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 隣のヒットマン 「The Whole Nine Yards」の画像です

  2000年作品。アメリカ映画。99分。配給=20世紀フォックス。監督=ジョナサン・リン。製作=デイビット・ウィリス、アラン・カウフマン。製作総指揮=アンドリュー・スティーブンス。脚本=ミッチェル・カプナー。撮影=デイビット・フランコ。プロダクション・デザイン=デイビット・L・スナイダー。編集=トム・ルイス。衣裳=エディ・ジギュエール。音楽=ランディ・エデルマンジミー・チュデスキ=ブル ース・ウィリス、オズ=マシュー・ペリー、ソフィ=ロザンナ・アークェット、シンシア=ナターシャ・ヘンストリッジ、ジル=アマンダ・ピート(Anand Peet)、フランキー=マイケル・クラー ク・ダンカン、ヤンニ=ケヴィン・ポラック


 殺意を抱くほどいがみ合っている歯科医夫婦の隣に、伝説のヒットマン・ジミーが引っ越してきたら...。ジョナサン・リン監督は、なかなか粋なコメディを作り上げた。余裕に満ちたヒットマンをブル ース・ウィリスが演じ、あたふた騒ぎまくる歯科医オズをマシュー・ペリーが熱演。この二人にジミーの妻シンシアとオズの助手ジルが絡み、コントを重ねていく。歯科医とヒットマンの意外な組み合わせが、ラストで生かされる展開に驚く。とにかく飽きさせない展開が心地よい。

 「スピーシーズ」(ロジャー・ドナルドソン監督)のナターシャ・ヘンストリッジが、オズとの恋におちるジミーの妻を好演した。そして、注目はオズの助手ジル役のアマンダ・ピート。どこか歯車が狂っているような危ない性格ながら、ジミーと結ばれる可愛らしい女性の魅力を感じさせる。ソフィ役のロザンナ・アークェットは、夫を殺すことに執念を燃やす切れかかった妻をコミカルに演じた。こういう大人の遊びに徹した映画は、最近めっきり少なくなった。


 アタック・ザ・ガス・ステーション! 「アタック・ザ・ガス・ステーション!」の画像です

 1999年作品。韓国作品。113分。配給=松竹。制作=キム・ミヒ。監督=キム・サンジン。脚本=パク・チヨンウ。撮影=チェ・ジョンウ。編集=コ・イムピョ。音楽=ソン・ムヒヨン。美術=オ・サンマン。ノーマーク=イ・ソンジェ、ムデポ(無鉄砲)=ユ・オソン、タンタラ=カン・ソンジン、ペイント=ユ・ジテ


 韓国で歴代興行記録第3位を記録した。刹那的な若者の犯罪を描いた荒削りな作品と思っていたが、ガス・ステーションという施設の特徴を最大限に生かしたスピード感のある佳作だった。「なんとなく」襲撃を思い立った4人の無軌道ぶりを強調しつつ、やがてそれぞれの屈折した過去を挿入し、徐々に感情移入をさそう仕組みだ。物語は、周囲を巻き込みつつ入り乱れ、怒涛のクライマックスに突入する。はらはらしながら迎えた納得の結末に拍手。

 ノーマーク、ムデポ、タンタラ、ペイント。4人は、個性的な性格付けがされているが、中でも目を引くのが挫折した天才投手ノーマーク。寡黙ながら、圧倒的な存在感を放っていた。イ・ソンジェは、今後名優として成長していくに違いない。


 夜の蝶/ラウル・セルヴェの世界 「夜の蝶」の画像です

 ベルギー・アニメーションの第一人者・ラウル・セルヴェ(Raoul Servais 1928.05.01生まれ)の代表作5作品を上映する「夜の蝶/ラウル・セルヴェの世界」。札幌での公開を心待ちにしていた。5作とも、作風もテーマも違い、常に新しい技法を探究し続けている姿勢がはっきりと伝わってくる。それでいて、どの作品も完成度が高い。ほぼすべての作品が賞を受賞しているのも当然だろう。権力に対する強靱な批判精神と柔軟な想像力とユーモアのセンスを合わせ持っている。

 「ハーピア HARPYA」(1979年製作、9分)は、実際の人間を使った風変わりなアニメだ。女性の上半身と鳥の下半身を持つハーピアをめぐるコミックホラーの味わい。実際の人間を使った風変わりなアニメだ。カンヌ国際映画祭短編部門パルムドールを受賞している。 「クロモフォビア CHRONMOPHOBIA」(1966年製作、10分)。 カラフルで自由な社会をモノクロの全体主義が襲う。それを可愛い少女とピエロが再び色彩豊かな世界に戻す。基本となるアイデアは単純だが、両者の戦いをアニメ的な遊びをふんだんに盛り込んで描いている点が素晴らしい。

 「人魚 SIRENE」(1968年製作、9分30秒)。港にある巨大なクレーンと古代の怪鳥。攻撃的な線画が恐ろしい雰囲気を漂わせている。釣り上げられた人魚は殺され、人間と魚の部分に切断されるが、少年の笛によって人魚は蘇る。時代への決意が感じられる。 「語るべきか、あるいは語らざるべきか TO SPEAK OR NOT TO SPEAK」(1970年製作、11分)は、安易なヒッピー文化に対する批判的な内容。自由だったはずの表現が商品化され権力に利用されていく。やや堅い。ポール・デルボーへのオマージュ 「夜の蝶 NACHTVLINDERS」(1998年製作、8分)は、静かなたたずまいの中に甘美な香りを醸し出している。こういう味わいはなかなか出せるものではない。


 
 アタック・ナンバーハーフ「アタック・ナンバーハーフ」の画像です

 2000年作品 。タイ映画。104分。配給=クロックワークス。監督=ヨンユット・トンコントーン(Yongyoot Thongkongtoon)。製作=ウィスーット・プーンウォララック。撮影=ジラ・マリクン。衣装=エカシット・ミープラスゥートクン。音楽=ワイルド・アット・ハート。ジュン=チャイチャーン・ニムプーンサワット、モン=サハーパープ・ウィーラカーミン、チャイ=ジェッダーポーン・ポンディー、ノン=ジョージョー・マイオークチィ、ピア=ゴッゴーン・ベンジャーティグーン、ウィット=エーカチャイ・ブーラナパーニット、ビー監督=シリタナー・ホンソーポン


 心に元気のスパイク炸裂!!。タイ国体に、オナベの監督とほとんどがオカマの選手のチームが出場し、なんと優勝してしまったという実話に基づくスポ根コメディ。笑わせて、最後はじーんと感動させるという定石通りのストーリー運びだが、気持ち良い元気を与えてくれる快作だった。保守的なタイでの大ヒットもうなずける。原題の「サトリーレック」は、鉄の女という意味。実際のチーム名を付けているが、邦題の「アタック・ナンバーハーフ」は秀抜。監督自身も「アタック・ナンバーワン」を参考にしたと話しているから、ぴったりのネーミングだ。

 ピア役のゴッゴーン・ベンジャーティグーンがはつらつとして美しい。彼だけは実際のゲイ。その他はストレートの俳優が演じている。作品を爽やかにしているのがジュン役のチャイチャーン・ニムプーンサワット。とてもチャーミングな存在で映画の雰囲気を盛り上げている。逞しい身体と柔らかなしぐさのミスマッチが楽しいノンを演じたジョージョー・マイオークチィも貴重なキャラクター。一番笑わせてくれた。


 ショコラ 「ショコラ」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。121分。配給=アスミック・エース、松竹。監督=ラッセ・ハルストレム(Lasse Hallstrom)。製作総指揮=ボプ・ワインスタイン、ハーヴィ・ワインスタイン、メリル・ポスター、アラン・C・プロンフィスト。製作=デイヴィッド・プラウン、レスリー・ホールラン、キット・ゴールデン。原作=ジョアン・ハリス。脚色=ロバート・ネルスン・ジェイコプズ。 撮影=ロジャー・プラット。プロダクション・デザイン=デイヴィッド・グロップマン。編集=アンドリュー・モンドシェイン。衣装=レネー・エ一ルリッヒ・カルフュス。音楽=レイチェル・ポートマン。ヴィアンヌ・ロシェ=ジュリエット・ビノシュ(Juliette Binoche)、ルー=ジョニー・デップ(Johnny Depp)、アルマンド・ヴォワザン=ジュディ・デンチ(Judi Dench)、ジョゼフィーヌ・ミュスカ=レナ・オリン(Lena Olin)、レノ伯爵=アルフレッド・モリーナ、セルジュ・ミュスカ=ピーター・ストーメア、カロリーヌ・クレルモン=キャリー=アン・モス、オデル夫人=レスリー・キャロン、ギヨーム・プレロ=ジョン・ウッド、アンリ神父=ヒュー・オコナー、アヌーク・ロシェ=ヴィクトワール・ティヴィソル、リュック・クレルモン=オーレリアン・ペアレント=ケーニング、ジャン=マルク・ドルー=アントニオ・ジル=マルティネス、フランソワーズ・ドル一=エレーヌ・カルドナ、ドゥドゥ・ドルー=ハリスン・プラット、ディディ・ドル一=ゲラン・コネル、イヴェット・マルソ一=エリザベス・コメリン、アルフォンス・マルソー=ロン・クック、パティスト・マルソ一=ギヨーム・タルデュー、リヴェ夫人=ミシェル・グレイゼル、プジェ夫人=ドミニク・マカヴォイ、ジョルジュ・ロシェ=アルノー・アダム、チザ=クリスチァンヌ・ガッド、ガティ=マリオン・オーデュカー


 「サイダーハウス・ルール」の感動がさめやらぬうちに、ラッセ・ハルストレム監督は、また素敵な作品を届けてくれた。とろけるようなファンタジー。おいしい食べ物が人々の心を解き放つというテーマは「バベットの晩餐会」を連想させるが、この作品にはチョコレートのように、ほのかに官能的な香りがただよっている。辛らつさをひかえめにして心地よく終わる。登場人物一人ひとりを丹念に描き分けるあざやかな手さばきは、あいかわらず。脚本は緊密で、コミカルな会話を楽しむうちに人物像と人間関係が浮かび上がる妙技だ。

 今回のキャスティングも、非のうちどころがない。尖った役が多いジュリエット・ビノシュも、今回は甘い笑顔が魅力的。「ポネット」(ジャック・ドワイヨン監督)で4歳にして天才的な演技をみせたヴィクトワール・ティヴィソルは、面影を残したまま可愛らしく成長していた。ココアを飲んだように心が温かくなった。ジュディ・デンチの自然体の貫禄にあらためて脱帽。キャリー=アン・モスが、古風な母親を演じていたのにも驚いた。そしてジョニー・デップの粋なしぐさ。ミュージシャンだった彼だが、映画では初めてギターを弾いている。レイチェル・ポートマンの静かに心にしみてくる音楽とともに、なかなか聞かせる。


 あの頃ペニー・レインと 「あの頃ペニー・レインと」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。123分。配給=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。監督・脚本・製作=キャメロン・クロウ(CAMERON CROWE)。プロデューサー=イアン・ブライス。共同プロデューサー=リサ・スチュワート。撮影監督=ジョン・トール。美術監督=クレイ・A・グリフィス、クレイトン・R・ハートリー。編集=ジョー・ハットシング、サー・クライン。衣裳デザイナー=ベッツィ・ヘイマン。スコア=ナンシー・ウィルソン。音楽スーパーバイザー=ダニー・ブラムソン。テクニカル・コンサルタント=ピーター・フランプトン。ラッセル・ハモンド=ビリー・クラダップ(BILLY CRUDUP)、エレイン (ウィリアムの母親)=フランシス・マクドーマンド、ペニー・レイン=ケイト・ハドソン(KATE HUDSON)、ウィリアム・ミラー=パトリック・フュジット(PATRICK FUGIT)、ジェフ・ベベ=ジェイソン・リー、ポレクシア=アンナ・パキン(ANNA PAQUIN)、サファイア:ファイルザ・バーク、ディック・ロズウェル=ノア・テイラー、アニタ・ミラー (ウィリアムの姉)=ズーイー・デシャネル、レスター・バングス=フィリップ・シーモア・ホフマン、ベン=テリー・チェン


 1970年代を舞台にロックグループとグルーピーと音楽ライターの関係を描いた懐かしさいっぱいの作品。皮肉屋のキャメロン・クロウにしては、爽やかさが残る甘酸っぱい青春映画に仕上がっている。クロウ自身の自伝的な要素が強いことが影響しているのだろうか。主人公のウィリアム・ミラーが、あまりに純粋で一途すぎるのが、気にかかる。美化とまでは言わないが、少年らしい迷いや恐れを、もっと強調しても良かったのではないか。

 サイモン&ガーファンクル、ザ・フー、イエス、ロッド・スチュアート、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン。次々に流れる曲に酔いしれていたので、幾分点は甘くなる。「スティル・クレイジー」(ブライアン・ギブソン監督)に比べると腰が弱い感じもするが、別な質感を狙ったともいえる。「評論家で成功したけりゃ、正直に手厳しく書け」というクリーム誌の編集長レスター・バングスの言葉は、ライターとしておおいに参考になる。自戒。


 スターリングラード 「スターリングラード」の画像です

 2000年作品。アメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作。132分。配給=日本ヘラルド映画。製作・監督・脚本=ジャン=ジャック・アノー(Jean jacques Annaud)。共同脚本=アラン・ゴダール。製作補=ジョン・D・ショフィールド。撮影監督=ロバート・フレイズ。編集=ノエル・ボワソン、ハンフリー・ディクソン。音楽=ジェームズ・ホーナー。ヴァシリ・ザイツェフ=ジュード・ロウ(Jude Law)、ダニロフ第2級政治将校=ジョセフ・ファインズ、ターニャ=レイチェル・ワイズ、ケーニッヒ少佐=エド・ハリス、クリコフ=ロン・パールマン、サーシャ=ガブリエル・マーシャル=トムソン、フルシチョフ=ボブ・ホスキンス


 ドイツ、ソビエト双方で100万人以上が戦死し、第2次世界大戦で最も悲惨な戦いと言われるスターリングラード戦。その中で、次々に敵を射殺しナチス・ドイツを破滅に導いた天才スナイパー、ヴァシリ・ザイツェフがいた。組織的な軍隊による圧倒的な破壊・大量死を特徴とする近代戦争で、実は一人の技量に頼る狙撃が大きな役割を持っていた点に目をつけたのは、さすがアノー監督。

 戦場におけるおびただしい殺りくと、一人のスナイパーをめぐる人間劇が、絶妙なバランスで描かれている。脚本の密度が高い。だから、大味の戦争ものにも、ヒーローの恋愛ものにも陥っていない。戦争と人間をみつめる視座が確固としている。そして声高に反戦を訴えている訳ではないが、戦争の哀しみが全編を覆っている。

 強い意志と深い悲嘆をひめた瞳。ヴァシリ・ザイツェフを演じたジュード・ロウが、圧倒的な存在感を放つ。政治的理想と個人的欲望に引き裂かれる政治将校役のジョセフ・ファインズは、自然体でその振幅を表現してみせた。ドイツ側の冷徹なスナイパーをエド・ハリスが渋く演じている。彼の目にも哀しみが宿っていた。 半面、後に首相に登りつめるフルシチョフを演じたボブ・ホスキンスが、ひどく嫌なやつにみえたのもアノー監督の狙い通りだったのだろう。


 HANNIBAL 「HANNIBAL」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。131分。共同配給=ギャガ・ヒューマックス。監督=リドリー・スコット(Ridley Scott)。原作=トマス・ハリス(Thomas Harris)。製作=ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス、リドリー・スコット。脚本=デビット・マメット、スティーブン・ザイリアン。音楽=ハンス・ジマー。編集=ピエトロ・スカリア。プロダクション・デザイナー=ノリス・スペンサー。撮影=ジョン・マシソン。製作総指揮=ブランコ・ラスティグ。ハンニバル・レクター=アンソニー・ホプキンス、クラリス・スターリング=ジュリアン・ムーア、ポール・クレンドラー=レイ・リオッタ、バーニー=フランキー・R・フェイゾン、パッツィ=ジャンカルロ・ジャンニーニ、アレグラ・パッツィ=フランチェスカ・ネリ、イヴェルダ=ヘイゼル・グッドマン、メイスン・ヴァージャー=ゲイリー・オールドマン


 『羊たちの沈黙』(ジョナサン・デミ監督)から、10年間待っていた続編。しかし、やはり失望した。1990年以降のリドリー・スコット監督は単純な熱情、あからさまな強者志向でどれも評価できない。派手な割りには映像に濃密感がない。上げ底な印象を受ける。今回も、原作の深みが失われ、恋愛ものに猟奇がプラスされただけになっている。二人の心の闇という共通点も無視されている。時間的な制約があるにせよ、分りやすさを狙い過ぎた。ハリウッドの御意向とはいえ、クラリスが最後まで覚醒し抵抗していたのも、物足りない。

 街の印象を変ぼうさせる監督らしく、フィレンツェを陰惨な暗い街に描いていた点は、評価しよう。オープニングタイトルで、平和を象徴する鳩の群れがレクターの顔に見えるというアイデアも面白い。レクターの犯行写真をちらっと見せるサービスも嬉しい。そして、やや出し惜しみ気味だったものの、脳の活づくりによる晩餐シーンは、ブラックなユーモアが見事。ただ、メイスン・ヴァージャーが豚に食われるシーンは、もう少しサービスしてほしかった。

 


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