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2004.09

 SURVIVE STYLE5+ 「SURVIVE STYLE5+」の画像です

 2004年作品。日本映画。120分。配給=東宝。監督=関口現。企画=多田琢。原案=多田琢。脚本=多田琢。撮影=シグママコト。美術=山口修。衣裳=宇都宮いく子。音楽=JAMES SHIMOJI。石垣昌広=浅野忠信、石垣の妻・ミミ=橋本麗香、CMプランナー・洋子=小泉今日子、催眠術師・青山=阿部寛、小林達也=岸部一徳、小林の妻・美沙=麻生祐未、小林の長女=貫地谷しほり、小林の長男=神木隆之介、空き巣・津田=津田寛治、空き巣・森下=森下能幸、 空き巣・J=Jai WEST、通訳・片桐=荒川良々、ロンドンから来た殺し屋=ヴィニー・ジョーンズ(Vinnie Jones) 、町医者・山内=三浦友和、製薬会社社長・風間=千葉真一


 この作品は、かっこ良く見せようとしているが、とても格好の悪い作品に仕上がっている。クールなギャグを決めようとして、ごてごて、べたべたとした肌触りが残る。ギャグが上滑りしていて、物語の流れが悪い。120分を90分くらいに圧縮し、軽やかに展開すれば印象も変わっただろう。各パートを無理につながない方が良かった。ひどく野暮ったいラストに失望した。新しいようで、とても古臭い感性に支配されている。CM的センスを生かした「下妻物語」や「茶の味」といった傑作とは、比較にならない。

 ストーリーは評価できないが、豪華な出演者たちの怪演は、なかなか楽しい。CMプランナー役の小泉今日子は、初めてかっこわるい役に挑戦している。下ネタ連発に驚く。催眠術師役の阿部寛は、こってりした演技で小泉今日子とベッドシーンを演じている。そして催眠術にかかったままの岸部一徳の演技は、驚くべき結末を呼び寄せる。浅野忠信は、残念ながら持ち味を生かしていない。橋本麗香は最初から死体として登場し、何度も生き返ってアクションとコスプレを披露する。美しい。橋本麗香のプロモーションビデオに徹したら、面白かったのにと思う。残念だ。


 レインボーマーチ映画祭 「199X年の必殺技」の画像です

 セクシャルマイノリティの人権回復を訴える第8回レインボー・マーチin札幌2004が、2004年9月19日に行われ、初めて1000人以上の参加者を記録した。パレード後の集会では、昨年に続き上田文雄札幌市長がレッドリボンを胸につけてパレードの意義を高く評価するスピーチをおこなった。パレードに先立ち、17日にキノカフェ(札幌市中央区南3条西6丁目、南3条グランドビル2F)で、レインボーマーチ映画祭が開催された。A、B、Cの3プログラムと特別上映で構成。私はBプログラムと特別上映を観た。

 Bプログラムは、今年の「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」でもっとも注目を集めた作品。クリエイター10人(今泉浩一、iri、うららさとこ、庚延年、タカサキケイイチ、田口弘樹、張由紀夫、長谷川健治朗、畑智章、平井優子)によるオムニバス。さまざまな表現手法を用いているので、単純に比較はできないが、タカサキケイイチ氏の「199X年の必殺技」が最も魅力的だった。ゲイ漫画家タカサキケイイチ氏が監督、脚本、作画、編集を手掛けた。高校生ゲイカップルの機微や情感をデジタル紙芝居アニメで描いていく初監督映像作品。漫画家としてのセンスを動画にもうまく発揮していた。

 特別上映は、「泥棒日記」「薔薇の奇跡」「花のノートルダム」などの作品で知られるフランス人作家ジャン・ジュネが撮ったゲイ・ポルノグラフィー「愛の唄」(1950年、26分)。ジュネの妄想が新鮮。ジョナス・メカスが1964年に「愛の唄」を上映して逮捕されたということしか知らなかった幻の作品に、こんなかたちで出会えるとは。


 バイオハザードII アポカリプス 「バイオハザードII アポカリプス」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。93分。配給=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。監督=アレクサンダー・ウィット(Alexander Witt)。製作=ポール・W・S・アンダーソン(Paul W.S. Anderson)、ジェレミー・ボルト(Jeremy Bolt)、ドン・カーモディ Don Carmody製作総指揮=ベルント・アイヒンガー、サミュエル・ハディダ、ヴィクター・ハディダ、ロバート・クルツァー。脚本=ポール・W・S・アンダーソン。撮影=クリスチャン・セバルト、デレク・ロジャース。編集=エディ・ハミルトン。音楽=ジェフ・ダナ。追加音楽=エリア・クミラル。アリス=ミラ・ジョヴォヴィッチ(Milla Jovovich)、ジル・バレンタイン=シエンナ・ギロリー(Sienna Guillory)、アシュフォード博士=ジャレッド・ハリス、カルロス・オリヴェラ=オデッド・フェール、テリ・モラレス=サンドリーヌ・ホルト、L・J=マイク・エップス、ニコライ・ソコロフ=ザック・ウォード、アンジェラ・アシュフォード=ソフィー・ヴァヴァスール


 巨大企業アンブレラ社によるT-ウイルスを使った身体改造計画。前作「バイオハザード」の背景が明らかになる「バイオハザードII アポカリプス」。アリス覚醒の意味も解き明かされる。舞台は地下施設からラクーンシティに拡大し、ゾンビ映画のテイストが強くなっている。次から次へとアクションシーンが続き、動態視力が試されるスピード感あふれる展開で、息つく暇がない。過去のホラーやアクション映画のパロディも楽しめる。しかし核爆弾を安易に使用するのもアメリカ映画のパロディか。そこのところは楽しめなかった。

 ハラハラさせ、ぐいぐいと引っ張っていくタイプの典型的なジェットコースタームービーだが、もう少し人物描写がほしかった。登場人物は闘うばかりで終わっている。だからクライマックスで、生物兵器ネメシスの正体を知ったアリスが狼狽するシーンが唐突に見える。一方、ほとんど背景を描いていないものの、ジル・バレンタインはかっこ良さの中に一瞬弱さを見せて共感できる。人間を超越したアリスよりも、ジルの方が魅力的だ。

 個人的には、エンドタイトルで使われていたVJ的なデザインの方が、新鮮だった。エンドタイトルが始まったらすぐに携帯電話の着信を確認するのは、やめてもらいたい。たびたび書いているが、エンドタイトルを観ながらしばし余韻に浸ってほしい。


 ヴィレッジ 「ヴィレッジ」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。108分。配給=ブエナ ビスタ インターナショナル。監督: M・ナイト・シャマラン(M. Night Shyamalan)。製作: サム・マーサー、スコット・ルーディン、M・ナイト・シャマラン、ホセ・L・ロドリゲス。脚本: M・ナイト・シャマラン。撮影: ロジャー・ディーキンス。編集: クリストファー・テレフセン。音楽: ジェームズ・ニュートン・ハワード。エドワード・ウォーカー=ウィリアム・ハート(William Hurt)、ルシアス・ハント=ホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)、アイヴィ・ウォーカー=ブライス・ハワード(Bryce Howard)、キティ・ウォーカー=ジュディ・グリア、アリス・ハント=シガーニー・ウィーヴァー、ノア・パシー=エイドリアン・ブロディ


 深い森に囲まれた村では、通貨が存在せず、60人が家族のような絆で結ばれ、幸福な暮らしを営んでいる。村には、決して破ってはならない掟があった。森に入ってはならない。不吉な赤い色を隠せ。森に棲むと噂される未知の生命体を恐れ、自分たちの世界の中だけで慎ましく生活していた。しかし、娘は恋人を救う医薬品を手に入れるために、禁断の森を抜けようとする。

 M・ナイト・シャマラン監督の新作。人工コミューンの話である。名優たちが人間ドラマを展開する。森の見せない生命体で不安を増幅していく手法は見事。伏線の張り方は、やや分かりやすいが、緊張は確実に高まっていく。ラストのどんでん返しばかりを気にせずに、過程を楽しむべき。なかなか優れた映像センスを堪能できる。単純なようでいて、緻密な計算がうかがえる。何を書いてもネタバレになり、面白さをそこねるので、この辺で筆を置く。


 永遠の語らい 「永遠の語らい」の画像です

 2003年作品。ポルトガル=フランス=イタリア合作。95分。配給=アルシネテラン、キノキネマ。監督=マノエル・デ・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira)。製作=パウロ・ブランコ。脚本=マノエル・デ・オリヴェイラ。撮影=エマニュエル・マシュエル。美術=ゼ・ブランコ。衣装=イザベル・ブランコ。ローザ・マリア=レオノール・シルヴェイラ、マリア・ジョアナ=フィリッパ・ド・アルメイダ 、ジョン・ワレサ船長=ジョン・マルコヴィッチ、デルフィーヌ=カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)、フランチェスカ=ステファニア・サンドレッリ、ヘレナ=イレーネ・パパス、俳優=ルイス・ミゲル・シントラ


 監督のマノエル・ド・オリヴェイラは、1908年12月12日生まれ。つまり95歳。しかも1990年以降は毎年作品を完成させている。驚くべきバイタリティだ。昨年12月には小津安二郎監督生誕100年の国際シンポジウムのパネリストとして来日した。そして「この来日は最後ではありません」と会場を沸かせた。小津監督と同じ誕生日。

 2001年7月、歴史の教授であるローザ=マリアは、インドのボンベイにいるパイロットの父親に会うために、7才の娘マリア=ジョアナと一緒に船旅に出る。ポルトガル・ベレンの塔、フランス・マルセイユ、イタリア・ナポリの卵城・ベスビオ火山・ポンペイ、ギリシャ・アクロポリスの丘・パルテノン神殿・エレクティオン神殿・円形劇場、トルコ・聖ソフィア大聖堂(アヤソフィア寺院)、エジプト・ピラミッド、紅海、イエメン共和国・アデンと、実際に人間の歴史と文化の足跡をたどる旅だった。

 客船には、フランスの起業家のデルフィーヌのほか、ナポリから未亡人のフランチェスカ、アテネからギリシャの女優ヘレナが搭乗する。船長がホストを務めるテーブルでは、それぞれが母国語(フランス語・イタリア語・ギリシャ語・英語)を使っているにも関わらず、互いに理解し合いながら語り合う。豊富な知識に裏打ちされた機知に富み、人生や時代を辛らつに批評する知的で内容。複数の言語が共存する至福の会話劇が展開される。「エレンディラ」のすさまじい演技が脳裏に焼き付いているイレーネ・パパスは、見事な歌声を披露する。そして、それが引き金となったかのように悲劇が襲いかかる。

 地中海文明をめぐる母と娘の旅や豪華客船での知的な会話は、ラストの悲劇によって驚くべき切実さを持って想起されることになる。ラストの生々しい現実が、それまでの展開の意味を鮮やかに浮かび上がらせる。現在をとらえ返す場合に、歴史的な文脈、文明論的視点の大切さを示している。そして、画一化ではなく、多様性の大切さも指摘している。深い視座を持つみずみずしくて生々しい作品が95歳の監督の手で誕生した。


 
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