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 愛のコリーダ2000 「愛のコリーダ2000」の画像です

 1976年作品。日本・フランス映画/109分。提供=大島プロダクション×ギャガコミュニケーションズ。製作=アルゴス・フィルム(フランス)、オセアニック(フランス)、大島渚プロダクション。製作代表=アナトール・ドーマン。脚本・監督=大島渚。製作=若松孝二。撮影=伊東英男。照明=岡本健一。美術=戸田重昌。美術担当=下石坂成典。装飾=荒川大。衣装=加藤昌廣。録画=安田哲男。編集=浦岡敬一。音楽=三木稔。演奏=日本音楽家集団。美粧=竹村幸二。結髪=大沢菊江。吉蔵=藤竜也、定=松田英子、「吉田屋」のおかみトク(吉蔵の妻)=中島葵、「吉田屋」の女中松子=芹明香、「吉田屋」の女中キヌ=阿部マリ子、「吉田屋」の女中千恵子=三星東美、老乞食=殿山泰司、「吉田屋」の女中頭お常=藤ひろ子、芸者八重次=白石奈緒美、「みつわ」女中=青木真知子、芸者(「みつわ」)=東祐里子、芸者(「みつわ」)=安田晴美、芸者(「みつわ」)=南黎、芸者(「みつわ」)=堀小美吉、半玉=岡田京子、幇問=松廼家喜久平、「田川」のおかみ=松井康子、大宮先生=九重京司、(満左喜)の女中=富山加津江、蛇の目の娘=福原ひとみ、小料理屋のおやじ=野田真吉、芸者菊竜=小林加奈枝、芸者(「満左喜」)=小山明子


 25年前の日本での公開時には一部シーンはカットされ、シーンによっては全面にぼかしがかって、何をしているのかさえ分らないほどの「修正」がなされていた。今回「愛のコリーダ2000」としてよみがえった作品は、一部にぼかしはあるものの、修正はごくわずかで何をしているかはすべて分る。ショッキングなラストは修正なしで公開された。やっと、日本で「愛のコリーダ」が劇場公開されたと言っていいだろう。

 1936年の「阿部定事件」を男女の壮絶な愛のドラマとして描いた大島監督の熱いまなざし。その力強く美しい映像は、戸田重昌の美術によって、さらに輝きを増している。全く古びていないばかりか、時がたってさらに魅力的になったと感じた。世界に誇りうる傑作である。さらに、じつにさまざまな性の形態が盛り込まれていることにも驚く。「ポルノ」ではないと言われたが、日本文化を踏まえた極上のポルノグラフィでもあると言いたい。

 定役の松田英子は、本当に逸材だった。あの存在感は誰も真似できない。ただ、その後の不幸を知っているだけに複雑な思いになる。ハードコアに挑戦した藤竜也の勇気は、今こそ最大限に評価したい。二人の身体は、映像な美に昇華している。脇役も素晴らしい。中でもみすぼらしい乞食を演じた殿山泰司の「勇気」こそ、最もたたえなければならないだろう。役者だ。


 クリムゾン・リバー 「クリムゾン・リバー」の画像です

 2000年作品。フランス映画。106分。配給=ギャガ・ヒュ―マックス共同。監督=マチュー・カソヴィッツ(Mathieu Kassovitz)。プロデューサー=アラン・ゴールドマン。アソシエート・プロデューサー=キャサリン・モリス。プロダクション・ディレクター=ジェローム・ムシャルウ。ファースト・ディレクターズ・アシスタント=ヴァレリー・オスニン・ジラール。セカンド・ディレクターズ・アシスタント=パスカル・ゲラン。カソヴィッツ氏アシスタント=シルヴィー・カニクイット。ストーリー・ボーダー=ファリド・ケルミチ。スクリプター=ナタリーヴィエルニ、ミケール・アンドレウッチ。キャスティング=ピエール・ジャック・ベニチュ。ジェネラル・アシスタント・ディレクター=シルヴァン・ブラドゥ。デビュティ・アシスタント・ディレクター=マーティン・ジョベール、アントワーヌ・ヴィエルニ。撮影監督=ティエリー・アルボガスト。カメラマン=ジョルジ・ディアン。ピエ―ル・ニーマンス=ジャン・レノ(Jean Reno)、マックス・ケルケリアン=ヴァンサン・カッセル(Vincent Cassel)、ファニー・フェレイラ=ナディア・ファレス、シスター・アンドレ=ドミニク・サンダ、キャプテン・ダーメイン=カリム・ベルカードラ、ドクター・ベルナール・シェルネゼ=ジャン・ピエ―ル・カッセル、修道院長=ディディエ・フラマン、弁護士=フランソワ・レバンタル、校長=フランシン・バージュ、モーターウェイ・サービスの男=フィリップ・ナオン、修道院長の息子=ローラン・ラフィット、墓守=ロベール・ジャンドルゥー、スキンへッド1=クリストフ・ベルナール、スキンヘッド2=ニッキー・ノード、警察官1(サルザック)=トニオ・デスカンヴェル、警察官2(サルザック)=オリヴィエ・ルセ、修道院のシスター=フランソワ―ズ・ロロウ、コンピュータ技術者=ヴァンサン・トゥリ、サルザック・エステートの若者1=サミ・ジトゥーニ、サルザック・エステートの若者2=スリム・ジトゥーニ、橋を壊す警官=クリストフ・ロシニョン、アイデア警官=ドミニク・ベトンフェルド、子供=アレクシス=ロビン、スキンヘッドカフェのオーナー=ローラン・アヴァ―ル、フィリッピ・セルテス=オリヴィエ・モデル、コンピュータ・コップ=ニコラス・コレツキー、警官=ヴァンサン・シメンティ


 「アサシンズ」のマチュー・カソヴィッツ監督が、苦みのきいた娯楽作を作り上げた。山岳アクション、猟奇的殺人ミステリー、閉鎖的な大学空間。この意外な組み合わせによって「クリムゾン・リバー」は、スリリングな展開をみせる。たるみのない展開と力強い映像は見ごたえ十分。こんなに多彩な見せ場を盛り込んだフランス映画は珍しい。ハリウッドなら評価しないが、フランス映画の今後にとっては意義がある。

 映画はタイトルから衝撃的。無数の裂傷を負い、腐敗しかかった死体がクローズアップでなめるように描かれていく。あまりにリアル。あまりにショッキング。「セブン」(デビッド・フィンチャー監督)と違い、実に即物的な描写だ。監督の強引にして魅力的な映像が幕を開ける。

 ジャン・レノとヴァンサン・カッセルが刑事役で登場する。レノの独特の存在感は謎に包まれた物語にぴったり。ヴァンサン・カッセルは、息を飲むような武術を見せる。実際に鼻を骨折したほどの熱演。ナディア・ファレスは、難しい役で今後の飛躍を予感させる。そして、娘をひき殺され発狂した母親役を、かのドミニク・サンダが演じていたのは、思わぬ拾い物だった。


 AVALON 「アヴァロン」の画像です

 2001年。日本映画。106分。配給=日本ヘラルド映画。監督=押井守。エグゼクティブ・プロデューサー=渡辺繁、香山哲、塩原徹、坂上直行。プロデューサー=久保淳。脚本=伊藤和典。音楽=川井憲次。撮影監督=グジェゴシ・ケンジェルスキ。美術=バルバラ・ノバク。衣裳=マグダレナ・テスワフスカ。ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザー=古賀信明。デジタル・アートディレクター=林弘幸。音響デザイナー=井上秀司、ランディ・トム。オリジナルサウンドトラック=メディアファクトリー。アッシュ=マウゴジャータ・フォレムニャック、ゲームマスター=ヴァディスワフ・コヴァルスキ、マーフィー=イエジ・グデイコ、ビショップ=ダリュシュ・ビスクプスキ、スタンナ=バルテック・シヴィデルスキ、受付の女=カタジナ・バルギエヲフスカ、ジル=アリシィア・サプリック、九姉妹のマーフィー=ミハウ・ブライテンヴァルド、ゴースト=ズザンナ・カシュ


 世界的な注目を集めた『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』以来5年ぶりの新作。今回も先進的な技術を使い、今まで見たことのない美しい質感を表現している。これまでのデジタル処理の多くが、アニメ的手法を実写に持ち込む試みだとするなら、この作品は実写をもとにアニメを製作するという方法を取っている。実写とアニメは、デジタル技術の進歩の中で、競いながら溶け合っていくのだろう。

 体感型ネットワーク・ゲームの隠されたフィールドを探るというテーマは、目新しいものではない。しかし、歴史が重層化しているポーランドでオールロケし、セビア色を基調にしたスタイリッシュな映像は、間違いなく押井守の作家性に貫かれている。コーラスを多用し荘厳なまでに構築された川井憲次の音楽は、ストーリーの神話性を高めていく。現実に迫ろうとして異世界を描く押井守は、閉塞的な神話世界との危うい闘いを続けている。


 バトル・ロワイアル 「バトル・ロワイアル」の画像です

 2000年作品。日本映画。103分。配給=東映。監督=深作欣二。原作=高見広春。脚本=深作健太。製作=田中敏雄。撮影=柳島克己。音楽=天野正道。美術=部谷京子。編集=阿部浩英。七原秋也=藤原達也、中川典子=前田亜季、川田章吾= 山本太郎、キタノ=ビートたけし、桐山和雄=安藤政信、相馬光子=柴咲コウ、千草貴子=栗山千明


 国会で表現の法的規制の発言まで飛び出した深作欣二監督70歳、60本目の作品。ヤクザ映画ならどんなに残虐な殺し合いでも良くて、中学生ならR15指定になるのは何故か。理解できない。ストーリーは荒唐無稽のようでいて日本社会を考える思考実験としては、リアリティがある。問われているのは、大人社会のあり方だ。冒頭「この国はすっかりダメになりました」と言われるが、登場する子供たちは、皆生き生きとした人間的な感情にあふれている。不良も含めて、こうした子供たちを恐れている大人たちのひよわさと狂気に慄然とする。

 そして級友を殺さなければ殺されるという限界状況に置かれた15歳の中学生が、どんな選択をするのか。さまざまな道が模索されている。中でも、なごやかな雰囲気だった少女たちが、一瞬にして殺し合うシーンの異様な迫力は忘れがたい。殺りくに満ちてはいるが、スピード感にあふれ、清清しい。甘さを排し時代を突き抜ける力に満ちた傑作。ただ、ラストの「走れ」という文字は、蛇足だった。

 生徒たちは、深作欣二のテンションに良くついてきていた。群像劇としての厚味もある。ビートたけしの絶妙さは評価するとして、藤原達也、前田亜季らも難しい役をこなしていた。しかし、全員が主役という方がいいだろう。自ら死を選ぶ者、迷いつつ逃げ道を探す者たちの中にあって、決然と殺しつづけることを選んだ相馬光子役柴咲コウの熱演が、とりわけ光った。殺しっぷリも、殺されっぷリもすごい。他者への憎悪を抱え込んだ幼年期は描かれていないが、その不幸さが手に取るように伝わってくる。柴咲コウは、今後が楽しみな女優だ。


 レッド・プラネット 「RED PLANET」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。106分。 配給=ワーナー・ブラザース映画。監督=アントニー・ホフマン(Antony Hoffman)。脚本=チャック・ファーラー、ジョナサン・レムキン。原案=チャック・ファーラー。製作=マーク・カントン、ブルース・バーマン、ジョージ・サラレギー。製作総指揮=チャールズ・J・D・シュリッセル、アンドルー・メイソン。撮影=ピーター・サシツキー。美術=オーウェン・パターソン。編集=ロバート・K・ランバートA.C.E、ダラス・S・ビュエット。音楽=グレイム・レベル。衣装=キム・バレット。視覚効果監修=ジェフリー・A・オークン。ギャラガー=ヴァル・キルマー(Val Kilmer)、ボーマン=キャリー=アン・モス(Crrie-Anne Moss)、バーチナル=トム・サイズモア、サンテン=ベンジャミン・ブラット、ペテンギル=サイモン・ベイカー、シャンティラス=テレンス・スタンプ(Terence Stamp)


 ナイキのテレビCMで 一躍有名になったアントニー・ホフマンの初監督作。「火星地球化計画」をベースにしたSF作品。ストーリーも映像も、飛び抜けて独創的という訳ではないが、見事な火星の風景、緻密な音響設計、滑らかなロボットの動作、多彩な登場人物、スピーディな展開と、いずれも時間をかけてつくられたことが分かり、全体としては、かなり密度の濃い作品になっている。CGに依存した派手なだけで大味なSFが多い中で、ハイレベルの仕上がりといえる。エマ・シャプリンの美声を含め、音楽もなかなか聞かせる。

 「マトリックス」(ウォシャウスキー兄弟監督)のトリニティー役で有名になったキャリー=アン・モスが、宇宙船の船長ボーマンを演じている。次々に襲いかかる困難な状況を、独力で乗り越えていく。タフ。しかも人間的な優しさも持ち合わせている。「エイリアン」のリプリーをほうふつさせる。いや、リプリー以上に冷静だ。ヴァル・キルマーら男性たちも個性的。哲学的な思索にふけるベテラン宇宙飛行士のシャンティラス役にテレンス・スタンプを充てたのは、巧みなキャスティングだ。


 キャラバン 「CARAVAN」の画像です

 1999年作品。フランス=ネパール=イギリス=スイス合作映画。108分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ。監督・脚本=エリック・ヴァリ(Eric Valli)。製作=ジャック・ペラン。脚本=オリヴィエ・ダザ。脚本協力=ジャック・ペラン、ナタリー・アズレ、ジャン・クロード・ギルボー、ルイ・ガルデル。撮影=エリック・ギシャール、ジャン・ポール・ミューリス 。音楽=ブリュノ・クーレ(Bruno Coulais)。ティンレ=ツェリン・ロンドゥップ、パサン・ツェリン=カルマ・ワンギャル、ペマ=ラブカ・ツァムチョエ、カルマ=グルゴン・キャップ、ノルブ=カルマ・テンジン・ニマ・ラマ


 ヒマラヤ4000メートル以上の山地でのオールロケによる作品。構想10年。80年代からネパールに住んでいたエリック・ヴァリ監督は、3年間ドルポの村に住み、村人との信頼関係を築いていった。その結果、大自然の中での壮大なドラマを、村人たちが演じるという困難な課題を克服することができた。写真家でもある監督だけに、自然の切り取り方が抜群に美しい。そして、人間と自然のたぐいまれな距離感は、そこに住んでいる者でなければ、なかなか生まれないだろう。

 麦を得るための命懸けのキャラバン。そこに指導者をめぐる世代間の対立を絡める骨太の構図。なんといっても長老ティンレ役ツェリン・ロンドゥップの渋い演技が光る。ただ、死に際に、それまで憎んでいたカルマとすんなりと和解するシーンは、ちょっと違和感があった。もっとも、心の奥底で通じ合っていたとも考えられるが。 子役パサンを演じたカルマ・ワンギャル少年の、涼し気なまなざしが印象的。次期指導者の片鱗を感じた。


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