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2004.08

 マインド・ゲーム 「マインド・ゲーム」の画像です

 2004年作品。日本映画。103分。配給=アスミック・エース。監督・脚本=湯浅政明。原作=ロビン西。企画制作=STUDIO4℃。プロデューサー=田中栄子。総作画監督=末吉裕一郎。美術監督=ひしやまとおる。CGI監督=笹川恵介。設定・作画監督補=久保まさひこ。色彩設計=鷲田知子。動画監督=梶谷睦子。編集=水田経子。音楽=山本精一。音楽プロデューサー=渡辺信一郎。テーマソング=山本精一と不思議ロボット「MIND GAME」。イメージソング=Fayray「最初で最後の恋」。制作協力=吉本興業。西=今田耕司、みょん=前田沙耶香、じいさん=藤井隆、ヤン=たくませいこ、りょう=山口智充(DonDokoDon)、みょん・ヤンの父=坂田利夫、やくざのボス=島木譲二、アツ=中條健一、ヤクザ=西凛太郎


 驚愕。2004年は「イノセンス」「スチームボーイ」「ハウルの動く城」という日本のアニメ3大巨匠の作品が初めて同じ年に公開される記念すべき年。「アップルシード」という新しい試みも光った。しかし、もっともインパクトがある作品は、間違いなく「マインド・ゲーム」だ。湯浅政明の監督・脚本。STUDIO4℃が制作した。

 絶望的な状況の中で前向きに生き抜くというポジティブなメッセージを核にしながら、さまざまなテイストの2D、3D、実写を組み合わせたハイブリッドアニメ。いや、優れたハイテンション・コラージュ・アニメといえる。とにかくパワフルでどん欲に変化していく。めくるめく映像に目がくらむ。アニメ表現の可能性を、根こそぎ持ち込んだ感すらある。実写部分は「下妻物語」の中島哲也監督が担当した。  


 LOVERS 「LOVERS」の画像です

 2004年作品。中国映画。120分。配給=ワーナーブラザース。監督=チャン・イーモウ。製作=ビル・コン、チャン・イーモウ。製作総指揮=チャン・ウェイピン。原案;チャン・イーモウ、リー・フェン、ワン・ビン。脚本=リー・フェン、チャン・イーモウ、ワン・ビン。撮影=チャオ・シャオティン。アクション監督=トニー・チン・シウトン。美術=フォ・ティンシャオ。録音=タオ・ジン。音楽;梅林茂。主題歌=キャスリーン・バトル。衣装デザイナー=ワダエミ。編集=チェン・ロン。共同製作=チャン・ジェンイェン。字幕翻訳=水野衛子・太田直子。金(ジン)=金城武、小妹(シャオメイ)=チャン・ツィー、劉(リウ)=アンディ・ラウ、牡丹坊の女将=ソン・タンタン


 この作品は、当初出演を予定していたが2003年12月30日に40歳で子宮頚がんのため亡くなったアニタ・ムイにささげられている。舞台は唐代の中国。悪政が横行し内乱が頻発する荒んだ時代に、朝廷を守ろうとする者と滅ぼそうとする者の熾烈な争いを描いている、わけではない。そういう時代背景を利用して、男女の悲劇的な三角関係をケレン味たっぷりに描いている。確かに「LOVERS」なのだ。

 華麗さは「LOVERS」が上だが、スケール感は前作「HERO」の方が勝っていた。最大の見せ場であるチャン・ツィーの踊りを序盤に持ってきてしまったので、後半が地味な印象になった。映画を盛り上げるための荒唐無稽なシーンを否定はしないが、おおげさな仕掛けは、思ったほどの効果を上げていない。ラストシーンも弱い。金城武とアンディ・ラウは対照的な役を好演していたが、チャン・ツィーの多面的な魅力ばかりが目立った。


 シネマ秘宝館in札幌 「シネマ秘宝館in札幌」の画像です

 8月22日、娯楽系アマチュア映画の祭典・シネマ秘宝館in札幌が、札幌市教育文化会館4階・講堂で初開催された。貴重な曲や映像作品が紹介され、会場はおおいに盛り上がった。第1部「斎藤館長所有のバカ歌謡曲レコードコンサート」で、すでに秘宝館テイスト爆発。「ケイコのマンボ/殿様キングス」などの珍作を堪能した。映像だけでなく、「おバ歌謡曲」にも期待したい。第2部 「短編作品」では、なにわ天閣監督の「みどりちゃん」でいきなり心をつかまれた。傑作である。その他1分ほどの中にアイデアを詰め込んだ珍作に笑い転げた。

 第3部「アクション映画特集」は、一転してシリアス系。「THE BULLET FIST」(斎藤郁夫監督)は、26分の中編。そのテクニックはプロのレベルにある。殺し屋の「素手と拳銃の一騎打ち」というテーマに泣かされる。第4部は、10月に行われる「インディーレイルフェスティバル」と「シネマ秘宝館24」の先行上映特集。粘土アニメの「ホーム」の技術力に驚き、8ミリ作品「爆弾特急」のレトロなアイデアにしびれた。音楽に合わせて男たちが踊る、コマ撮りの傑作「放飼/HANASHI☆GUY」(武藤浩志監督)が上映されると、会場は爆笑と感嘆の声に包まれた。シネマ秘宝館in札幌vol.2が、待たれる。

 ★シネマ秘宝館・公式サイト


 華氏 911 「華氏 911」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。122分。配給=ギャガ・コミュニケーションズx博報堂DYメディアパートナーズx日本ヘラルド映画。監督・製作・脚本・出演=マイケル・ムーア。


 アメリカでは社会現象にまでなっている「華氏911」。小泉首相は観る前から「片寄った映画」と否定していたが、既存の映像資料を丹念に積み重ね、絶妙に編集する中で、事実を浮かび上がらせるというドキュメンタリーの王道をいく手法だった。もちろん、マイケル・ムーアらしいユーモアが、映画のパロディとして登場する。しかし、基本はあくまでも映像資料と遺族ら当事者へのインタビューだ。ブッシュ政権の本質があぶり出されていく。

 矛盾した発言、隠ぺい工作などの事実を通じて、石油利権にまみれたブッシュ政権の本質が明らかになる。「ボウリング・フォー・コロンバイン」でも、支配のために意図的につくり出されたアメリカ恐怖社会について指摘していたが、「華氏911」はそれをさらに掘り下げ、底辺層を兵士へと駆り立てる階級社会の歪みを暴いている。今回もマスコミの偏向ぶりに触れていたが、思ったほど力を入れていなかった。現在のアメリカ・マスコミの偏向ぶりは、自由社会という言葉が虚ろに響くほど深刻な問題だ。

 アメリカは、オーウェルの描いた管理社会に驚くほど似て来ている。いや、マイケル・ムーアを抹殺せず、あたかも自由が残っているように錯覚させるほど、さらに巧妙なのだろうか。この問いは、大統領選の結果にとどまらないパースペクティブを持つ。そして、憲法の理念を投げ捨て、腐敗に満ちたブッシュ政権に追随した小泉政権の責任は、限りなく重い。「華氏911」によって、日本人も問われている。


 スタン・ブラッケージ特別上映 「NightMusic」の画像です

 スタン・ブラッケージ特別上映が、8月18日に札幌のシアターキノで行われた。今回の上映は、昨年3月癌で亡くなったブラッケージ後期のハンドペイント作品が選ばれていた。「NightMusic」「Rage Net」「Glaze of Cathexis」「The Dante Quartet」「Earthen Aerie」「Beautiful Funerals」「Coupling」「Concrescence」「...Seasons」「Micro Garden」「Garden Path」。無音の闇の中でフィルムが光と戯れる。後期のスタンが最も信頼していたフィルムメーカーのフィル・ソロモンとのコラボレーション作品「...Seasons」は、最も観たかった作品。ソロモンのフィルム・テクニックによってスタン・ブラッケージの作品は、さらに多彩な表情を見せる。マリー・ベスとの共同作品「Garden Path」には、制作するブラッケージの姿も映し出され、ハンドペイント作品と解け合う。

 上映後の伊藤隆介道教育大助教授と水由章ミストラルジャパン代表のトークも、充実していた。情報量が多く社会的なテーマに縛られない後期ブラッケージ作品の先駆性とともに、フイルムの持つ特性についても解説した。ブラッケージの作品は、いつも生まれたばかりのようにみずみずしく、つねに新しい発見がある。

 ★スタン・ブラッケージ追悼コーナー


 誰も知らない 「誰も知らない」の画像です

 2004年作品。日本映画。141分。配給=シネカノン。監督・脚本・編集=是枝裕和。撮影=山崎裕。録音=弦巻裕。美術=磯見俊裕。美術=三ツ松けいこ。音楽=ゴンチチ。スチール=川内倫子。広告美術=葛西薫。明=柳楽優弥、京子=北浦愛、茂=木村飛影、ゆき=清水萌々子、紗希=韓英恵、福島けい子=YOU


 柳楽優弥が、2004年度カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し注目された作品。柳楽優弥だけでなく、京子役の北浦愛、茂役の木村飛影、ゆき役の清水萌々子、中学生・紗希役の韓英恵、母親福島けい子役のYOU、全員が素晴らしい。演技しているのではなく、生きている、生活している。2002年秋から2003年夏にわたる1年間、四季を通じて撮影した意義は大きい。希有な作品が誕生した。

 1988年に起きた「西巣鴨子供4人置き去り事件」をモチーフにした映画を、是枝監督は15年間あたため続けてきた。その間に、怒りは祈りに変わったのだろう。告発は、慈しみに変わったのだろう。悲しいまでに淡々と見つめ続ける視線が、私にも向けられている。この作品は、直接的には誰も批判していない。しかし、観ている1人ひとりを、日本の現状を静かに告発している。2DKのアパートは、悲惨な場であるとともに希望の場でもあった。


 茶の味 「茶の味」の画像です

 2003年作品。日本映画。143分。配給=クロックワークス、レントラックジャパン。監督・脚本・監督・編集=石井克人。エグゼクティブ・プロデューサー=飯泉宏之。プロデューサー=滝田和人、和田倉和利。ラインプロデューサー=鶴賀谷公彦。撮影=松島孝助。照明=木村太郎。美術;都築雄二。録音=森浩一。スタイリスト=宇都宮いく子。音楽=リトルテンポ。音楽プロデューサー=緑川徹。音楽監督=ANIKI。VFXプロデューサー=石井教雄。CGディレクター=林田宏之。キャスティング=園田真吾、千葉直人。振付=香瑠鼓。パラパラアニメ作画=平田敏夫。スーパーBIGアニメーションディレクター・キャラクターデザイン・演出・作画・監督=小池健。アニメーションプロデューサ=丸山正雄、斎藤優一郎。アニメーション制作=マッドハウス。春野一=佐藤貴広、春野アヤノ=浅野忠信、春野美子=手塚理美、春野幸子=坂野真弥、 鈴木アオイ=土屋アンナ、轟木アキラ=我修院達也、オバア=樹木梅子、轟木一騎=轟木一騎、守山モリオ(ダンサー)=森山開次、寺子アキラ=中嶋朋子、春野ノブオ=三浦友和、ナレーション=和久井映見、やくざの幽霊=寺島進、アニメ監督=庵野秀明


 爆発的なエネルギーに満ちた「鮫肌男と桃尻女」「PARTY7」を監督した石井克人が、個性的な家族たちの振るまいをゆったりと描く「茶の味」を完成させた。2004年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品となり、高い評価を得た。確かに奇跡的とも言える独特の雰囲気が作品を包んでいる。言葉にすることの難しい空気感、生存感、宇宙感。石井克人が目指した世界よりも、おそらくはさらに広く深い作品になっていると思う。

 この作品には、中心がない。ひとり一人のたゆたう心と家族のささやかな絆が、特異なギャグや突飛な妄想とともに淡々と映像化される。里山の美しい映像が重なり、縁側や夕焼けのように開かれた空間が広がる。俳優たちが素晴らしい。しかし、皆さり気なく素晴らしい。我修院達也でさえ、出過ぎていない。浅野忠信の「野グソ・デビュー」の話は絶妙な語り口。中でも6歳の坂野真弥の芸達者ぶりには驚かされた。生きることのとりとめなさ、けだるさ、悲しみ、喜びを表情で使い分け、この作品を輝かせている。手書きアニメに対する熱烈なオマージュが込められていることも忘れずに、書き留めておきたい。


 サンダーバード 「サンダーバード」の画像です

 2004年作品。イギリス映画。95分 。配給=UIP 。監督=ジョナサン・フレイクス(Jonathan Frakes)。脚本・原作=ウィリアム・オズボーン。脚本=マイケル・マッカラーズ。原作=ピーター・ヒューイット。製作=ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、マーク・ハファム。撮影監督=ブレンダン・ガルビン。製作デザイナー=ジョン・ベアード。編集=マーティン・ウォルシュ。衣装=マリット・アレン。音楽=ハンス・ジマー。キャスト=メリー・セルウェイ。アラン・トレイシー=ブラディ・コルベット(Brady Corbet)、ペネロープ=ソフィア・マイルズ(Sophia Myles)、ジェフ・トレイシー=ビル・パクストン、ブレインズ=アンソニー・エドワーズ、ザ・フッド=ベン・キングズレー、ファーマット=ソーレン・フルトン、ミンミン=ヴァネッサ・アン・ハジンズ、パーカー=ロン・クック、スコット・トレイシー=フィリップ・ウィンチェスター、ジョン・トレイシー=レックス・シャープネル、ヴァージル・トレイシー=ドミニク・コレンソ、ゴードン・トレイシー=ベン・トージャーセン


 SF人形劇の古典「サンダーバード」の実写版。オリジナルのレトロな感じを大切にしているように見えて、基本となる雰囲気は生かされていない。物語をテレビ版以前の時間に設定し、末っ子のアランが正式な隊員になるまでを描く。主役はアランとその友人二人。すごく子ども向けの展開になっている。お兄さんたちは、救助される立場になっている。悪役も全然魅力がない。闘いのスケールが小さすぎる。大人狙いか、子ども狙いか、とても中途半端な出来だった。

 サンダーバードのテイストではないが、オープニングのタイトルアニメは、なかなかウィットに富んでいて楽しいものだった。そして、逆境でも冷静さとユーモアを欠かさないペネロープ役のソフィア・マイルズがとても魅力的。アクションシーンもたっぷりとみせる。今回の「スパイキッズ」路線よりも、大人向けの「007」路線の方が、実写版には向いていると思う。


 スパイダーマン2 「スパイダーマン2」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。127分。配給=ソニー・ピクチャーズエンタテインメント。監督=サム・ライミ。脚本=アルヴィン・サージェント。ストーリー=アルフレッド・ゴー&マイルズ・ミラー、マイケル・シェイボン。製作=ローラ・ジスキン、アビ・アラド。製作総指揮=スタン・リー、ジョセフ・M・カラッシオロ、ケヴィン・フェイグ。共同製作=グラント・カーティス。撮影監督=ビル・ポープ A.S.C.。美術監督=ニール・スピサック。編集=ボブ・ムラウスキー。視覚効果デザイン=ジョン・ダイクストラA.S.C.。衣裳デザイン=ジェームズ・アシェソン。作曲=ダニー・エルフマン。ピーター・パーカー/スパイダーマン=トビー・マグワイア、メリー・ジェーン・ワトソン=キルスティン・ダンスト、Dr.オットー・オクタヴィウス/ドック・オク=アルフレッド・モリーナ、ハリー・オズボーン=ジェームズ・フランコ、メイおばさん=ローズマリー・ハリス、ロージー・オクタヴィウス=ドナ・マーフィー、J.ジョナ・ジェイムソン=J.K.シモンズ、ジョン・ジェイムソン=ダニエル・ギリース


 前作「スパイダーマン」もバランスの良い娯楽作だったが、「スパイダーマン2」は、さらにその上を行く出来だ。感動が詰まっている。斬新なアクションが詰まっている。あとのシリーズのことなど気にしないで、とことん内容を詰め込んでいる。だから、面白い。今回は、クモとタコの闘いか、と続編の情報を読みながら考えていたが、ストーリー展開の巧みさとアクションシーンの見事さには感服した。コメディとシリアスのバランスも良い。

 私生活とヒーローの仕事との間で苦悩する不器用なピーター・パーカーをトビー・マグワイアが熱演。愚直さに涙が出た。メリー・ジェーン役のキルスティン・ダンストは、野暮ったさを残しながらもみずみずしい魅力がアップした。メイおばさん役のローズマリー・ハリスは、アクションシーンにも大活躍。Dr.オットー・オクタヴィウスを演じたアルフレッド・モリーナは、ただの悪役ではない人間的な側面をみせる。スパイダーマンに助けられた人たちが、迫る敵の前に次々と立ちはだかってスパイダーマンを守ろうとする場面や、顔を知られてしまったスパイダーマンに「誰にも言わないから」と、子どもが話すシーンがいい。皆、人間くさくて好きだなあ。


 
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