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 見出された時 「見出された時」の画像です

 1998年作品。フランス・ポルトガル・イタリア合作。163分。配給=日本ヘラルド映画。製作=パウロ・ブランコ。監督=ラウル・ルイス(Raoul Ruiz)。脚本=ジル・トラン、ラウル・ルイス。原作=マルセル・プルースト「失われた時を求めて」の最終編「見出された時」。音楽=ジョルジュ・アッリアガダ。撮影=リカルド・アロノヴィッチ。編集=ドニーズ・カザビアンカ。美術=ブリュノ・ボジェ。衣裳=ガブリエッラ・ペスクッチ、カロリーヌ・ド・ヴィヴェーズ。オデッド=カトリーヌ・ドヌーヴ(Cathrine Deneuve)、ジルベルト=エマニュエル・ベアール(Emmanuelle Beart)、モレル=ヴァンサン・ペレ―ズ、シャルリュス男爵=ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)、サン=ルー=パスカル・グレゴリ―、語り手(マルセル)=マルチェッロ・マッツァレッラ、ヴェルデュラン夫人=マリ=フランス・ピジエ、アルベルチーヌ=キアラ・マストロヤンニ、ファルシー夫人=アリエル・ドンバール、ゲルマント公爵夫人=エディット・スコブ、女優ラシェル=エルザ・ジルベルシュタイン


 マルセル・プルースト「失われた時を求めて」の最終編「見出された時」を中心とした映画化。ハリウッド映画を見なれていると、序盤での「つかみ」の展開に慣れてしまう。しかし、この作品はゆっくりと静かに物語を進めていく。最初はとまどうものの、やがてゆるやかに物語に入り込んでいける。そうしないと、まどろみがやってくるが。戦争という過酷な状況にありながら、ドラマチックからは程遠い。夢のようにすべてがファンタジック。パッチワークのように時空が自由に断片化している。多くの登場人物が複雑な関係を持ちながら、移ろっていく。説明は少ない。ラウル・ルイス監督が自ら語っているように、原作を知らないと分りづらい。ただ、マルセル自身が失われた時、忘れられた時代を新たに見い出すものとして、芸術の価値を噛み締める結末は、じんわりと感動的で余韻が長く残る。

 キャスティングがすごい。すごすぎる。監督は、貴族に憧れるマルセルの視線を意識した配役だというが、カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール、マリ=フランス・ピジエと並ぶと、壮観だ。ジョン・マルコヴィッチも屈折したシャルリュス男爵を熱演していた。有名な俳優たちにまぎれてマルセル役に無名の俳優を置く辺りに、監督の優雅な遊びを感じた。


 THE CELL 「ザ・セル」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。109分。ギャガ・ヒュ―マックス共同配給。監督=ターセム(Tarsem)。製作=フリオ・カロ。製作=エリック・マクレオド。共同製作=ステイーヴン・R・ロス。脚本/共同製作=マーク・プロトセヴィッチ。共同製作=ニコ・ソウルタナキス。撮影監督=ポール・ローファー。美術=トム・フォーデン。衣装=エイプリル・ネイピア。衣装=石岡瑛子。メイクアップ=ミシェル・バーク。特殊効果=クレイ・ピニー。視覚効果=ケヴィン・トッド・ホー。編集=ポール・ルベルA.C.E.。編集=ロバート・ダフィ。音楽=ハワード・ショア。キャサリン・ディーン=ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、FB1捜査官ピーター・ノパック=ヴィンス・ヴォーン、カール・スターガー=ヴィンセント・ドノフリオ(Vincent D'Onofrio)、ミリアム・ケント博士=マリアンヌ・ジャン=バプティスト、FB1捜査官ゴードン・ラムジー=ジェイク・ウェバー、ヘンリー・ウェスト= ディラン・ベイカー、ジュリア・ヒクソン=タラ・サブコフ、スターガー少年役=ジェイク・トーマス、テディー・リー=ジェームズ・ギャモン、ルシアン・バイネス=パトリック・ボーショー、アン・マリー・ビクシー=キャサリン・サザーランド


 拉致されている被害者の居場所を知るために、意識を失った犯罪者の意識に入り込むという発想自体は、ありふれたものだ。しかし、錯乱した精神世界を奔放に映像化しようとするターセム監督にとっては、またとないキャンバスだった。さまざまな倒錯的な映像が、尖った美意識でフォルム化されている。不気味で残酷で、しかし美しい世界。ぞくぞくする。既存のアーティストのアイデアを寄せ集めた感があり、個々のシーンの独創性は少ないものの、ここまで徹底すれば新しい映像地平といえるかもしれない。衣装の石岡瑛子も大健闘している。

 少年期に虐待を受け深いトラウマを抱えて猟奇的な殺人を繰り返す犯罪者カール・スターガーをヴィンセント・ドノフリオが演じている。絶句するほどの迫力。彼の代表作の一つになるのでないか。そして、彼の意識に入り込む精神科医キャサリン・ディーンは人気絶頂のジェニファー・ロペス。 現実世界の意志的な性格と、精神世界でのめくるめくような七変化の対比が楽しめる。


 サトラレ 「サトラレ」の画像です

 2001年作品。日本映画。130分。制作=ROBOT。配給=東宝。監督=本広克行。原作=佐藤マコト。脚本=戸田山雅司。音楽=渡辺俊幸。製作総指揮=萩原敏雄。製作=横山茂幹、阿部秀司、鈴木敏夫、高井英幸、小野清司。企画=戸谷仁。プロデューサー=奥田誠治、井上健、堀部徹、安藤親広。撮影=藤石修。照明=水野研一。録音=芦原邦雄。美術=部谷京子。装飾=赤塚佳仁。編集=田口拓也。里見健一=安藤政信、小松洋子=鈴木京香、川上めぐみ=内山理名、白木重文=松重豊、国光博一=小野武彦、東隆之=寺尾聰、里見キヨ=八千草薫、岡持勝則=小木茂光、吉付伸江=深浦加奈子、本間秀幸=半海一晃、青木順也=田中要次、遠藤常友=川端竜太、田崎修=高松英郎、近衛栄介=藤木悠、安場史郎=武野功雄


 チラシに「泣きのエンターティンメント」というコピーが付けられているが、まさにその通り。青年の清らかな心に触れて、泣くことができたという満足に浸ることができる。「考えていることがすべて患者に伝わってしまう医者がいたら」というドリフターズのコントのようなアイデアだが、その人物に真実を知られないために国家政策として24時間監視し保護しているという、荒唐無稽な設定。さすがは本広克行監督、ほどよいスパイスで味付けし、笑いと涙をブレンドしていく。

 主人公の安藤政信が、ピュアな青年を好演している。この年頃の男性は、もっとHだと思うのだけれど、それを言い出すと全体が崩れるから大目に見よう。私は、「バトル・ロワイアル」(深作欣二監督)での、一言も話さず、ひたすら殺人の快楽を追い求めていた桐山役との対比を楽しんだ。すべてが対照的で驚いてしまう。こういう偶然も面白い。鈴木京香はコミカルとシニカルを使い分けられる女優に育った。そして、ベテランの八千草薫。穏やかな表情が年を取っても美しい。


 小説家を見つけたら 「Finding Forrester」の画像です

  2000年作品。アメリカ映画。136分。配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント。監督=ガス・ヴァン・サント。製作=ローレンス・マーク、ショーン・コネリー、ロンダ・トルフソン。脚本=マイク・リッチ。撮影監督=ハリス・サヴィデス。美術=ジェーン・マスキー。編集=ヴァルディス・オスカルスドッティア。衣装デザイン=アン・ロス。ウィリアム・フォレスター=ショーン・コネリー、ジャマール・ウォレス=ロブ・ブラウン、クローフォード教授=F・マーリー・エイブラハム、クレア・スペンス=アンナ・パキン、テレル= バスタ・ライムス


 傑作「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント監督による新作。青年の天才的な才能に気付いた大人が、その才能を伸ばそうと交流を深めるという筋書き似ている。しかし、前作のような細部の工夫が乏しいので、感動には導かれない。文学や音楽の使い方が、いかに巧みでも、脚本の弱さは隠せない。天才青年が16歳というのも、やや無理がある。せめて18歳でなくては、あの熟達の文章にリアリティがなくなる。

 隠とん生活をしている小説家をショーン・コネリーが演じている。さすがに堂々としている。青年の才能をつぶそうとするクローフォード教授をF・マーリー・エイブラハムが演じているのも見もの。「アマデウス」でのサリエリ役が、強烈に脳裏に焼き付いているからだ。ただ、この作品では彼の内面にまで視線が届いてない。そして、ベテラン二人と互角に張り合ったのが新人ロブ・ブラウン。最大の収穫かもしれない。


 スナッチ 「スナッチ」の画像です

 2000年作品。アメリカ・イギリス合作。102分。配給=ソニーピクチャーズエンターティンメント。製作=マシュー・ボーン。脚本・監督=ガイ・リッチー。撮影=ティム・モーリス=ジョーンズ。美術=ヒューゴ・ルチック=ワイコスキー。衣裳デザイン=ベリティ・ホークス。音楽=ジョン・マーフィー。キャスティング=ルシンダ・サイソン。メイク=フェイ・ハモンド。編集=ジョン・ハリス。タイロン=エイド、ニール=ウィリアム・ベック、エロル=アンディ・ベックウィズ、マレット=オーエン・ブレムナー、アレックス=ニッキー・コリンズ、スージー=ティーナ・コリンズ、ママ・オニール=ソーチャ・キューザック、フランキー・フォー・フィンガーズ=ベネチオ・デル・トロ、ローズバッド=サム・ダグラス、アビー=デニス・ファリーナ、ダレン=ジェイソン・フレミング、ゴージャス・ジョージ=アダム・フォーガティ、ブリック・トップ=アラン・フォード、ビニー=ロビー・ジー、パッド・ボーイ・リンカーン=ゴールディ、トミー=スティーブン・グレアム、ソル=レニー・ジェイムズ、ブレット・トゥース・トニー=ビニー・ジョーンズ、ミッキー・オニール=ブラッド・ピット、ダグ・ザ・ヘッド=マイク・リード、ボリス・ザ・ブレイド=ラデ・シェルベッジヤ、ターキッシュ=ジェイソン・ステイサム


 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」で抜群の映像・音楽センスを見せたガイ・リッチー監督の新作。 こんどもやってくれた。さまざまな悪党どもの血なまぐさいドタバタ劇を、ハイスピードの展開で混ぜ合わせ、あっという間に終えてしまう。通常なら3時間の物語を鮮やかな手さばきで100分余りに仕上げた。群集劇ではあるが、「マグノリア」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)のような重たい手応えとは対極にある。軽い。粋といえば、粋。肩の凝らない、しかしスタイリッシュな手法を編み出したと言える(肩は凝らないが、眼は疲れる)。

 相変わらずのアクの強いキャスティング。しかし、ブラッド・ピットの使い方にはとりわけ感心した。素手ボクシングが強い流れ者の役だが、けっして前には出ていない。へたくそな刺青を全身に入れたチープさが、独特の魅力を引き出している。 本来は、こういう危ない役がハマリなのだと思う。ボクシングでの派手な殴られ方もいい。そこにも、ガイ・リッチーのセンスが光っている。


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