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2005.11


 ランド・オブ・プレンティ 「ランド・オブ・プレンティ」の画像です

 2004年作品。アメリカ・ドイツ合作。124 分。配給=アスミック・エース。監督=ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)。原案=ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)、スコット・デリクソン(Scott Derrickson)。脚本=ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)、マイケル・メレディス(Michael Meredith)。撮影=フランツ・ラスティグ(Franz Lustig)。音楽=トム&ナクト(Thom & Nackt)。ラナ=ミシェル・ウィリアムズ(Michelle Williams)、ポール=ジョン・ディール(John Diehl)、ヘンリー=ウェンデル・ピアース(Wendell Pierce)、ジミー=リチャード・エドソン(Richard Edson)、シャーマン=バート・ヤング(Burt Young)、ハッサン=ショーン・トーブ(Shaun Toub)


 2004年ベネチア国際映画祭でユネスコ賞を受賞。「ランド・オブ・プレンティ」。豊かな土地。このタイトルはレナード・コーエンの同名曲からとられた。ベトナム戦争での枯葉剤後遺症に苦しみながら、テロリストからアメリカを守ろうと監視活動を続けるポール。彼の、アメリカはベトナム戦争に「勝った」という言葉が忘れられない。一方、テルアビブで暮らしていたラナは、10年ぶりにアメリカに戻り、ホームレスのいるスラム街で働きながら、亡き母の手紙を渡すために叔父ポールを探す。ふたりはアラブ人が射殺されたことをきっかけに遺体を運ぶ旅に出る。巧みな設定で、アメリカの現状と希望が示される。

 9.11以降戦争へと向かったアメリカという国に対する大きな怒りと、そこに住む傷ついた人々に対する深い愛情。しかし国への怒りは敵意ではなく、静かな祈りにつながっている。底辺からアメリカを見つめること。違いを超えて対話すること。沈黙して他者の声を聞くこと。そこに痛切な監督のメッセージが込められている。その思いは、アメリカの人々に届いただろうか。


 空中庭園 「空中庭園」の画像です

 2005年作品。日本映画。114 分。配給=アスミック・エース。監督=豊田利晃。プロデューサー=菊地美世志。企画=孫家邦、森恭一。原作=角田光代『空中庭園』(文藝春秋刊)。脚本=豊田利晃。撮影=藤澤順一。美術=原田満生。衣装=宮本まさ江。編集=日下部元孝。主題歌=UA『この坂道の途中で』。ヘアメイク=小沼みどり、徳田芳昌。照明=上田なりゆき。録音=柿澤潔。京橋絵里子=小泉今日子、京橋マナ=鈴木杏、京橋貴史=板尾創路、京橋コウ=広田雅裕、京橋絵里子の兄=國村隼、テヅカ=瑛太、サッチン=今宿麻美、森崎=勝地涼、ミーナ=ソニン、飯塚麻子=永作博美(特別出演)、木ノ崎さと子=大楠道代


 8月24日に覚せい剤取締法違反の疑いで豊田利晃監督が逮捕され、一時は劇場公開が危ぶまれた「空中庭園」。製作委員会は協議の結果「映画は監督1人の作品なのか、作品に罪はあるのかなどを議論した。上映を望む声が多く寄せられており、映画を公開する責任を全うすることを決断した」と発表し、劇場公開が行われた。その判断は正しい。ことしを代表する邦画の傑作だ。

 崩壊しかけた現代家族の虚構をコミカルに暴きつつ、血なまぐさい心の闇も描く。そして「学芸会」の淡い絆に家族の可能性を託す。偽善すれすれのラストシーンは素敵だ。小泉今日子が、トラウマを抱え、キレて豹変する絵里子を、不思議な自然体で演じる。柔らかくて、凄みさえある演技は怖いほど。そして「春の雪」に続き、大楠道代の自在でありながら迫力ある演技にうなった。


 ALWAYS 三丁目の夕日 「ALWAYS 三丁目の夕日」の画像です

 2005年作品。日本映画。133 分。配給=東宝。監督=山崎貴。製作=高田真治、亀井修、島谷能成、平井文宏、島本雄二、西垣慎一郎、中村仁、島村達雄、高野力。プロデューサー=安藤親広、高橋望、守屋圭一郎。エグゼクティブプロデューサー=阿部秀司、奥田誠治。原作=西岸良平 『三丁目の夕日』(小学館ビッグコミックオリジナル連載)。脚本=山崎貴、古沢良太。撮影=柴崎幸三。美術=上條安里。編集=宮島竜治。音楽=佐藤直紀。主題歌=D-51『ALWAYS』。VFX=山崎貴。VFXディレクター=渋谷紀世子。音響効果=柴崎憲治。照明=水野研一。装飾=龍田哲児。録音=鶴巻仁。茶川竜之介=吉岡秀隆、鈴木則文=堤真一、石崎ヒロミ=小雪、星野六子=堀北真希、宅間史郎=三浦友和、大田キン=もたいまさこ、鈴木トモエ=薬師丸ひろ子、古行淳之介=須賀健太、鈴木一平=小清水一揮、精肉店・丸山=マギー、自転車屋・吉田=温水洋一、川渕康成=小日向文世、電気屋=木村祐一 、氷屋=ピエール瀧、郵便配達=神戸浩、中島巡査=飯田基祐、宅間の妻=麻木久仁子、古行和子=奥貫薫、静夫=石丸謙二郎、不動産屋=松尾貴史、秘書・佐竹=小木茂光、劇場支配人=益岡徹


 1958年の東京が舞台。過去40年に失った文化が、再現される。人と人の関係が、時間の流れが、よみがえる。小道具や広大なセット、そしてCGの丁寧な仕上がりに感動しながら、いつしか1958年の空気を吸っていた。面白くて感動的。おおいに笑い、素直に涙した。幼稚な市場原理主義がもてはやされ、「勝ち組」「負け組」という愚かな二分法がはびこる現代日本を見事に相対化する、優れた作品である。

 素晴らしいのは脚本、セット、CGだけではない。俳優が素晴らしい。茶川竜之介を演じた吉岡秀隆のうまさは別格として、堤真一、薬師丸ひろ子、もたいまさこ、三浦友和、小雪らが、胸に響く演技をみせる。そして、子役がまた泣かせる。憎めないワンパク坊主・鈴木一平役の小清水一揮、次第に輝きはじめる古行淳之介役の須賀健太、さらに鈴木オートに集団就職した愛くるしい星野六子役の堀北真希。みな抱き締めたくなる。2005年の邦画を代表する傑作のひとつだ。


 親切なクムジャさん 「親切なクムジャさん」の画像です

 2005年作品。韓国映画。114 分。配給=東芝エンタテインメント。監督=パク・チャヌク。製作=イ・チュニョン。脚本=パク・チャヌク。撮影=チョン・ジョンフン。音楽=チョ・ヨンウク。クムジャさん=イ・ヨンエ(I Yeong-Ae)、ペク先生=チェ・ミンシク(Choi Min-sik)、ジェニー=クォン・イェヨン、チャン=オ・ダルス、クンシク=キム・シフ、パク・イジョン=イ・スンシン、ウ・ソヨン=キム・ブソン、オ・スヒ=ラ・ミラン、キム・ヤンヒ=ソ・ヨンジュ、コ・ソンスク=キム・ジング、魔女=コ・スヒ、伝道師=キム・ビョンオク、チェ班長=ナム・イル


 「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」に続くパク・チャヌク監督の復讐シリーズ第3弾。「JSA」「宮廷女官 チャングムの誓い」のイ・ヨンエが主演し、清純派女優という旧来のイメージを一変させる演技をみせる。濃厚な色彩とすさまじい復讐シーン、そしてイ・ヨンエの美貌が不思議な世界を作り上げている。

 「娘を殺すぞ」と脅され、身代金誘拐殺人事件の犯人と名乗り出て13年の刑期を終え、自分を陥れたペクへの復讐を実行するイ・クムジャ。たしかに過酷な設定ではあるが、思わず笑ってしまう場面が多い。「オールド・ボーイ」に潜んでいたどぎついギャグが、前面に躍り出ている。シリアスさよりもギャグのテイストが濃い。ラストの親切は、まさに親切にも程があるという展開。血みどろの人間喜劇が描かれる。怖い。


 ハリー・ポッター 炎のゴブレット 「ハリー・ポッター 炎のゴブレット」の画像です

 2005年作品。アメリカ映画。157 分。配給=ワーナー。監督=マイク・ニューウェル(Mike Newell)。製作=デヴィッド・ハイマン(David Heyman)。製作総指揮=クリス・コロンバス(Chris Columbus)、デヴィッド・バロン(David Barron)、マーク・ラドクリフ(Mark Radcliffe)、ターニャ・セガッチアン(Tanya Seghatchian)。原作=J・K・ローリング(J.K. Rowling)。脚本=スティーヴ・クローヴス(Steve Kloves)。撮影=ロジャー・プラット(Roger Pratt)。美術=スチュアート・クレイグ(Stuart Craig)。衣装=ジェイニー・ティーマイム(Jany Temime)。編集=ミック・オーズリー(Mick Audsley)。音楽=パトリック・ドイル(Patrick Doyle)。ハリー・ポッター=ダニエル・ラドクリフ(Daniel Radcliffe)、ロン・ウィーズリー=ルパート・グリント(Rupert Grint)、ハーマイオニー・グレンジャー=エマ・ワトソン(Emma Watson)、ドラコ・マルフォイ=トム・フェルトン(Tom Felton)、ビクトール・クラム=スターニスラフ・イワネフスキー(Stanislav Ianevski)、チョウ・チャン=ケイティ・リューング(Katie Leung)、ネビル・ロングボトム=マシュー・ルイス(Matthew Lewis)、セドリック・ディゴリー=ロバート・パティンソン(Robert Pattinson)、フラー・デラクール=クレマンス・ポエジー(Clemence Poesy)、ルビウス・ハグリッド=ロビー・コルトレーン(Robbie Coltrane)、ヴォルデモート卿=レイフ・ファインズ(Ralph Fiennes)、アルバス・ダンブルドア=マイケル・ガンボン(Michael Gambon)、マッドアイ・ムーディ=ブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson)、ルシウス・マルフォイ=ジェイソン・アイザックス(Jason Isaacs)、シリウス・ブラック=ゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)、セブルス・スネイプ先生=アラン・リックマン(Alan Rickman )、ミネルバ・マクゴナガル先生=マギー・スミス(Maggie Smith)、ピーター・ペティグリュー/ワームテール=ティモシー・スポール(Timothy Spall)、イゴール・カルカロフ=プレドラグ・ビエラク(Predrag Bjelac)、マダム・マクシーム=フランシス・デ・ラ・トゥーア(Frances de la Tour)、バーティ・クラウチ=ロジャー・ロイド=パック(Roger Lloyd-Pack)、リータ・スキーター=ミランダ・リチャードソン(Miranda Richardson)、バーティ・クラウチJr.=デヴィッド・テナント(David Tennant)、アーサー・ウィーズリー=マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)


 「ハリー・ポッター」シリーズの第4作目。「ハリー・ポッター」ファンではないが、毎回観続けてきた。第3作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」が、お子さまランチ、おせち料理から脱し、個性的な青春映画に仕上がっていたので、第4作に注目していた。おせち料理のような詰め込み過ぎはないが、ハリーも ハーマイオニーも、もとの優等生に戻ってしまった。甘酸っぱい恋愛劇も、お行儀が良い。少し怖いシーンもあるが、抑制されている。

 映像のクオリティに関しては、かなり「ロード・オブ・ザ・リング」を意識したように思う。景観の俯瞰シーンが美しく、アクション場面も迫力がある。100年ぶりに開かれた3大魔法学校対抗試合が物語の中心。最初に派手な場面を置いて、観客を引き込む常とう手段が、少し鼻につくが、展開のペースは悪くない。ただ157 分という長さは、そろそろ限界に来ていると思う。

★「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」

★「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

★「ハリー・ポッターと賢者の石」

 


 
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