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 猿の惑星 「PLANET OF THE APES/猿の惑星」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。114分。配給=20世紀フォックス。監督=ティム・バートン 。原作=ピエール・ブール。脚本=ウィリアム・ブロイレス、ローレンス・コナー、マーク・D・ローゼンタール 。製作=リチャード・D・ザナック。撮影=フィリップ・ルースロ。編集=クリス・リーベンゾン。衣装=コーリン・アトウッド。音楽=ダニー・エルフマン。特殊メイク=リック・ベイカー。レオ・デイビッドソン大尉=マーク・ウォルバーグ、セード=ティム・ロス、アター=マイケル・クラーク・ダンカン、 アリ=ヘレナ・ボナム・カーター、ディナ=エステラ・ウォーレン、クラル=ケリー・ヒロユキ・タガワ


 1968年に公開された、あまりにも有名な「猿の惑星」をティム・バートン監督がリメークした。単なるリメークではなく、リ・イマジネーション(再創造)だと宣伝されている。確かに新しい試みを取り入れ、バートンらしさもあるが、オリジナルの衝撃力の磁場から抜け出しているわけではない。価値観の転倒というテーマ自体がバートン的ではあるものの、身ぶりやデザインなど猿の独自の文化を取り入れた以外は、遊びが少なかったように思う。ラストも見え透いていた。

 これまでのバートンの作品は、突拍子もないお遊びが絶妙な面白さにつながっていた。俳優たちに猿のメークをして、猿の身ぶりを演じさせる、という今回のお遊びは、抱腹絶倒や深い感動をもたらすまでには至らなかった。ティム・ロスら猿側の熱演に比べ、人間の側の俳優に魅力がなさすぎる。マーク・ウォルバーグは真面目なだけだし、モデル出身のエステラ・ウォーレンは意外に影が薄かった。


 火垂 「火垂(ほたる)」の画像です

  2000年作品。日本映画。164分。配給=サンセントシネマワークス、東京テアトル。監督・脚本・撮影・音楽=河瀬直美。プロデューサー=仙頭武則。 撮影監督=猪本雅三。照明=鈴木敦子。録音=木村瑛ニ。美術=部谷京子。窯=加藤委 (つぶさ)。あやこ=中村優子、大司=永澤俊矢、あやこの父=光石研、恭子=山口美也子、飯塚=北見敏之


 自然と地域文化に溶け込みながら、大胆な省略法で独創的な世界を生み出した「萌の朱雀」から、4年。奈良を舞台にした新作の「火垂」は、ストリッパーと陶芸家のラブストーリー。四季の移り変わりを美しく描きながら、暗い痛々しさで始まり、明るい痛々しさで終わる。今回も、言葉は少ない。通常のストーリー展開を打ち破って、監督の情念がほとばしる思わぬ展開にとまどうことも多かった。個人の思いを赤裸々に作品に持ち込む姿勢は、賛否が分れるところだろうが、私は支持したい。映画の整然とした物語に慣れ過ぎているが、人生は整然としていないのだから。

 「TRUTHS: A STREAM」にも出演していた中村優子が主演。少女時代のトラウマを抱えたまま大人になった弱さと、人間としてのふてぶてしさの両方を、 大胆かつ繊細に演じていた。ぶっきらぼうに見えながら、醜さと美しさが交差し、しっかりとした存在感がある。癌に倒れ、最後は窯で弔われるあやこの母親代わりのストリッパーを山口美也子が、どこかに淋しさをたたえながら、どっしりと演じている。男たちの影は薄い。


 I.K.U. 「I.K.U」の画像です

  2000年作品。日本映画。74分。 配給・宣伝=アップリンク。監督=シューリー・チェン(Shu Lea CHEANG)。プロデュサー=浅井隆。脚本=シュリー・チェンwithXXX。Story=浅井隆、Shu Lea CHEANG。Associate Producer=平野暁子。Casting Director=田中舘紫恵子。Dirrctor of Photography=嘉本哲也。Production Design=佐々木尚。Costume Design=伊藤景。Make-up・Hair=渡辺章敏。Sound Recording=小林徹哉。Assistant Director=東條政利。Production Manager/長谷井宏妃。Editor=白尾一博。Visual Effects Supervisor=VJ E-MALE。Music Producer=Hoppy神山。Screenplay Consultant=田中浩司。Special Gadget Design=荒木博志、高幡界。Special Set Design=蔵原隆洋。Art Design=林千奈、木村輝一郎、森朝子。Set Director=大徳維二。Design Consultant=種田陽平。Art Design Studio=ゴール・オブ・アートヌーヴェルヴァーグ。Best boy Electricals=白岩正嗣、葛木誠、橋本肇、宮下昇、木ノ本豪。KeyGrip=染川直之、WEL。Visual Effects=高島英夫(VJ E-MALE)、瀧本一弘(VJ E-MALE)、花岡岳、横井勝、深野陽介。Reiko1=時任歩、Reiko2=夢野まりあ、Reiko3=佐々木ユメカ、Reiko4=有賀美穂、Reiko5=麻生みゆう、Reiko6=土田悦世、Reiko7=辻井晶子、Dizzy=Zachery NATAF、Mash=MASH、Tokyo Rose=Aja(あや)、Akira=AKIRA、Lodon=エミ・エレオノーラ、Yuko=森本みう、Jun=奈良太一、Takahashi=中根徹、OL1=清流華、OL2=藤巻由起美、Kyoto=NICO、Osaka=梅宮さやか、Bcmy=海津義孝、Miehel=Randy SIMPSON、Chon=JINMO、Sasaki=蹄ギガ、Yoshi=寺島雅彦、Kouj=マーガレット、iMami=井出伸之介、Poal=BARRON Cathy、Mary=Brian COLLINS、Gogota=後々田寿徳、Asada=大場正明、Fujita=松本全弘、BB=BB、Akechi=明智伝鬼


 「ブレード・ランナー」(リドリー・スコット監督)の有名なエレベーターのラストシーンが、「I.K.U.」のセクシーなオープニングにつながる。近未来の東京を舞台にしたサイバー・ポルノ・ムービー。タルコフスキーが「惑星ソラリス」で使用した首都高速道路も登場する。 シュリー・チェンという女性監督が、CGを多用しながら、セックス・レプリカントの行動を流れるように活写していく。ストーリーは、ひねりがなく平凡で、映像の求心力も乏しいが、トータルで評価すれば、ちょっぴり日本を皮肉ったおおらかなポルノ風B級SFかもしれない。男性にとっては扇情的なポルノとは呼べないだろうが、女性たちが、どう評価しているのか、知りたいところだ。

 注目すべきなのは、キャステイングだろう。面白い俳優たちを集めている。レイコの七変化は、予想に反してあまりインパクトはなかったが、時任歩のねっとりとした存在感には圧倒された。そして、私にとっての最大の収穫は、Aja(あや)というアーティストとの出会いである。「クスコー氏の宇宙」「赤い魚」「月の海月」というCDアルバムを発表しているほか、独創的なパフォーマー、作家でもある。人間もレプリカントも、ともに魅了してしまう美しき超絶レプリカントTokyo Roseを演じるにふさわしい逸材だと思う。


 クイルズ 「クイルズQuills」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。123分。配給=20世紀フォックス。監督=フィリップ・カウフマン(Philip Kaufman)。脚本=ダグ・ライト(Doug Wright)。製作=ジュリア・チャスマン、ニック・ウェシュラー、ピーター・カウフマン。共同製作=マーク・ハファム。製作総指揮=デス・マカナフ、サンドラ・ジュールバーグ、ルドルフ・ワイズマイヤー。プロダクション・デザイン=マーティン・チャイルズ。撮影=ロジェール・ストッファーズ。音楽=スティーブン・ウォーベック。編集=ピーター・ボイル。衣裳=ジャクリーヌ・ウェスト。サド侯爵=ジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush)、マドレーヌ=ケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)、クルミエ神父=ホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)、ロワイエ・コラール博士=マイケル・ケイン(Michael Caine)、シモーヌ=アメリア・ウォーナー(Amelia Warner)、プルーイ=スティーブン・モイヤー、ルネ(サド侯爵婦人)=ジェーン・メネラウス、ルクレール夫人(マドレーヌの母)=ビリー・ワイトロー、デルビーン=パトリック・マラハイド、ヴァルクール=トニー・プリチャード、放火魔ドーフィン=ジョージ・イミアース、処刑人ブション=スティーブン・マーカス、シャーロット=エリザベス・バーリントン、ナポレオン=ロン・クック


 シャラントン精神病院時代のマルキ・ド・サドを虚実を織り交ぜて描いている。史実通りでも十分に映画的な人生だったが、創作を加えることによって、サドという存在の現代性がより際立ったと思う。知的なユーモアと背徳的な表現が溶け合った会話、サドをめぐる人々の複雑な関係、十字架を飲み込んで絶命するクライマックスシーン。ダグ・ライトの脚本は、素晴らしく独創的。サドやコラール博士の内面に入り込むのではなく、行動によって思想をあぶり出す手法も現代的だ。撮影、衣装など美術的にも傑出している。品格と ケレン味がバランス良くブレンドされ、芸術的な奥行きと娯楽性を両立させている。

 「シャイン」のオスカー俳優ジェフリー・ラッシュと「サイダーハウス・ルール」で2回目のオスカーを受賞したマイケル・ケインがサドとコラール博士を演じて対決する。「グラディエーター」でオスカーにノミネートされたホアキン・フェニックスがクルミエ神父、「タイタニック」でノミネートされたケイト・ウィンスレットがサドの理解者マドレーヌ。この4人は、息詰まる熱演をみせる。彼等に隠れて目立たないものの、コラール博士の16歳の幼な妻シモーヌ役のアメリア・ウォーナーが、サドによって背徳の性に目覚めていく妖しい美少女を見事に演じている。サドに影響された人々の多くが破滅していく中で、彼女はサド思想の自由の側面を開花させている。


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