかかるので、恐怖はジェットコースター並み。そのため、ショッピングモールという舞台の特性は、あまり生かされていない。その分、緊張感を持続させる、さまざまな仕掛けが用意されている。登場人物のめりはりも、バランスが良い。「死ぬまでにしたい10のこと」の好演が記憶に新しいサラ・ポーリーは、華奢なようでシンがつよい看護婦アナを手堅く演じていた。


 ぼくは怖くない 「ぼくは怖くない」の画像です

 2003年作品。イタリア映画。109分。配給=アルバトロス・フィルム。監督=ガブリエーレ・サルヴァトーレス。原作=ニコロ・アンマニーティ。脚本=ニコロ・アンマニーティ、フランチェスカ・マルチャーノ。撮影=イタロ・ペトリッチョーネ。美術=ジャンカルロ・バズィリ。音楽=ペポ・シェルマン、エツィオ・ボッソ。衣装=パトリツィア・ケリコーニ、フローレンス・エミール。ジョゼッペ・クリスティアーノ、マッチア・ディ・ピエッロ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ディーノ・アップレーシャ、ジュリア・マットゥッロ 、ディエゴ・アバタントゥオーノ、ジョルジョ・カレッチャ


 山々を背にした麦畑の美しさに眼を奪われ、子どもたちの冒険に微笑みながら、巧みに物語に引き込まれた。主人公の少年ミケーレは廃屋に入り、トタンでふさがれた穴を発見。その中には1人の少年が鎖でつながれていた。そして、ミケーレは両親たちの話しを聞き、この少年と両親の驚くべき関係に気づく。のどかなストーリーは、にわかにミステリーの色を帯び始める。

 物語の背景をくどくどと説明せず、あくまで10歳の少年の視線で映画を貫いたことで、とてもスリリングな作品に仕上がった。がさつな大人たちに比べ、子どもたちが皆魅力的だったが、中でもミケーレ役のジョゼッペ・クリスティアーノが素晴らしい。絶望的な結末にせず、希望を残すラストシーンが心にしみた。ヴィヴァルディやプッチーニの音楽が効果的に使われている。さわやかさと苦さが交錯する傑作。


 キル・ビル Vol.2 「キル・ビル Vol.2」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。136 分。配給=ギャガ・ヒューマックス共同。監督/脚本=クエンティン・タランティーノ。“ザ・ブライド“キャラクター原案=Q&U。製作=ローレンス・ベンダー。製作協力=ディード・ニッカ−ソン、前田浩子。製作総指揮=ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、エリカ・スタインバーグ、E・ベネット・ウォルシュ。撮影監督=ロバート・リチャードソン。美術監督=デヴィッド・ワスコ、ツァオ・ジュウビン。衣装デザイン=小川久美子、キャサリン・マリー・トーマス。編集=サリー・メンケ。武術指導=ユエン・ウーピン。特殊メイクアップ=K.N.B.エフェクツ・グループ。ザ・ブライド/ブラック・マンバ=ユマ・サーマン、ビル=デビッド・キャラダイン、バド/サイドワインダー=マイケル・マドセン、エル・ドライバー/カルフォルニア・マウンテン・スネーク=ダリル・ハンナ、パイ・メイ=ゴードン・リュ−、エステバン=マイケル・パークス、オルガン奏者=サミュエル・L・ジャクソン


 問答無用の驚異的なアクションシーンの連続で圧倒した「キル・ビル Vol.1」に比べ、「キル・ビル Vol.2」は、やたらに説明シーンが多い。アクションシーンがあっても、あっという間に終わってしまう。マカロニ・ウェスタンやカンフーも、呆れるほどの奔放さはない。壮絶な復讐の旅は、失速して愛の物語へと収まる。

 唯一の見せ場と言えるのが、ダリル・ハンナが演じたエル・ドライバーとの死闘。久しぶりに見るダリル・ハンナは、美貌の悪役としての貫禄十分。アイ・パッチの裏に隠された過去が明らかになり、その伏線がうまく生かされる。しかし、それまでの展開があまりにも長過ぎる。ただ、音楽はタランティーノのセンスが爆発していて楽しい。


 パッション 「パッション」の画像です

 2004年作品。アメリカ・イタリア合作映画。127分。配給=日本ヘラルド映画。監督・製作・共同脚本=メル・ギブソン。プロデューサー=ブルース・デイヴィ。撮影監督=キャレブ・デシャネル。プロダクション・デザイナー=フランチェスコ・フリジェリ。セット・デコレーター=カルロ・ジェルヴァーシ。衣装=マウリツィオ・ミレノッティ。イエス・キリスト=ジム・カヴィーゼル(James Caviezel)、マグダラのマリア=モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)、イエスの母マリア=マヤ・モルゲンステルン(Maia Morgenstern)、ディスマス=セルジオ・ルビーニ(Sergio Rubini)、サタン=ロザリンダ・チェレンターノ(Rosalinda Celentano)、ピラト=イヴァノ・マレスコッティ、クラウディア=クラウディア・ジュリーニ、ユダ=ルカ・リオネッロ、使徒ヨハネ=リスト・イーフコフ


 メル・ギブソンは、「パッション」の構想に12年の歳月をかけ、30億円の私財を投じたという。脚本は、全編ラテン語とアラム語。鞭打たれ、十字架を背負い、磔にされるイエスの姿を克明に、誇張と思えるほど凄惨に描いている。残酷なシーンの連続。その中に、ときおり折り込まれる穏やかな回想場面が胸をうつ。

 メル・ギブソンの思い入れは伝わってくる。しかし、その思想は頑迷だ。無力で愚かな大衆と聖なる救世主という古い図式を、圧倒的な映像の力を借りて押し付けているだけだ。彼がインタビューで答えているように、ガンジーを描くようにイエスを描いたというのは嘘だ。サタンが登場し、イエスが復活することで、この作品はキリスト教布教映画になった。残念ながら、その枠を越えていない。


 
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