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ドリームガールズ | ![]() |
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ビル・コンドン監督「ドリームガールズ」。ビヨンセ・ノウルズ 、 ジェイミー・フォックス 、 エディ・マーフィらが共演している。よどみのない計算されたストーリー展開。会話が自然にミュージカルに変わる魅力的な場面の連続。音楽をめぐる人間関係の軋轢、創造と商売の葛藤というおなじみのテーマながら、迫力のある歌声によって、見事なエンターテインメントに仕上がっている。ただ、ラストシーンが,あまりにも奇麗に決まっていたので、かえって感動が薄れたかもしれない。 |
魂萌え! | ![]() |
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桐野夏生(きりの・なつお)の同名ベストセラー小説を阪本順治(さかもと・じゅんじ)監督、風吹ジュン主演で映画化。59歳の専業主婦の敏子(としこ)は、63歳の夫・隆之が心臓麻痺で急死し、伊藤昭子(あきこ)と名乗る女性によって、長く隠されてきた夫の秘密が明らかになる。平穏だった生活は一変し、自らの人生を見つめ直し第二の人生へと踏み出していく。敏子役・風吹ジュン、昭子役・三田佳子の対決は、なかなかの迫力。対照的に、カプセルホテルで出会う不思議な老女・宮里との会話は、コミカルだ。老女・宮里役の加藤治子のひょうひょうとして演技が、素晴らしい。一方、男たちは、皆自分勝手で、だらしない。 スッピンで通した風吹ジュンの新鮮な演技は、確かに見事。主演女優賞にふさわしいと思う。しかし、自立を求めて映写技師になり、「ひまわり」を映写して終わる結末には、違和感を覚えた。世の中そんなに甘くない。過度に映画へのオマージュを捧げる作品はは、かえって映画を歴史にしてしまうように感じる。「魂萌え!」は、初老期の映画という新しい領域を切り開いたといわれているが、感性的な古さは否定できない。 |
ダーウィンの悪夢 | ![]() |
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2004年作品。オーストリア・ベルギー・フランス合作。107分。監督=フーベルト・ザウパー(Hubert Sauper)。 タンザニア第二の都市ムワンザを舞台にしたドキュメンタリー映画。ビクトリア湖からは、白身魚ナイルパーチの切り身がヨーロッパ・日本に向けて大型ジェット輸送機で輸出されている。しかし、食料輸出は一部の人を潤すだけで、飢餓、貧困、HIV感染のまん延、武力紛争の続発というアフリカのかかえる問題を解決していない。工場主、漁師、輸送機パイロット、ストリートチルドレンら、さまざまな人々を見つめアフリカの構造的な貧困問題を浮き彫りにしている。 この映画は、外来魚ナイルパーチを悪者にしている作品ではない。映画の宣伝の仕方は、明らかに間違っている。ナイルパーチによる生態系の激変、一大魚産業の出現、住民生活の破壊を示し、観ている者に考える時間を与える。この作品は、ヨーロッパに対して「武器を輸出し魚を輸入する関係を変えろ」と訴えているのだ。タンザニアの生活を地獄と表現した批評が目立つが、これも極端な単純化だと思う。別の意味では、日本だって地獄なのだ。この力のある映像に満ちたドキュメンタリーの多面性、繊細さに、もっと目を向けたい。 |
不都合な事実 | ![]() |
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2006年作品。アメリカ映画。96分。配給=UPI。監督=デイヴィス・グッゲンハイム 。製作総指揮=デイヴィス・グッゲンハイム 、ジェフ・スコール 。音楽=マイケル・ブルック。出演=アル・ゴア。 アメリカの元副大統領アル・ゴアが、急速に温暖化が進む地球の現状を豊富なデータと簡潔な説明によって訴えるドキュメンタリー作品。環境問題のドキュメンタリーは、自然の映像が主体になるケースが多いが、この作品はゴアのプレゼンテーションを中心に構成している。このプレゼンが、実に見事なのだ。 アメリカにおいて、地球温暖化という問題が、科学的な常識にすらなっていない現状に驚くが、日本の場合は近い将来の問題として片付けられ、危機感が乏しい面もある。しかしゴアの肉声は、今ここにある危機としての地球温暖化を実感させる。深刻なテーマを扱いながら、ときにユーモアを交えた説明に、引き込まれる。地球温暖化懐疑派に対する丁寧な反論、絶望している人達への希望の提示。1000回を超える講演の中で、ゴアのプレゼンは、磨きがかかっていく。そして熱心な講演活動が、ゴアの個人史と交差し、さらに説得力を増す。巧みな構成だ。 「不都合な事実」という題は、なかなか意味深である。科学的な事実が政治によって隠されていることへの憤り。しかし、政治批判は最小限にとどめている。それが、逆に政治的な深刻さを浮き彫りにしている。最後に、簡潔な呼びかけが置かれている。個人のエコロジカルな選択の大切さとともに、政治家の選択の重要さも指摘している。そして、このメッセージにさえ、くすりと笑わせるユーモアがあり、さすがだと思った。 |
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