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紀子の食卓 | ![]() |
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2005年作品。日本映画。159分 。配給=アルゴ・ピクチャーズ。監督=園子温 (その・しおん)。プロデューサー=鈴木剛 。エグゼクティブプロデューサー=諸橋裕 。原作=園子温。脚本=園子温。撮影=谷川創平 。美術=藤田徹。編集= 伊藤潤一。音楽=長谷川智樹。テーマ作曲=園子温 『Lemon Song』。挿入歌=マイク真木 『バラが咲いた』。特殊造形= 西村喜廣 。録音=池田知久 。島原紀子 =吹石一恵 (ふきいし・かずえ)、クミコ=つぐみ 島原ユカ =吉高由里子、島原徹三= 光石研 (みついし・けん)、喫茶店の男=古屋兎丸 2002年5月に新宿駅8番線ホームから女子高生54人が集団飛び込み自殺をするという衝撃的な展開で話題になった園子温(その・しおん)監督「自殺サークル」(2001年)の続編。園子温自身による書き下ろし小説「自殺サークル 完全版」が原作。自殺とは別な角度から、現代をえぐっている。凄みのある傑作だ。 女子高生・島原紀子は、インターネットの掲示板「廃墟ドットコム」で知り合った上野駅54を頼って家出し、東京にくる。彼女は時間単位で依頼人の家族を演じる「レンタル家族」というビジネスを営んでいる。紀子もミツコという名でこの家族の一員になる。紀子の妹ユカは、姉の足跡をたどり、自らも家出して東京に来る。島原家は、崩壊する。 吹石 一恵(ふきいし・かづえ)が、好演している。「雪に願うこと」では騎手をスタントなしでこなしていたが、今回も意欲的なチャレンジだ。サークルの中心人物クミコを演じるつぐみは、相変わらずすごみのある存在感。島原ユカ役の吉高由里子(よしたか・ゆりこ)は、映画初出演ながら、なかなかの演技をみせる。そして、喫茶店でサークルに着いて説明する男を、「自殺サークル」の原作者・漫画家の古屋兎丸(ふるや・うさまる)が演じている。彼は、大学時代に演劇をやっていたので、落ち着いた演技。理性的なようで、壊れ始めているような微妙なカルト集団を象徴している。 実際の家族が崩壊した後、虚構の「レンタル家族」による家族関係の再構築という、きわめて現代的なテーマ。難しい問題に立ち向かい、現代社会のかたちを、鮮やかに描いた。しかし、虚構の演技にも、人は疲れてきているのではないか。「理想」や「夢」に続いて、現代は「虚構」すら、失われ始めているのかもしれない。その後に来るのは、単純明快なもの、力強いものへのあこがれだ。それは、多様性に満ちたこの社会を単純なものにしようとする危険な動きだと思う。 |
ミッドナイトムービー | ![]() |
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2005年作品。カナダ・アメリカ映画。86分。配給=クロックワークス/トルネード・フィルム。製作・監督・脚本=スチュアート・サミュエルズ。製作補=ヴィクター・クシュマニウ/アンドレア・スチュアート。製作総指揮=イアン・ディメーマン/デイヴィッド・フォックス/スティーヴン・シャランスキ。製作コンサルタント=ベン・バレンホルツ/セス・ウィレンソン。助監督、脚色=ヴィクター・クシュマニウ。ラインプロデュサー=アンドレア・スチュアート。映像リサーチ=エリン・クリスホルム撮影監督=リチャード・フォックス。音声=エイドリアン・タッカー。編集=ケヴィン・ローリンズ/ロテンツォ・マッサ/マイク・ベンベネック/ロバート・コールマン。音楽=エリック・カデスキー/ニック・ダイアー。 アレハンドロ・ホドロフスキー監督作『エル・トポ』(70)ジョージ・A・ロメロ監督作『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68)ペリー・ヘンゼル監督作『ハーダー・ゼイ・カム』(72)ジョン・ウォーターズ監督作『ピンク・フラミンゴ』(72)リチャード・オブライエン脚本・出演作『ロッキー・ホラー・ショー』(75)デイヴィッド・リンチ監督作『イレイザーヘッド』(77) 製作・監督・脚本のスチュアート・サミュエルズは、テレビ・プロデューサー。ドキュメンタリーと音楽の両分野で監督を務めている。早すぎると思えるほど、手際よく編集されている。監督の映画に対する愛情が感じられる。 映画についてのドキュメンタリーは多いが、映画館と観客についてのドキュメンタリーは珍しい。1970年代、深夜に上映された6本の低予算映画が、映画の在り方を変えた事実を、関係者のコメントを生かしながら、丁寧に描いている。監督本人や劇場主の肉声が、とても良く当時の雰囲気を伝える。「ピンク・フラミンゴ」のジョン・ウォーターズ監督が「イレイザーヘッド」をほめるなど、監督同士が支え合っていた様子も分かる。「イレイザーヘッド」初日の観客は26人だったらしい。それでも、劇場主はこの作品の重要性を信じて、上映し続けた。 |
カポーティ | ![]() |
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2005年作品。アメリカ映画。114分。配給=SPE。監督:ベネット・ミラー 。製作:キャロライン・バロン 、マイケル・オホーヴェン 、ウィリアム・ヴィンス 。製作総指揮:ダン・ファターマン 、フィリップ・シーモア・ホフマン 、 ケリー・ロック 、ダニー・ロセット。 原作:ジェラルド・クラーク。 脚本:ダン・ファターマン 。撮影:アダム・キンメル 。プロダクションデザイン:ジェス・ゴンコール 。衣装デザイン:カシア・ワリッカ=メイモン。 編集:クリストファー・テレフセン 。音楽:マイケル・ダナ。 トルーマン・カポーティ=フィリップ・シーモア・ホフマン 、ネル・ハーパー・リー=キャサリン・キーナー 、ペリー・スミス=クリフトン・コリンズ・Jr、アルヴィン・デューイ=クリス・クーパー 、ジャック・ダンフィー=ブルース・グリーンウッド 、ウィリアム・ショーン =ボブ・バラバン 、マリー・デューイ=エイミー・ライアン 、ディック・ヒコック=マーク・ペルグリノ 、ローラ・キニー=アリー・ミケルソン ベネット・ミラー監督の「カポーティ」は、ノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを切り拓いたと言われるトルーマン・カポーティの傑作「冷血」の完成までの過程を描き出す。静かに、しかし鋭く作家のずるさと弱さをえぐる。その視線は冷徹だ。 1959年11月15日、カンザス州の田舎町で一家4人惨殺事件が発生。ニューヨークでこの事件を知ったカポーティは、作品にしようと現地へ取材に向かう。容疑者が逮捕されると、カポーティは彼らに接近し、創作意欲を刺激される。死刑判決が出ると、弁護士を雇い、刑の執行を先延ばしさせる。そして、作品を完成させるために、今度は刑の執行を行わせるように画策する。だが、実際に絞首刑に立ち会い、大きな衝撃を受ける。 トルーマン・カポーティの複雑な性格を、フィリップ・シーモア・ホフマンが見事に演じている。本当にうまい俳優だ。高く評価されたのは当然だ。ただ、死刑囚ペリー・スミス役のクリフトン・コリンズ・Jrの演技もまた、称賛に値する。 |
ストロベリーショートケイクス | ![]() |
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2006年作品。日本映画。127分。配給=アップリンク=コムストック。原作=魚喃キリコ(なななん・きりこ)。脚本=狗飼恭子(いぬかい・きょうこ)。監督=矢崎仁司(やさき・ひとし)。プロデューサー=浅井隆。アソシエイトプロデューサー=泉正隆。撮影=石井勲。美術=松本知恵。衣装=小林身和子。編集=多田徳生。音楽=虹釜太郎。音楽監督=虹釜太郎。ラインプロデューサー=遠藤肇。照明=大坂章夫。録音=古谷正志。里子=池脇千鶴(いけわき・ちづる)、ちひろ=中越典子(なかごし・のりこ)、秋代=中村優子(なかむら・ゆうこ)、塔子=岩瀬塔子(いわせ・とうこ)、永井=加瀬亮、菊池=安藤政信、リー=趙民和、田所=奥村公延、町子=中原ひとみ、森尾=村杉蝉之介、ミチル=前田綾花、ユリ=宮下ともみ、サキエ=桂亜沙美、松下=伊藤清美、秋代の客=諏訪太朗、秋代の客=高取英、秋代の客=保坂和志、秋代の客=戌井昭人、女医=いしのようこ、編集長=矢島健一、近藤=高橋真唯 「三月のライオン」の矢崎仁司監督が、魚喃キリコのコミックを映画化した。4人の女性が、懸命に生きる姿を描いている。「三月のライオン」のような、驚くべき構図ではないが、独創的なアングルが印象に残る。そして、深刻なストーリーなのに、どこか爽やかな風が吹いている。見終わると4人の女性たちが、とても愛おしく感じる。男性の影が薄いのは、致し方ないだろう。 大失恋を乗り越えて新たな恋の訪れを待つ里子は、デリヘル店「ヘブンスゲイト」の電話番をしている。彼女が密かにあこがれる店のナンバー1・秋代は、お金を貯めて5階以上のマンションを購入しようと考えている。ボケそうになったら飛び降り自殺しようと決めている。棺桶で寝起きしている。専門学校の同級生・菊地を強く想いながらも、「友達」でいようとしている。事務OLのちひろは、男に愛される事でしか自分の存在を確認できないでいる。同居しているイラストレーターの塔子は、強く生きようとするあまり、過食と嘔吐を繰り返している。 すごくリアルにアーティストの誇りと苦悩を演じていた岩瀬塔子が、とても気になった。調べてみると、なんと魚喃キリコ本人だった。原作者が主役級で出演し、素晴らしい演技を見せる。そのことに深く感動した。領域を超えて表現しようとするアーティストが好きだ。 |
Sad Movie <サッド・ムービー> | ![]() |
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2005年作品。韓国映画。109分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ。監督:クォン・ジョングァン。脚本=ファン・ソング。撮影=キム・ビョンソ。音楽=チョ・ドンイク。ジヌ=チョン・ウソン、ハソク=チャ・テヒョン、スジョン=イム・スジョン、ジュヨン=ヨム・ジョンア、スウン=シン・ミナ、サンギュ=イ・ギウ、スッキョン=ソン・テヨン、 フィチャン=ヨ・ジング 4組の男女の話が、ささやかに重なり合いながら展開される。別れの物語が中心だが、泣かせることを目的にした作品ではない。別れが絆を確認させるような映画だ。映像に透明感があり、映画的な仕掛けがたくさん盛り込まれていて、とてもシャレた演出が多かった。ただ、消防士のビデオのアイデアだけは、やり過ぎだと思った。 心に残ったのは、公園で働く着ぐるみを着た白雪姫と七人の小人と似顔絵描きをしている青年のお話。そして、入院しているお母さんの若いときの日記を読んだ少年の心の変化。うまい演出だなあ、と感心しながら観ていた。「別れ代行」の仕事は、オチが見えていて、少し残念。 |
ソウ3/SAW3 | ![]() |
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2006年作品。アメリカ映画。108分。配給=アスミック・エース。監督=ダーレン・リン・バウズマン。製作総指揮=ジェームズ・ワン 、 リー・ワネル 、 ピーター・ブロック 、 ダニエル・ジェイソン・ヘフナー 、ステイシー・テストロ 、ジェイソン・コンスタンティン。製作=マーク・バーグ / オーレン・クールズ 、 グレッグ・ホフマン。脚本=リー・ワネル。原案=ジェームズ・ワン 、リー・ワネル。撮影=デヴィッド・A・アームストロング。美術=デビッド・ハックル。音楽=チャーリー・クロウザー。衣装=アレックス・カヴァナー。特撮=ジョン・キャンファンズ。ジグソウ=トビン・ベル 、アマンダ =ショウニー・スミス 、ジェフ=アンガス・マクファーデン 、リン・デンロン医師 = バハー・スーメク 、ケリー=ディナ・メイヤー トロイ=J・ラローズ 、 ダニカ=デブラ・リン・マッケイブ 、ハルディン判事=バリー・フラットマン 、ティム=エムポー・クワホー 2年前に「ソウ」を観て、閉塞感と不気味さにしびれ、正面突破のラストシーンに感心した。「ソウ3/saw3」は、さらに血みどろで残酷な表現を盛り込んでいるが、緊迫感は乏しい。そして、血なまぐさいシーンの果てに、「赦し」の大切さを説く末期のジグソウは、最高に皮肉だ。現代のゆがみを暴くほど、悪趣味だ。 今回は、解決編のように、ていねいに種明かしをしてくれるが、なんと、「ソウ4」の製作に着手したらしい。「ソウ5」の可能性も十分にあるそうだ。 |
トンマッコルへようこそ | ![]() |
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2005年作品。韓国映画。132分。配給=日活。監督=パク・クァンヒョン。製作= チャン・ジン。製作総指揮=キム・ウテク、チョン・テソン。原作=チャン・ジン。脚本=チャン・ジン、パク・クァンヒョン、キム・ジュン。撮影=チェ・サンホ。音楽=久石譲。ピョ・ヒョンチョル=シン・ハギュン、リ・スファ=チョン・ジェヨン、ヨイル=カン・ヘジョン、チャン・ヨンヒ=イム・ハリョン、ムン・サンサン=ソ・ジェギョン、 スミス=スティーヴ・テシュラー、ソ・テッキ=リュ・ドックァン、村長=チョン・ジェジン、キム先生=チョ・ドッキョン、ドング=クォン・オミン 劇作家チャン・ジンの舞台劇を基に、これが長編デビューとなるパク・クァンヒョン監督が映画化した。1950年代の朝鮮戦争を舞台に、山奥の平和な村に迷い込んだ敵対する兵士6人が、村人たちののんびりした生活に癒され、しだいに和解していく姿を描いている。ああ、ジブリ的な世界だと思った。過酷な現実を背景にしながらも、こうあってほしいという願いに満ちた牧歌的な村。備蓄していたトウモロコシが、手榴弾で爆発でポップコーンになり、空から降ってくるシーンから、ファンタジーの世界に入っていく。 韓国軍兵士2人と北朝鮮人民軍の兵士3人が、和解し、信頼関係を築いていく過程は、伏線を張りながら、なかなか丁寧に描かれている。武器を知らない村人たちの、とぼけた暮らしも悪くない。幸せな気持ちになる。どういう結末を用意しているのだろうと思いながら、見つめていた。最後は、それまでの牧歌的な雰囲気を破り、アメリカ軍の空爆から村を守るために、別の場所から奇襲攻撃を仕掛ける。そして、村を守ることができたことに満足し笑顔で死んでいく。映画的な盛り上げにはなるだろうが、私は納得できない。単純な反戦である必要はないが、犠牲死の美化はトンマッコルの世界を否定するに等しい。 |
DEATH NOTE the Last name | ![]() |
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2006年作品。日本映画。140分。配給=ワーナー。監督=金子修介。原作=大場つぐみ 『DEATH NOTE』(集英社刊『週刊少年ジャンプ』連載)。脚本=大石哲也。撮影監督= 高間賢治。撮影=石山稔。美術=及川一。 編集=矢船陽介。音楽=川井憲次。主題歌=レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 『ダニー・カルフォルニア』。照明=上保正道。録音= 岩倉雅之。夜神月=藤原竜也、L/竜崎=松山ケンイチ、弥海砂=戸田恵梨香、高田清美=片瀬那奈、出目川裕志=マギー、西山冴子=上原さくら、松田刑事=青山草太、宇生田刑事=中村育二、相沢啓二=奥田達士、模木刑事=清水伸、佐波刑事=小松みゆき、夜神粧裕=満島ひかり、夜神幸子=五大路子、佐伯警察庁長官=津川雅彦、ワタリ=藤村俊二、夜神総一郎=鹿賀丈史、リューク= 中村獅童 「DEATH NOTE 前編」は、始まりにすぎなかった。分かりやすく、まあまあ飽きずに観ることができた前編に比べ、この後編は怒濤のようなハイスピードで展開していく。ライトとLの対決が中心だが、その周囲の多くの人たちが、活躍する。良い意味で、予想を裏切るスリリングな作品に仕上がっていた。 子供たちを楽しませ、最後は父親のように子供に諭す。金子修介監督は、余裕を持って作品をつくっている。観客が固唾を飲んで見つめているからこそ、Lにひょっとこの仮面をかぶらせて、笑いを誘う。夜神月とLの冷徹な頭脳戦を引き立たせるために、アイドルの弥海砂に第2のデスノートを渡し、月に一目惚れさせる。さすが映画の職人。 前編のLは、エキセントリックな天才で松山ケンイチの演技も、怪演と評すべきものだったが、後編の Lは、ずっと魅力的になった。松山ケンイチの熱演に拍手したい。デスノートを利用した捨て身の作戦、そして覚悟した静かな最後が、胸にしみる。月の父・夜神総一郎との最後の会話は、父と子のようだ。「the Last name」という題名の深い意味が分かり、涙してしまう。 |
父親たちの星条旗 | ![]() |
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2006年作品。アメリカ映画。132分。配給=ワーナー。監督:クリント・イーストウッド。製作:スティーヴン・スピルバーグ、クリント・イーストウッド 、ロバート・ロレンツ。原作:ジェームズ・ブラッドリー『硫黄島の星条旗』(文春文庫刊)/『父親たちの星条旗』(イースト・プレス刊) 、ロン・パワーズ。脚本:ポール・ハギス、ウィリアム・ブロイルズ・Jr。 撮影:トム・スターン。美術:ヘンリー・バムステッド。衣装:デボラ・ホッパー。編集:ジョエル・コックス。音楽:クリント・イーストウッド。ジョン・ドク・ブラッドリー=ライアン・フィリップ、レイニー・ギャグノン= ジェシー・ブラッドフォード、アイラ・ヘイズ=アダム・ビーチ、ラルフ・イギー・イグナトウスキー=ジェイミー・ベル、マイク・ストランク=バリー・ペッパー、ハンク・ハンセン=ポール・ウォーカー、キース・ビーチ=ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、バド・ガーバー=ジョン・スラッテリー クリント・イーストウッド監督が、太平洋戦争で壮絶を極めた硫黄島での戦いを、アメリカ、日本、それぞれの視点から描く2部作の第1弾。「父親たちの星条旗」は、アメリカからの視点。監督は「日本の皆様へ」というメッセージで「私が観て育った戦争映画の多くは、どちらかが正義で、どちらかが悪だと描かれていました。しかし、人生も戦争も、そういうものではないのです」と書いている。できることなら、イラク戦争をアメリカ、イラクのそれぞれの視点で描きたかったのではないか。だから、この作品は、日本からの視点「硫黄島からの手紙」を観てから、判断すべだと思う。 兵士たちが、硫黄島で戦う時間、戦時国債を売るために国家に利用される時間、年老いて戦場での体験を語る時間。この3つの時間が重なり合いながら進行していく。しかし、戦場での体験を語る時間の影が薄い。やはり、戦闘シーンの凄まじい迫力が、抜きん出ている。戦場の残酷さを真正面から暴いている。「プライベート・ライアン」よりも、戦場の空気が伝わってくる。国家に利用される時間は、美化された戦争、虚偽の報道に翻弄される兵士たちを、描いていく。英雄視された兵士たちの、その後も悲しい。クリント・イーストウッド監督は、過去の事実を静かに示し、誠実に反省している。今、アメリカで流されている虚偽の戦争報道を告発するように。 |
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