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2006.1


 奇妙なサーカス 「奇妙なサーカス」の画像です

 2005年作品。日本映画。108 分。配給=セディック・インターナショナル。監督・脚本・音楽=園子温。製作=中沢敏明、星野晃志。プロデューサー=富田敏家、佐藤敏宏。企画=國實瑞惠。撮影=大塚雄一郎。美術=大庭勇人。編集=伊藤潤一。照明=前田淳。録音=福田伸。尾沢小百合/作家・三ッ沢妙子=宮崎ますみ、尾沢剛三=大口広司、田宮雄二=いしだ壱成、尾沢美津子=桑名里瑛、編集長=田口トモロヲ、高橋真唯、不二子、マダム・レジーヌ


 R-18作品。かなり過激な作品だとは思っていたが、エログロの極北という懐かしい言葉を連想させるほど、すさまじい。気味の悪さでは「乱歩地獄」を超えている。錯乱的なテンションはどんどん高くなる。何が現実で何が幻覚なのか、観客にも分からない。見事なマジック。

 12年ぶりに女優業に復帰した宮崎ますみだが、歴史に残る怪演を見せてくれた。熟れた赤い薔薇のような魅力を再認識した。彼女は現在乳ガンのため療養中だ。乳房から血が吹き出すシーンが痛々しかった。いしだ壱成も得体のしれなさが見事に決まって、かっこ良かった。


 スキージャンプ・ペア〜Road to TORINO 2006〜 「スキージャンプ・ペア 〜Road to TORINO 2006〜」の画像です

 2006年作品。日本映画。82 分。配給=ファントム・フィルム。監督=小林正樹。総監督=真島理一郎。プロデューサー=中島真理子、八幡麻衣子。プロデュース=川村元気。エグゼクティブプロデューサー=釜秀樹、穀田雅仁。企画=川村元気。原案=真島理一郎。CG監督=真島理一郎。ナレーション=政宗一成。出演=谷原章介、船木和喜、荻原次晴、八木弘和、アントニオ猪木、ガッツ石松


 DVDが大ヒットを記録したおバカ映画、堂々の劇場公開。初日28日に観てきた。札幌劇場入り口で、初日サービスとして2本セットのチュウチュウアイス(チョココーヒー味)を手渡される。劇場が暑かったので、チュウチュウしながら作品を観た。物理学者・原田博士が発見した「ランデブー理論」を説明する場面でチュウチュウアイスが登場。「アハハッ!!!」。

 「ランデブー理論」とオリンピック正式種目になるまでのドキュメンタリーが、イマイチうまくつながっていない。リアルさにこだわらず、もっと馬鹿馬鹿しい展開にした方が良かったと思う。ただ、テレビドキュメンタリーという設定は、悪くない。あのテレビ中継をパロったトリノオリンピック決勝のCGに、見事につながった時は、長年のプロジェクトが完成したという深い感慨を覚えた。


 グレート・ビギン 「グレート・ビギン」の画像です

 2004年作品。フランス映画。81分。配給=角川ヘラルド・ピクチャーズ。監督=クロード・ニュリザニー(Claude Nuridsany)、マリー・プレンヌー(Marie Perennou)。製作=アラン・サルド(Alain Sarde)。製作総指揮=クリスティーヌ・ゴズラン(Christine Gozlan)。脚本=クロード・ニュリザニー(Claude Nuridsany)、マリー・プレンヌー(Marie Perennou)。撮影=クロード・ニュリザニー(Claude Nuridsany)、マリー・プレンヌー(Marie Perennou)、ウィリアム・ルブチャンスキー(William Lubtchansky)、パトリス・オベルテル(Patrice Aubertel)、シリル・トリコット(Cyril Tricot)。編集=マリー=ジョセフ・ヨヨット(Marie-Josephe Yoyotte)、ポーリーヌ・カサリス(Pauline Casalis)。音楽=ブリュノ・クーレ(Bruno Coulais)。ナレーション=ソティギ・クヤテ(Sotigui Kouyate)。


 ビタミンCが水に溶ける時の結晶を撮影した魅惑的な映像から始まり、藻のコロニー、ミズクラゲの群舞、大きな卵を飲み込む蛇など、次々に生命の姿が写し出される。生物学者であり、フランスの映像作家でもあるマリー・プレンヌーとクロード・ニュリザニーが、16年という年月をかけて撮った作品。

 『WATARIDORI』『ディープ・ブルー』『皇帝ペンギン』と続いた自然ドキュメンタリーのひとつだが、生命の誕生とつながりという大きなテーマを追っている。既存の映像をつなぎ合わせるのではなく、この作品の撮影のために開発されたオリジナルの機材によるこだわりの映像は、迫力が違う。さすが昆虫の世界を超顕微な視点で追った『ミクロ・コスモス』(1996年)の監督だ。貴重なだけでなく、鮮明で美しい映像に満ちている。母親の胎内で豊かな表情を見せる人間の胎児の映像を知るだけでも、見る価値のある作品だろう。正しい意味で教育的な映画だ。


 映像温泉芸社in札幌 その3.5(2006.01.12)/th>

 1月21日、イベントスペース『EDiT』で「映像温泉芸社in札幌 その3.5」が開催された。開場から上映までの間も飽きさせない映像サービス。終わった後の「家族映像」も濃厚で、しっぽまでネタが詰まった上映会だった。

 爆笑を誘う酒徳ごうわく監督作品「リアルニンテンドッグス」は、いいかげんに見せながら計算されているベテランの貫禄。7才の子供が作成した『ベンハー/赤ちゃん恐竜連れ去る』、素晴らしく考えさせられた『ダー機関の ニューツネマパラダイズ』、中村犬蔵の労作『デンキネコ対メカデンキネコ』と楽しませてくれる。

 中でも「バカ映画の始祖」「バカ映画の手塚治虫」と呼ばれる、なにわ天閣作品に感動した。『特攻伝説』の「特攻特攻とことこ」で脳内ねんざし、『ハローキティ』で全身骨切した。ハンブルグ国際短編映画祭に正式招待された『みどりちゃん』は、20秒間に家族関係の屈折と少女の脆さを凝縮しつつ笑わせる日本が世界に誇るべき傑作だ。

■「映像温泉芸社in札幌その3.5」

 秘密のかけら 「秘密のかけら」の画像です

 2005年作品。カナダ・イギリス・アメリカ。108 分。配給=ムービーアイ。監督=アトム・エゴヤン(Atom Egoyan)。製作=ロバート・ラントス(Robert Lantos)。製作総指揮=アトム・エゴヤン(Atom Egoyan)、コリン・リーヴェンタール(Colin Leventhal)、ドナルド・A・スター(Donald A. Starr)、ダニエル・J・B・テイラー(Daniel J.B. Taylor)。原作=ルパート・ホームズ(Rupert Holmes)。脚本=アトム・エゴヤン(Atom Egoyan)。撮影=ポール・サロッシー(Paul Sarossy)。プロダクションデザイン=フィリプ・バーカー(Phillip Barker)。衣装デザイン=ベス・パスターナク(Beth Pasternak)。編集=スーザン・シプトン(Susan Shipton)。音楽=マイケル・ダナ(Mychael Danna)。ラニー・モリス=ケヴィン・ベーコン(Kevin Bacon)、ヴィンス・コリンズ=コリン・ファース(Colin Firth)、カレン・オコナー=アリソン・ローマン(Alison Lohman)、ボニー・トラウト=ソニヤ・ベネット(Sonja Bennett)、モーリーン=レイチェル・ブランチャード(Rachel Blanchard)、ルーベン=デヴィッド・ヘイマン(David Hayman)、サリー・サンマルコ=モーリー・チェイキン(Maury Chaykin)、パブリシスト=キャスリン・ウィンスロー(Kathryn Winslow)、アリス=クリスティン・アダムス(Kristin Adams)


 アルメニア出身のアトム・エゴヤン監督がトルコによるアルメニア人虐殺を描いた前作「アララトの聖母」は、自らのルーツを問う重厚な作品だった。今回は、1950年代の華やかなアメリカ・ショービズ界の光と闇を描く異色サスペンス。虚飾と頽廃に満ちた物語だが、とても人工的な感じがする。初めてハリウッドで撮影したエゴヤン監督は、ハリウッドの魅力の陰にある表面的な虚飾をさりげなく切ってみせる。その皮肉は、まさにエゴヤン映画だ。

 物語の構図は、なかなか屈折しているが、俳優たちも、これまでとは違った側面をみせる。ケビン・ベーコンがくせのある役を演じるのは、見慣れているが、コリン・ファースがコメディから、一転暴力的になる場面は驚いた。ラスト近くでは、さらにすごい場面がある。子どもっぽい役が多いアリソン・ローマンはベッドシーンに挑戦している。相次ぐベッドシーンに登場する女優たちはなかなか魅力的で大胆だった。しかしアメリカ、日本で成人映画に指定されたのは理解できない。


 あらしのよるに 「あらしのよるに」の画像です

 2005年作品。日本映画。107 分。配給=東宝。監督=杉井ギサブロー。アニメーション監督=前田庸生。アニメーション制作=グループ・タック。アニメーション制作プロデューサー=藤田健、桜井宏。製作=近藤邦勝。プロデューサー=中沢敏明、大岡大介、梅村安、田代敦巳。エグゼクティブプロデューサー=木村明子。企画=濱名一哉。原作=きむらゆういち。脚本=きむらゆういち。杉井ギサブロー(演出脚本)。撮影=佐藤陽一郎。美術監督=阿部行夫。編集=古川雅士。音楽=篠原敬介。音楽プロデューサー=大川正義。主題歌=aiko『スター』。CGディレクター=館信一郎、佐藤陽一郎。キャラクターデザイン=江口摩吏介。音響監督=藤山房伸。企画協力=あべ弘士。作画監督=江口摩吏介。色彩設計=歌川律子。CG映像ディレクター=篠崎亨。構成プランナー=くずおかひろし。ガブ=中村獅童、メイ=成宮寛貴、ギロ=竹内力、バリー=山寺宏一、タプ=林家正蔵[9代目]、ヤギのおばさん=KABA.ちゃん、ヤギの一族の長老=板東英二、ビッチ=柳原哲也、ザク=平井善之、ミイ=小林麻耶、ガブの母=早見優、メイのおばあちゃん=市原悦子


 これは2005年のうちに観るべき作品だった。きむらゆういち作のベストセラー絵本のアニメ化。オオカミとヤギという、本来交われないはずの関係に芽生えた友情、そして両集団からの迫害、逃走を描いている。構造的に対立する関係の中でも個々の交流は可能というテーマは、宮崎アニメ「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」でも中核となる、極めて現代的なテーマだ。「あらしのよるに」は、食べる、食べられるという関係だけに、より深い亀裂を飛び越えた物語だといえる。その荒唐無稽ともいえる設定に、現代的な希望が託されている。丁寧に仕上げたアニメーションの質も高い。

 深刻なテーマを、軽妙に描くというセンスを否定しないが、あまりにも軽々と奇跡的な関係が生まれ、持続していくので、展開に起伏が乏しくなった。絵空事、きれい事としらけさせかねない。そしてオオカミのガブの葛藤に比べ、ヤギのメイはあまりにも脳天気すぎる。オオカミとヤギの関係は、やがて愛情に近づいていく。この辺が素晴らしい。種と性を超えた究極の純愛映画なのかもしれない。

 


 
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