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 フロム・ヘル  「フロム・ヘル」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。124分。配給=20世紀フォックス。監督=ヒューズ・ブラザーズ(アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ)。製作=ドン・マーフィ、ジェーン・ハムシャー。脚本=テリー・ヘイズ、ラファエル・イグレシアス。原作=アラン・ムーア、エデイ・キャンベル。製作総指揮=エイミー・ロビンソン、トーマス・M・ハメル。アレン・ヒューズ、アルバート・ヒューズ。撮影=ピーター・デミング。プロダクション・デザイナー=マーティン・チャイルズ。編集=ダン・リーベンタル、ジョージ・ボーワーズ。音楽=トレヴァー・ジョーンズ。衣裳デザイナー=キム・バレット。フレッド・アバーライン=ジョニー・デップ、メアリ・ケリー=ヘザー・グラハム、ウィリアム・ガル卿=イアン・ホルム、ネトレイ=ジェイソン・フレミング、ピーター・ゴットレイ=ロビー・コルトレーン、ケイト・エドウズ=レスリー・シャープ、リズ・ストライド=スーザン・リンチ、ベン・キドニー=テレンス・ハーベイ、ダーク・アニー・チャップマン=カトリン・カートリッジ、チャールズ・ウォーレン卿=イアン・リチャードソン、ポリー=アナベラ・アプション、アン・クルーク=ジョアンナ・ペイジ、アルバート=マーク・デクスター


 1888年の秋、切り裂きジャックは10週間に5つの儀式的で凄惨な殺人を犯した。しかし事件は迷宮入りしている。その後、さまざまな犯人像がささやかれてきた。この作品は、事件の背後にフリーメイソンとイギリス王室を置いている。ただし、作品の魅力はストーリー展開ではなく、コラージュを多用した巧みな映像にある。陰惨で冷え冷えとした質感。セットもライティングも凝っている。

 惨殺屍体は無気味なほどリアルで、やりきれなくなる。やりきれないと言えば、5人仲間の2人が相次いで殺されても、夜の街に1人で出かけて行って殺される娼婦たちの破滅指向が、不自然でやりきれない。不必要な裸のエレファント・マンまで登場させてしまうヒューズ兄弟のマニア向けサービスもやりきれない。

 妻子が死に深い悲しみから立ち直れずにアヘンを吸い、事件の幻覚を見るアバーライン警部を演じるジョニー・デップ。その憂いに満ちた美しさは、さすが。自称"切り裂きジャック・オタク"としての会心の演技を見せる。娼婦メアリ役のヘザー・グラハムは、美貌よりも生活に疲れた疲労感が印象的。唯一助かる娼婦だが、ホラーならば彼女が一番惨殺にふさわしい存在だと思う。

 


 息子の部屋  「息子の部屋/la stanza del figlio」の画像です

 2001年作品。イタリア映画。99分。配給=ワーナー・ブラザース映画。監督=ナンニ・モレッティ(Nanni Moretti)。原案=ナンニ・モレッティ。脚本=リンダ・フェリ、ナンニ・モレッティ、ハイドラン・シュリーフ。撮影=ジュゼッペ・ランチ。美術=ジャンカルロ・バジリ。衣裳=マリア・リタ・バルベラ。サウンド=アレッサンドロ・ザノン。助監督=アンドレア・モライオリ。編集=エズメラルダ・カラブリア。音楽=ニコラ・ピオバーニ。製作=アンジェロ・バルバガッロ、ナンニ・モレッティ for サケール・フィルム。ジョバンニ=ナンニ・モレッティ、パオラ=ラウラ・モランテ、イレーネ=ジャスミン・トリンカ、アンドレア=ジュゼッペ・サノフェリーチェ、オスカー=シルビオ・オルランド、ラファエラ=クラウディア・デラ・セタ、トマゾ=ステファノ・アコルシ、アリアンナ=ソフィア・ビジリア


 2001年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞している。平穏な日々を送っていた家族が、息子のでき死によって、それぞれが苦しみ、家族がバラバラになりかける。しかし、息子の恋人との出会いが、再生へのささやかなきっかけになる。1つひとつの会話、しぐさがていねいに作られていて、静かにしみ込んでくるような感動を覚えた。この作品に心を動かされなかった人は、幸せな人なのかもしれない。肉親の死を経験した人には、個々のエピソードがダイレクトに共感できるはずだ。

 父親は患者の心の悩みを治療する精神分析医。父は息子との約束を守っていれば、息子はダイビングに行かず事故にもあわなかったのではないかという自責の念にとらわれる。そして、精神状態が不安定になり、診療を断念する。自己のトラブルに対処できない精神分析医を皮肉っぽく描くこともできたが、モレッティ監督は父の悲しみに寄り添い、演じる。事故直後、激しい悲嘆にくれていた母親よりも、次第に深い悲しみに襲われる父親のリアルさ。そして、かすかな希望。モレッティ監督は、すべてを優しく思いやりに満ちた視線でみつめ続ける。2000年にパルムドールを獲得したトリアー監督とは、正反対のタイプだ。


 ヴィドック  「ヴィドック/VIDOCQ」の画像です

 2001年作品。フランス映画。98分。配給=アスミック・エース。監督=ピトフ(Pitof)。製作=ドミニク・ファルジア、オリヴィエ・グラニエ。脚本=ジャン=クリストフ・グランジェ。撮影=ジャン=ピエール・ソヴェール。美術=ジャン・ラバス。キャラクター・デザイン=マルク・キャロ。音楽=ブリュノ・クレ。衣装=カリーヌ・サルファティ。ヴィドック=ジェラール・ドパルデュー、エチエンヌ・ボワッセ=ギヨーム・カネ、プレア=イネス・サストレ、ロートレンヌ=アンドレ・デュソリエ、シルヴィア=エディット・スコブ 、ニミエ=ムサ・マースクリ、トゼ=ジャン=ピエール・ゴズ、マリーヌ・ラフィット=イザベル・ルノー、ベルモン=ジャン=ポル・デュボワ、ヴェラルディ=アンドレ・ハンヴェルン、ラフィット=ジル・アルボナ、ルヴィネール=ジャン=マルク・ティボー、フロワサール=フランソワ・シャトー、口ごもる娘=エルザ・キコイーヌ、衰弱した老人=フレッド・ウリス、記者=リュカントワアーヌ・ディケロ、ガンダン=アコニオ・ドーロ、娼館の女=ナタリー・ベキュー


 「ロスト・チルドレン」「エイリアン4」などでビジュアル・エフェクトを手がけてきたピトフの初監督作品。最新デジタルカメラ"HD24p"を全編に使用しながら、ハリウッドとは違った絵画的質感のデジタルムービーとなっている。ジャンパルジャンのモデルともなった実在の私立探偵・ヴィドック。彼が犯人に殺されるというショッキングなオープニングから、畳み掛けるように真相が明らかになっていく。ケレン味たっぷりといって良いような過剰な雰囲気。ピトフ監督はギュスターヴ・モローを参考にしたというが、黄金色を基調にした色彩は、ゴシック的なテイストとマッチしていた。

 しかし、ジャン・ラバスやマルク・キャロが一緒なのだから、ゴシック的な要素を、もっと強調しても良かったのではないか。まがまがしい錬金術師の部屋は、もっとなめるように描いてほしかった。そうすれば、ラストに向けて、さらに盛り上がったはずだ。また、ギュスターヴ・モローを意識するのなら、闇の中の宝石のような色彩をちりばめてほしかった。派手な演出はあったが、どうも見せ場の重みが足りない。映画の醍醐味は、編集に負う面が大きいからだろう。


 バニラ・スカイ  「バニラ・スカイ/Vanilla Sky」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。137分 。配給=UIP映画。製作・脚本・監督=キャメロン・クロウ。製作総指揮=ジョナサン・サンガー。撮影=ジョン・トール。編集=ジョー・ハットシング。衣装デザイン=ベッツィ・ハイマン。プロダクション・デザイン=キャサリン・ハードウィック。デヴィッド・エイムス=トム・クルーズ、ソフィア=ペネロペ・クルス、ジュリー=キャメロン・ディアス、ドクター・マッケイブ=カート・ラッセル、ブライアン=ジェイソン・リー


 まあ、ていねいに作られたといっていい。スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」(アレハンドロ・アメナバール監督)のリメイク。トム・クルーズがハリウッドでの映画権を買い、自らプロデュースし主演している。オリジナルのどうしようもない閉塞感、絶望感が薄れ、華やかなラブサスペンスになっているのは、さすがハリウッド。オリジナル作品に出演したペネロペ・クルスが共演し、ニコール・キッドマンと離婚したトム・クルーズと恋愛中というのも、出来過ぎた展開だ。この作品の製作そのものが選ばれた仮想現実のようだ...。おっと、ネタばれ。用心、用心。

 いつも混雑しているニューヨークのタイムズ・スクエアがデヴィッドただ一人になるという驚くべきシーンから始まる。ポップ・カルチャーの雰囲気もしっかり出ていて、なかなか良い。きわどい会話をしつつ自滅的な運転をして死ぬジュリーを演じるキャメロン・ディアスに感心しつつ、ペネロペ・クルスとの対比を楽しむ。ファッションも対照的。独創的な選曲は、ロック・ジャーナリストとしてスタートしたキャメロン・クロウらしい。ただ、自動車事故で醜くなったデヴィッドの顔の崩れ加減が、オリジナルに比べて不満。作品のインパクトよりも自分の顔を選んだトム・クルーズっていったい?


 ピストルオペラ  「ピストルオペラ」の画像です

 2001年作品。日本映画。112分。配給=松竹。監督=鈴木清順。プロデューサー=小椋悟、片嶋一貴。脚本=伊藤和典。美術監督=木村威夫。撮影=前田米造。照明=矢部一男。特撮=樋口真嗣。編集=鈴木胱。音楽=こだま和文。皆月美有樹(野良猫)=江角マキコ、上京小夜子(ギルド代理人)=山口小夜子、少女・小夜子=韓英恵、黒い服の男=永瀬正敏、りん=樹木希林、折口静香=加藤治子、東京駅の男=沢田研二、花田五郎=平幹二朗


 「夢ニ」から10年。鈴木清順監督の新作長篇を観ることができたことを本当に嬉しく思う。「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」「夢ニ」を3部作と称しているが、前2作が耽美的な映像と激しい情念を基本にしているのに対して、「夢ニ」は、もっと軽い印象を受けた。今回の「ピストルオペラ」は、殺し屋を主人公にして死を描きながら、さらに「軽み」が徹底しているように感じた。枯れている軽みではなく、徹底して遊びまくるという自在さだ。既成観念を捨てて、身をまかせ、楽しみ、後には何も残らない。

 和服にブーツの江角マキコの立ち振る舞いが、凛としてかっこいい。話さない方がもっといい。山口小夜子は、相変わらず妖しい雰囲気をまき散らしている。新人の韓英恵の幼さと妖艶さの共存に驚いた。樹木希林、加藤治子、平幹二朗と、超ベテランが脇を固めている。しかし、「殺しの烙印」のリメークなのだから、ぜひとも宍戸錠に登場してもらいたかったと感じたのは、私だけではないだろう。


 ゴジラ・モスラ・キングギドラ 

 大怪獣総進撃  

「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総進撃」の画像です

 2001年作品。日本映画。105分。 配給=東宝。監督=金子修介。脚本長谷川圭一、横谷昌宏、金子修介。音楽=大谷幸。撮影=岸本正広。美術=清水剛。録音=斎藤禎一。照明=粟木原毅。編集=冨田功。特殊技術=神谷誠。特殊撮影=村川聡。特美=三池敏夫。特殊照明=齋藤薫。造型=品田冬樹。立花由里=新山千春、立花泰三=宇崎竜童、武田光秋=小林正寛、門倉春樹=佐野史郎、丸尾淳=仁科貴、江森久美=南果歩、三雲勝将=大和田伸也、日野垣真人=村井国夫、広瀬裕=渡辺裕之、小早川=葛山信吾、崎田=中原丈雄、宮下=布川敏和、官房長官=津川雅彦、伊佐山嘉利=天本英世


 まず、最初のシーンで「Godzilla」(ローランド・エメリッヒ監督)を皮肉る金子修介のユーモアに感心。そして、ゴジラが第2次世界大戦で死んだ人々の残留思念であるという設定に時代への切実なメッセージを感じて納得。さらには、ガメラシリーズでお馴染みの日本の古代伝説とからめるストーリー展開にも、にやりとさせられた。物語の厚みもCGの美しさも、これまでのゴジラシリーズを上回っていた。ただ、「ハム太郎」との同時上映はいただけない。

 主人公はTV番組「デジタルQ」のスタッフ・由里。この辺は、ハリウッド映画っぽい。由里を演じた新山千春が素晴らしい。華奢な身体ながら、ゴジラをリポートしようとする気迫が、清清しく伝わってくる。応援したくなる日本の若手女優の一人だ。キャスティングといえば、多彩なメンバーに加えて、ほんの数秒の役で、実に多くの有名な俳優たちが登場する。それも、楽しみの一つ。ゴジラが悪役に徹し、いつも白眼をむいているのもユニークだった。動きも早い。


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