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2005.5

 ブレイド3 「ブレイド3」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。114分。配給=日本ヘラルド。監督=デヴィッド・S・ゴイヤー。脚本=デヴィッド・S・ゴイヤー。製作=ピーター・フランクフルト、ウェズリー・スナイプス、デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス。製作総指揮=トビー・エメリッヒ。製作総指揮=スタン・リー、アヴィ・アラッド 。撮影=ガブリエル・ベリスタイン.ASC/BSC。美術=クリス・ゴラック。編集=ハワード・E・スミス.A.C.E.、コンラッド・スマート。衣装=ローラ・ジーン・シャノン。音楽=ラミン・ドジャワディ、The RZA 。ブレイド=ウェズリー・スナイプス(Wesley Snipes)、ウィスラー=クリス・クリストファーソン、アビゲイル=ジェシカ・ビール、ハンニバル・キング=ライアン・レイノルズ、ダニカ・タロス=パーカー・ポージー、ドレイク=ドミニク・パーセル、グリムウッド=トリプルH、サマーソルド=ナターシャ・リオン、エドガー・バンス博士=ジョン・マイケル・ヒギンズ、レイ・カンバーランド=ジェームズ・レマー


 「ブレイド」シリーズの完結編。監督は「ブレイド」「ブレイド2」で脚本を担当したデヴィッド・S・ゴイヤー。3部作の中では、特段ひどい。映像センスだけでなく、脚本もひどすぎる。ヴァンパイアハンターの苦悩を背にしたアクションが売りだったのに、それはないだろうという結末だ。

 ただ、多彩なアクションシーンだけは、まあ見ごたえがあった。iPodで音楽を聞きながら闘うアビゲイル役のジェシカ・ビールは、新鮮だった。しかしながら、それぞれの登場人物が闘うに至った動機が薄弱なので、感動も薄い。


 オペレッタ狸御殿 「オペレッタ狸御殿」の画像です

 2004年。日本映画。111 分。配給=日本ヘラルド映画=松竹。監督=鈴木清順。プロデューサー=小椋悟、片嶋一貴。企画=遠谷信幸。脚本=浦沢義雄。撮影=前田米造。視覚効果=石井教雄。プロダクションデザイン=木村威夫。美術=安宅紀史。編集=伊藤伸行。振付=滝沢充子。音楽=大島ミチル。白井良明。衣裳デザイン=伊藤佐智子。照明=矢部一男。録音=山方浩。狸姫=チャン・ツィイー(Zhang Ziyi)、雨千代=オダギリジョー、お萩の局=薬師丸ひろ子、びるぜん婆々=由紀さおり、駝鳥導士=山本太郎、 家老狸=高橋元太郎、次郎狸=パパイヤ鈴木、弥助=篠井英介、コメ=市川実和子、安土桃山=平幹二朗、光の女人(デジタル出演)=美空ひばり 


 1930-50年代に木村恵吾監督らで6作品が製作されたミュージカル映画「狸御殿」の21世紀版。81歳の鈴木監督が40年来の念願だった作品。「お祭り騒ぎがしたかった」だけではないはずだが、例によってあまり語らない。狸に化かされたというよりは、狐につままれたような展開。人によっては、あまりの荒唐無稽さに腰が引けてしまうかもしれない。しかし肩の力を抜いて、独自の美意識で世界中の文化をハイブリッド化した清順ワールドに遊べば、映画の楽しさに時間を忘れる。久しぶりの開放感だ。お萩の局を演じた薬師丸ひろ子が、妙にはまっていた。丸顔だからか?。

 言葉の壁を越え、人間と狸の壁を越え、そして生死の壁を越えて、自在に遊ぶ。その象徴がチャン・ツィイーの起用であり、美空ひばりのデジタル出演だ。「七変化狸御殿」「大当り狸御殿」の2作品に主演した故・美空ひばりが最新CG技術で姿も声もゼロから再現されている。その神々しいお姿。歌も披露する。ゲスト出演ではなく、極めて重要な役を演じた。

 過剰にぎすぎすした現在の日本で、この作品の自由さが、どこまで受け入れられるのか疑問だ。しかし、社会派の作品よりも、日本の社会を根源的に相対化した作品だろう。チャン・ツィイーは「清順監督の映像作家としての才能を改めて認識することの出来る作品」と話し、オダギリ ジョーは「日本の映画史に残らないわけがないというくらいすごい作品」と賛辞を惜しまない。それはリップサービスではない。


 イン・ザ・プール 「イン・ザ・プール」の画像です

 監督・脚本=三木聡。原作=奥田英朗『イン・ザ・プール』(文藝春秋刊)。撮影=小林元(J.S.C.)。美術=花谷秀文。録音=高橋義照。編集=高橋信之。照明=堀直之。音楽=坂口修。装飾=田口貴久。音響効果=小川広美。エンディングテーマ=シュガー・ベイブ『DOWN TOWN』テーマソング=大滝詠一『ナイアガラ・ムーン』伊良部一郎=松尾スズキ、田口哲也=オダギリジョー、岩村涼美=市川実和子、大森和雄=田辺誠一、マユミちゃん=MAIKO、佐俣教授=森本レオ、前西室長=若松了、編集長=ふせえり、吉沢部長=きたろう、姫乃木医師=三谷昇


 「トリビアの泉」など人気番組の構成作家として、シティボーイズ・ライブの演出家として活躍してきた三木聡の本格的な映画初監督作。原作は、奥田英朗の爆笑小説「イン・ザ・プール」。精神科医の伊良部一郎という難しい役は松尾スズキ。行動がむちゃくちゃだが憎めないキャラクターに仕上げた。さすが。プール依存症を田辺誠一、継続性勃起症をオダギリジョー、強迫神経症を市川実和子が、それぞれ持ち味を生かして演じている。市川実和子は、こういう役がぴったりだ。

 中心人物、本筋よりも、脇役と小ネタの方が面白い。少し変わった人たちによる小さなギャグがたくさんちりばめられ、終始くすくす笑いが続く。中でも、編集長役を演じたビシバシステムの「ふせえり」の上手さにうなった。ラスト近くの松尾スズキとの掛け合いでは涙が出るほど笑った。芸の力を見せつけられた感じ。

 実は、この作品の前に「チームアメリカ★ワールドポリス」の予告編をやっていた。現在のアメリカを笑い飛ばす毒に満ちたギャグが満載。その怖れを知らぬギャグを見てからだと、この作品のギャグが本当に小粒に見えてしまう。しかし、まあ仕方ないだろうなあ。


 スカーレットレター 「スカーレットレター」の画像です

 2004年作品。韓国映画。119 分。配給=シネカノン。監督=ピョン・ヒョク(Byun Hyuk)。製作=カン・ミンギュ。製作総指揮=イ・スンジェ。脚本=ピョン・ヒョク。撮影=チェ・ヒョンギ。音楽=イ・ジェジン。編集=ハン・ソンウォン。美術=カン・デヒ。衣装=チョ・ユンミ。ギフン=ハン・ソッキュ(Han Suk-kyu)、カヒ=イ・ウンジュ(Lee Eun-joo)、 ギョンヒ=ソン・ヒョンア、スヒョン=オム・ジウォン


 「スカーレットレター」は、1850年に発表されたナサニエル・ホーソーンの小説「緋文字」の原題。写真館で起こった殺人事件を軸に、担当刑事と未亡人の秘密が交錯する。スタイリッシュな映像や巧みなカメラワークを駆使する一方、情念の渦巻きや孤独を掘り下げていく。事件の混迷とともに複雑に絡み合った愛憎劇は極限に達する。よくある官能的なサスペンスと思っていると、その信じられない展開に腰を抜かすだろう。ヴェルディのオペラなど、クラシック音楽を効果的に使っていた。

 2005年2月22日に自殺したイ・ウンジュの遺作。すさまじい遺作だ。演技派ハン・ソッキュを上回る驚くべき演技力とともに、凛とした美しさを放っていた。みとれた。ジャズ・シンガーを演じ、華麗なピアノ演奏と魅力的な歌声を聞かせる。歌手としての才能も感じる繊細なセクシーさ。素晴らしい。ハン・ソッキュの妻を演じたオム・ジウォンによるチェロの生演奏も異様な迫力があった。


 バッド・エデュケーション 「バッド・エデュケーション」の画像です

 2004年作品。スペイン映画。105 分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ。監督=ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodovar)。製作=ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodovar)。アグスティン・アルモドバル(Agustin Almodoval)。製作総指揮=エステル・ガルシア(Esther Garcia)。脚本=ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodovar)。撮影=ホセ・ルイス・アルカイネ(Jose Luis Alcaine)。音楽=アルベルト・イグレシアス(Alberto Iglesias)。イグナシオ/アンヘル/サハラ=ガエル・ガルシア・ベルナル(Gael Garcia Bernal)、エンリケ=フェレ・マルティネス(Fele Martinez)、パキート=ハヴィエル・カマラ(Javier Camara)、ベレングエル氏=ルイス・オマール(Lluis Homar)、マノロ神父=ダニエル・ヒメネス・カチョ(Daniel Gimenez Cacho)、モニカ=レオノール・ワトリング(Leonor Watling)、 イグナシオ(少年時代)=ナチョ・ペレス(Nacho Perez)、 エンリケ(少年時代)=ラウル・ガルシア・フォルネイロ(Raul Garcia Forneiro)


 ペドロ・アルモドバル監督の半自伝的ドラマ。オープニングタイトルが遊び心に満ちていたので、毒のあるユーモアに彩られたサスペンスを期待したのだが、重いようで軽い中途半端な展開だった。殺人が絡むサスペンス的な展開としては弱く、ストーリーの遊びも足りない。10年以上も脚本を練り直し続けたというから、監督の思い入れは、かなり強いのだろうが。力が入り過ぎたか。エピローグの字幕もアルモドバルらしからぬ凡庸さだった。

 映画の魅力は、ガエル・ガルシア・ベルナルに尽きる。女装したベルナルの美しさといったら。ため息が出るほど。ベルナルは、イグナシオ、アンヘル、サハラの3役をこなしていく。その変ぼうが見どころだ。彼がいなかったら、おぞましさだけが浮き上がった後味の悪い作品になったと思う。彼の存在が、作品を輝かせた。


 エレニの旅 「エレニの旅」の画像です

 2004年作品。フランス・ギリシャ・イタリア合作。170 分。配給=フランス映画社。監督=テオ・アンゲロプロス(Theo Angelopoulos)。製作=テオ・アンゲロプロス(Theo Angelopoulos)、フィービー・エコノモプロス(Phoebe Economopoulos)、アメディオ・パガーニ(Amedeo Pagani)。脚本=テオ・アンゲロプロス(Theo Angelopoulos)、トニーノ・グエッラ(Tonino Guerra)、ペトロス・マルカリス(Petros Markaris)、ジョルジオ・シルヴァーニ(Giorgio Silvagni)。撮影=アンドレアス・シナノス(Andreas Sinanos)。美術=ヨルゴス・パッツァス(Giorgos Patsas)、コスタス・ディミトリアディス(Costas Dimitriadis)。音楽=エレニ・カラインドロウ(Eleni Karaindrou)。エレニ=アレクサンドラ・アイディニ(Alexandra Aidini)、アレクシス=ニコス・プルサディニス(Nikos Poursadinis)、スピロス=ヴァシリス・コロヴォス(Vassilis Kolovos)、 ニコス=ヨルゴス・アルメニス(Giorgos Armenis)、 カッサンドラ=エヴァ・コタマニドゥ(Eva Kotamanidou)


 テオ・アンゲロプロス監督の6年ぶりの新作。ロシア革命で両親を失ったギリシャ難民のヒロイン・エレニの運命を、ギリシャ現代史に重ねた一大叙事詩だ。派手な戦闘シーンを持ち込まずに、20世紀の残酷な悲劇を描いていく。ラストシーンは、一見凡庸なようだが、抑えていた感情の爆発としてはある意味で必然だったと思う。監督は、この作品を自分の母親に捧げ、女性たちの過酷な人生をみつめている。しかし、より基本にあるのは「難民の視点」だ。

 カメラは、ずっと動かないか静かに動き、私たちに考える時間を与える。揺るぎない構図の映像美は、今回も健在。黒を基調にした河での葬儀のシーンは、震えが来るほど美しかった。火と水の対比はタルコフスキーの「ノスタルジア」のように鮮烈だった。


 岸辺のふたり 「岸辺のふたり」の画像です

 2000年作品。イギリス・オランダ合作。8分。配給=クレストインターナショナル。監督、デザイン、ストーリー=マイケル・デュドク・ヴィッド (Michael Dudok de Wit)。音楽監督=ノルマン・ロジェ(Normand Roger)、ドゥニ・シャルラン (Denis Chartrand)。使用曲=「ドナウ川のさざ波」


 2002年広島国際アニメーションフェスティバル・グランプリ&観客賞ダブル受賞。ペンシルとチャコールで描かれた影絵のようなイメージは、最新のデジタルセルアニメーション制作システム「ANIMO」を使った。シンプルで深い味わいのある絵づくり。人物の表情は見えず遠景もシンプルなタッチ。セリフは一切なく、アコーディオンとピアノによる音楽と、人物の微妙な動きで雄弁に語っている。

 ユーリ・ノルシュテインをして「この映画に初めてであった時、これは事件だと思った」「これは偉大な作品」と言わしめた傑作。8分間に父への一途な思いを抱き続けた娘の一生を封じ込めた。それは長い年月であるとともに永遠の一瞬のよう。ストーリーをあれこれと解釈するのではなく、静かに余韻に浸ろう。


 
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