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 ラブストーリー 「ラブストーリー」の画像です

 2003年作品。韓国映画。129分。配給=クロックワークス メディア・スーツ。監督・脚本=クァク・ジェヨン。製作=チ・ヨンジュン。撮影=イ・ジュンギュ。編集=キム・サンボム、キム・ジェブン。美術=ソン・ユニ。音楽=チョ・ヨンウク 。ジュヒ、ジヘ=ソン・イェジン、サンミン=チョ・インソン、ジュナ=チョ・スンウ、テス=イ・ギウ、スギョン=イ・サンイン、売店の店員=イム・イェジン


 2002年の夕張映画祭で、あまりの面白さに腰を抜かした「猟奇的な彼女」のグランプリ獲得から1年。2003年の夕張映画祭には新作「クラシック」を完成させて参加したクァク・ジェヨン監督。残念ながら映画祭では作品を見ることができなかった。そして1年。念願の「クラシック」を観た。どういうわけか、邦題は月並みな「ラブストーリー」に変えられていた。原題の「THE CLASSIC」には、作品を貫く重層的な意味が込められていたのに、変えた理由が分からない。

 「猟奇的な彼女」は普通の映画3本分の面白さが詰まっていたが、「ラブストーリー」はどっぷりと青春の恋愛劇に浸らせてくれる。ファンタジックなほどの純愛が展開される。パッヘルベルの「カノン」、ショパンの「悲愴」、ビバルディの「チェロ協奏曲ロ短調」などのクラシック音楽が効果的に使われている。過去(1968年)と現在(2003年)、母と娘をつなぐ物語。巧みなストーリーに泣かされながら、思わぬラストに驚かされて、さわやかな気持ちになる。クァク・ジェヨン監督の脚本は本当に素晴らしい。監督は、希代のストーリーテラーにして、珍しいほどのロマンチストだ。涙はすぐに乾くことなく、心を潤し続ける。


 ジョゼと虎と魚たち 「ジョゼと虎と魚たち」の画像です

 2003年作品。日本映画。116分。配給=アスミック・エース。監督=犬童一心(いぬどう・いっしん)。プロデューサー=久保田修、小川真司。原作=田辺聖子。脚本=渡辺あや。共同プロデューサー=井上文雄。撮影=蔦井孝洋。美術=斉藤岩男。照明=疋田ヨシタケ。録音=志満順一。編集=上野聡一。衣裳=石井明子。音楽=くるり。恒夫=妻夫木聡(つまぶき・さとし)、ジョゼ=池脇千鶴(いけわき・ちづる)、香苗=上野樹里、幸治=新井浩文、ジョゼの祖母=新屋英子、ノリコ=江口徳子、麻雀屋客=真理アンヌ、SABU、大倉孝二、西田シャトナー、本屋店員=荒川良々、現場主任=板尾創路、近所の中年男=森下能幸、先輩の社員=佐藤佐吉


 やっと、「ジョゼと虎と魚たち」を観た。相変わらず柔らかく繊細な映像で、抜群の映画的なセンス。今回は、田辺聖子の原作を渡辺あやが見事な脚本に膨らませている。 とても良い。大学生・恒夫の物語が、やがてジョゼの自立の物語へと変わっていく。その語り口の巧みさに舌を巻いた。さり気なく見えて、ジョゼの包丁のように切れの良い展開。前作「金髪の草原」は、独創的な機知に満ちていたが、アイデアを詰め込むあまり、ややバランスを欠くきらいもあった。今回はさまざまなアイデアが自然に溶け込んでいた。わずか1か月で撮影されたとは、とても思えない。

 ジョゼ役の池脇千鶴が抜群にうまい。「金髪の草原」でも感心したが、今回は貫禄すら感じられる。そして恒夫役・妻夫木聡の演技派ぶりに驚かされた。「ウォーターボーイズ」で「へえーっ」と思い、「ドラゴンヘッド」 で「なんだ?」と失望したが、今回は「うわあっ!!」。大学生の心の揺れを肩に力を入れず見事に演じていた。麻雀屋の客をはじめ、キャスティングの妙も魅力のひとつだ。初脚本の渡辺あやほか、才能あふれる新しいスタッフが作品を支えている。パンフは極力買わない主義だが、シナリオが載っていたので、800円のパンフを買ってしまった。


 再見 また逢う日まで 「再見 また逢う日まで」の画像です

 2001年作品。中国映画。95分 。配給=シネマパリジャン、徳間書店。監督&脚本=ユイ・チョン(兪鍾)。製作総指揮=マンフレッド・ウォン(文雋)、カー・ミーリー。製作=リー・チューアン(李竹安)。脚色=チェン・トン(程桐)。撮影=カン・ルー(甘露)。編集=チョウ・メイピン(周梅平)。音楽=ロアン・シュー(巒樹)。美術=フー・トーリン(傅徳林)。スーティエン=ジジ・リョン、幼少スーティエン=フー・チョンシュエ、イクー=ジャン・ウー、幼少イクー=ヤン・チンウエイ、ティエン=シア・ユイ、幼少ティエン=カオ・ティエンホン、ミャオ=チェン・シー、幼少ミャオ=ナー・コーコー、デヴィッド=デヴィッド・リー、父=ツイ・ジェン、母=チャン・チエンシン


 歴代中国映画興行収人成績のベストテンに名を連ねる大ヒットを記録した。貧しいが仲の良い家庭で育った4人の兄弟は、突然両親が事故で死に、離散を余儀無くされる。アメリカにわたり女性指揮者となったスーティエンが、20年ぶりに祖国・中国に帰り、コンサートを開く。そして兄弟探しを始める。映画は、幼い日々と現在を行き来しながら、情感を盛り上げていく。

 別れて生きていかざるをえなくなった4人の兄姉弟妹の泣き顔が、繰り返し繰り返し登場する。このシーンを見て泣かない人は、よほど強靱な精神の持ち主だろう。たくさん泣かせることに徹した作品。その大量の涙によって映画的な欠点をきれいに洗い流してしまう。しかし、涙が乾くのも早い。作品の底の浅さは隠しようがない。何よりも、ラストが中国万歳になってしまったのはいただけない。


 ミスティック・リバー 「ミスティック・リバー」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。138分。配給=ワーナーブラザース。監督=クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)。脚本=ブライアン・ヘルゲランド。原作=デニス・ルヘイン(Dennis Lehane)『ミスティック・リバー』(早川書房刊) 。製作=ロバート・ローレンツ、ジュディ・G・ホイト、クリント・イーストウッド。製作総指揮=ブルース・バーマン。撮影監督=トム・スターン。美術=ヘンリー・バムステッド。編集=ジョエル・コックス。音楽=レニー・ニーハウス。ジミー=ショーン・ペン(Sean Penn)、デイヴ=ティム・ロビンス(Tim Robbins)、ショーン=ケビン・ベーコン(Kevin Bacon)、ホワイティ=ローレンス・フィッシュバーン、セレステ・ボイル=マーシャ・ゲイ・ハーデン、アナベス・マーカム=ローラ・リニー


 イーストウッド監督は、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコンという名優を迎え、ミステリーのスタイルを借りて残酷で濃厚な人間ドラマを生み出した。偶然にほんろうされ傷つき、さまざまな弱さを抱えて生きている人々を襲う錯綜した悲劇。短いシーンを巧みに組み合わせて多面的な事実を明らかにしていく構成は完璧と言える。

 優れた作品であることは間違いないが、好きになれない。救いがないからではない。観ていて、監督にもてあそばれているように感じる。理不尽な殺人が繰り返される展開が、最後に夫婦喧嘩を仲裁するという偽りの明るさが気に入らない。高みからの俯瞰が多い映像は、どこか寒々としている。ラストで画面を覆うミスティック・リバーの水は、濁っていて冷たすぎる。


 ルールズ・オブ・アトラクション 「ルールズ・オブ・アトラクション」の画像です

 2002年作品。アメリカ映画。108分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ。監督/脚本=ロジャー・エイヴァリー。原作=ブレット・イーストン・エリス著「ルールズ・オブ・アトラクション」。製作グレッグ・シャピロ。撮影監督=ロバートブリンクマン。舞台監督=シャロン・シーモア。衣装デザイン=ルイーズ・フロッグレー。音楽=トマンダンディ。ローレン・ヒンデ=シャニン・ソサモン、ショーン・ベイトマン=ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク、ポール・デントン=イアン・サマーホルダー、ヴィクター・ジョンソン=キップ・パルデュー、ケリー=ケイト・ボズワース、ランス・ローソン=エリック・ストルツ、イヴ・デントン=フェイ・ダナウェイ


 ドラッグとパーティに明け暮れる青年たちの、乱暴で切ないラブストーリー。空しさと切実さに満ちている青春の日々を、多面的に巧みに切り取っている。未熟でみじめな恋愛劇。それを懐かしく見つめるか、馬鹿馬鹿しいと思うかで、この作品の評価は分かれるだろう。私はややおおげさな人物描写よりも、オープニングの落ち葉が青葉に戻るシーンや顔に降った雪が涙に変わる美しい場面が心に残った。

 パーティーのシーンから始めて、時間を巻き戻しながら登場人物を次々に紹介していく。その手さばきは、なかなかしゃれていると同時に、虚ろな雰囲気も醸し出している。皆、恋愛における距離の取り方が分からない。勘違いとすれ違いを繰り返す。他人には自分を理解することができないという痛みに似た諦めと、それでも相手を知りたいという熱い思い。その不器用な体験から人は人生を学んでいく。理解し合えないからこそ、豊かな関係であると。多くの時間を共有すれば共通の思い出と、違いを認めながらの安らぎもあると。この作品は、それ以前で唐突に終わる。あまりにも唐突に。


 
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