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 ゲロッパ!  「ゲロッパ!」の画像です

 2003年作品。日本映画。112分。配給=シネカノン。監督・脚本=井筒和幸。脚本=羽原大介。撮影=山本英男。照明=渡辺孝一。音楽=白取貢。美術=大坂和美、須坂文昭。編集=冨田伸子。製作総指揮=李鳳宇。羽原大介=西田敏行、上原かおり=常磐貴子、太郎=山本太郎、金山正男=岸部一徳、金山ひとみ=藤山直美、晴彦=桐谷健太、健二=吉田康平、岡部優夫=長塚圭史、上原歩=太田琴音、ウィリー=Willie Raynor、高井=ラサール石井、木下=木下ほうか、村山=田中哲司、緒方=塩見三省、佐藤和子=根岸季衣、美容室のミツ&寿司屋のタツ=篠井英介、藤沢香織=寺島しのぶ、沼田=小宮孝泰、駅員=徳井優、有名ロック歌手=トータス松本、正体不明の男=岡村隆史、田中=益岡徹


 「のど自慢」の群像劇も楽しかったが、「ゲロッパ!」は笑いと涙の見事なドラマに仕上がっている。あえて紋切り型の設定を選びながら、巧みな構成で胸のすくようなクライマックスに運んでくれる。人情劇の王道を示した、観た後に元気の出る作品だ。

 最初は、西田敏行ら出演者たちの大袈裟な演技に閉口した。しかし、やがてコテコテの展開に溶け込んで気にならなくなった。常磐貴子は、美しいだけでなく、爽快な演技をみせる。そして太田琴音がおませな少女を魅力的に演じた。喜劇には、こういう子役が欠かせない。


 フリーダ  「フリーダ」の画像です

 2002年作品。アメリカ映画。123分。配給=アスミック・エース。製作=サラ・グリーン、サルマ・ハエック(Salma Hayek)。監督= ジュリー・テイモア(Julie Taymor)。 原作=ヘイドゥン・ヘレッラ(Hayden Herrera)「フリーダ・カーロ生涯と芸術」(晶文社)。脚本=クランシー・シーガル(Clancy Sigal)、ダイアン・レイク(Diane Lake)、グレゴリー・ナヴァ(Gregory Nava) 、アンナ・トーマス(Anna Thomas)。撮影= ロドリゴ・プリエト(Rodrigo Prieto) 。音楽= エリオット・ゴールデンサール(Elliot Goldenthal) 。美術=フェリペ・フェルナンデス・デル・パソ。編集=フランソワーズ・ボノA.C.E.。衣装=ジュリー・ウェス。パペットアニメーター=スティーヴン・クェイ、ティモシー・クェイ。フリーダ・カーロ=サルマ・ハエック(Salma Hayek)、ディエゴ・リベラ=アルフレッド・モリナ(Alfred Molina )、リオン・トロツキー=ジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush )、ティナ・モドッティ=アシュレイ・ジャッド(Ashley Judd)、シケイロス=アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)、ネルソン・ロックフェラー=エドワード・ノートン(Edward Norton)


 信じられないほど過酷な境遇ながら、驚くほど自由で創造的な人生を送ったフリーダ・カーロを明るく動的に描いた傑作。ジュリー・テイモア監督のさまざまな遊び心が、作品をさらに楽しくしている。画家をテーマにした映画では、トップクラスの出来栄だろう。

 鮮やかな色彩に包まれ、華麗な衣装をまとったサルマ・ハエックは、美しくはつらつとしている。プロデューサ−も務めたハエックは、8年間の歳月をかけ、妥協を排して完成にこぎつけた。その情熱が映像からも伝わってくる。カーロとハエックの激しい情熱が作品を輝かせている。周りの名優たちが、個性的な役を的確に演じ、ハエックを引き立たせているのはさすがだった。


 蒸発旅日記  「蒸発旅日記」の画像です

 2003年作品。日本映画。85分。配給=ワイズ出版。監督:山田勇男。助監督=森崎偏陸。企画・製作・プロデューサー:岡田博。ラインプロデューサー:北川篤也。脚本:北里宇一郎、山田勇男。原作:つげ義春。美術監督:木村威夫。撮影監督:白尾一博。衣装:小野明美。タイポ・デザイン=鈴木一誌。津部義男=銀座吟八、須藤静子=秋桜子、姉・踊り子=清水ひとみ、妹・踊り子=藤野羽衣子(ふじの・ういこ)、墓石を探す老人=田村高廣、列車の女=夕沈、新月の少年=七海遥(ななみ・はるか)


 宮沢賢治を取り上げた切なくもはかない壊れやすい砂糖菓子のような「アンモナイトのささやきを聞いた」から11年。待望の長篇作が、公開された。今回は、寺山修司、つげ義春、そして鈴木清順の美意識が絶妙に溶け合い山田勇男ワールドを超えた佳作。山田勇男ファンとしては、嬉しいような悲しいような不思議な感覚に襲われた。

 フィルムとしての微妙な質感はデジタル化で、やや失われているものの、映像のクオリティーはすこぶる高い。整い過ぎていることが欠点に思えるほど、どの映像も美しい。個性がぶつかりあうのではなく、つげワールドの奥行きの中に、きらきらと輝きながら収まっている。俳優たちも、皆好演している。新月の少年役・七海遥の鋭角的な美しさとともに、妹・踊り子役・藤野羽衣子の肉感的にして母性的な存在感が、鮮烈に脳裏に残った。


 HERO  「HERO」の画像です

 2002年作品。中国映画。99分。配給=ワーナー・ブラザーズ。監督=チャン・イーモウ。製作;ビル・コン、チャン・イーモウ。製作総指揮=ドー・ショウファン、チャン・ウェイビン。脚本=リー・フェン、チャン・イ−モウ、ワン・ビン。原案=チャン・イーモウ、リー・フェン、ワン・ビン。撮影=クリストファー・ドイル、H.K.S.G.。アクション監督=トニー・チン・シウトン。編集=チャイ・ルー、アンジ−・ラム。録音=タオ・ジン。美術=フォ・ティンシャオ、イー・ジェンジョウ。衣装デザイナー=ワダエミ。作曲/指揮=タン・ドゥン。ヴァイオリン演奏=イツァーク・パールマン。太鼓演奏=鼓童。製作;ビル・コン、チャン・イーモウ。製作総指揮=ドー・ショウファン、チャン・ウェイビン。無名=ジェット・リー、残剣=トニー・レオン、飛雪=マギー・チャン 、如月=チャン・ツィイー、秦王=チェン・ダオミン、長空=ドニー・イェン


 秦王と無名の対話で、二転三転するストーリー展開に合わせ、色彩が激変する。全編が高い水準の様式美で統一された、壮大なスケール感のアクション大作。巨大スクリーンで見なければならない作品だ。人間ドラマの面白さよりも、次から次と展開される映像美に圧倒される。すべてがクライマックスを思わせる力の入れようだ。99分だが、大作を観終わったような感慨を覚えた。

 「グリーン・デスティニー」のめくるめくようなアクションと広大な自然景観との映像的調和は、軽々と乗り越えられてしまった。そして、アクションシーンよりも衝撃的なのが、黒澤明監督の「蜘蛛の巣城」を1000倍派手にしたようなおびただしい矢の飛来シーン。おそらく空前絶後だろう。前半とラストで、効果的に使われている。ここまで映像に迫力があると、個性的な俳優たちの熱演もかすみがちだが、秦王役のチェン・ダオミンの聡明な演技が印象的だった。


 ハルク  「ハルク」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。130分。配給:UIP映画。監督=アン・リー。製作=アヴィ・アラッド、ラリー・フランコ、ゲイル・アン・ハード、ジェームズ・シェイマス。製作総指揮=スタン・リー、ケヴィン・フィージ。原作=スタン・リー。原案=ジェームズ・シェイマス。脚本=マイケル・フランス、ジョン・ターマン。撮影=フレデリック・エルムズ。音楽=ダニー・エルフマン。編集=ティム・スクワイアズ。ブルース・バナー(ハルク)=エリック・バナ、ベティ・ロス=ジェニファー・コネリー、デヴィッド・バナー=ニック・ノルティ、ロス将軍=サム・エリオット、タルボット=ジョシュ・ルーカス


 「グリーン・デスティニー」のアン・リー監督が、人気コミックをどう料理するか、興味深く公開を待っていた。失敗作。挑戦的ではあるが、バランスが悪く、映像もドラマも中途半端。ちくはぐさと重苦しさだけが残った。ラズベリー賞候補か。巷では、巨大化しても破れないパンツネタで盛り上がっている。やれやれ。

 ブルース・バナーがハルクに変身するまでが、やたらと長く、物語の盛り上がりが乏しい。ハルクのバトルは、砂漠のシーンなどで輝きを見せるものの、キャラクター的な地味さを克服できていない。ハルクのCG質感は、精巧な粘土細工のよう。これって、もしかしてクレイアニメへのオマージュか。そんなわけないか。ジェニファー・コネリーは、悲しみの表情は美しいが、控えめなまま終わってしまった。


 シティ・オブ・ゴッド  「シティ・オブ・ゴッド」の画像です

 2002年作品。ブラジル映画。130分。配給:アスミックエース。監督:フェルナンド・メイレレス。共同監督:カチア・ルンチ。原作:パウロ・リンス。脚本:ブラウリオ・マントヴァーニ。撮影:セザール・シャローン。編集:ダニエル・レゼンテ。美術:ツレ・ペアケ。演技指導:ファチマ・トレド。音楽:アントニオ・ピント、エチ・コルデス。ブスカペ:アレキサンドレ・ロドリゲス、リトル・ゼ:レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、マネ:セウ・ジョルジ、カベレイラ:ジョナタン・ハーゲンセン、ベネ:フィリピ・ハーゲンセン、リトル・ダイス:ドグラス・シルヴァ


 ことしのベストフイルム。100点満点を献上したい最高にクールな社会派作品。ドキュメンタリータッチの生々しさと軽快な音楽、切れの良い映像、絶妙なストーリー展開が、きっちりとかみ合って、屈指の傑作が生まれた。この密度の濃さと映画的な魅力に、打ちのめされ、幸せな時間を楽しんだ。

 作品の冒頭から、あまりのテンポの良さに引きずりこまれるだろう。さまざまな映像的な仕掛けが、押し付けがましくなく、作品を盛り上げていく。ブラジルのスラム街の血塗られた現実に肉迫しつつ、距離を置いたスタンスが素晴らしい。深作欣二監督に見せてあげたかった。観たら、きっと嫉妬しただろうな。


 
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