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2007.3

 さくらん 「さくらん」の画像です

 安野モヨコのコミックが原作。写真家の蜷川実花が長編映画監督。脚本は、タナダユキ。音楽は椎名林檎。美術に岩城南海子。主要スタッフを女性たちで固めている。自身の写真を着物の柄にするなど、蜷川実花の美的センスが全体を支配しているが、映画としての流れがややもたつく。原作にない金魚の使い方は、認めるが、ラストの桜の使い方は全然粋じゃない。ただ、きれいごとに終わらせない細かなこだわりには、映画監督としての資質も感じた。今後に期待したい。


 パフューム ある人殺しの物語 「パフューム ある人殺しの物語」の画像です

 映画に実際の匂いを表現することはできないが、トム・ティクヴァ監督の「パフューム ある人殺しの物語」は、強烈な芳香を放つ。何を書いてもネタばれになるが、天才的な嗅覚の持ち主が、究極の香水をつくるために若い女性たちを殺し続けるという物語。本人には体臭がないというあたりから、寓話的な展開が予想される。

 しかし、それにしても、逮捕され処刑場に引き出された後の展開は、あっと驚く飛躍ぶりだ。処刑を逃れた彼が、自分が生まれた悪臭漂うパリに戻った後の行為と結末も、とても超現実的。ドイツ映画(舞台はフランスで会話は英語だが)ということで、「ブリキの太鼓」と比較されているが、むしろガルシア・マルケス原作の映画「エレンディラ」に近い感触だと思う。


 叫(さけび) 「叫(さけび)」の画像です

 黒沢清監督の新作「叫(さけび)」。殺人事件が続くが、その動機がはっきりとしているので、ちょっとした偶然で殺される理不尽さはあるが、10年前の「CURE キュア」よりも、怖くないな、と思った。しかし、アパートや警察署の異様なまでの気味の悪さはさすがだと感心していた。幽霊の出し方も、意図的にセオリーを逸脱させている。

 しかし、日にちが経つうちに、「叫(さけび)」の居心地の悪さが増幅してくる。埋め立て地に沁みだした海水の場面が、頭から離れなくなる。過去を隠蔽しても、恨みの歴史は海水のように沁みだしてくる。幽霊の憎しみは、日本全体に向けられているのではないか。日本すべてが海水に溺れて死ぬのではないか。そんな思いが増す。この作品こそ、現代の「日本沈没」だ。


 
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