magnolia |
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1999年作品。アメリカ映画。187分。 配給=日本ヘラルド映画。 監督・脚本=ポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas anderson)。製作=ジョアン・セラー。撮影=ロバート・エルスウィット。編集=ディラン・ティチェナー。音楽=ジョン・ブライオン。歌=エイミー・マン。スタンリー・スペクター=ジェレミー・ブラックマン、フランク・T・J・マッキー=トム・クルーズ、ローズ・ゲイター=メリンダ・ディロン、ジミー・ゲイター=フィリップ・シーモア・ホフマン、バート・ラムジィ=リッキー・ジェイ、ドニー・スミス=ウィリアム・H・メイシー、ソロモン・ソロモン=アルフレッド・モリーナ、リンダ・パートリッジ=ジュリアン・ムーア、ジム・カーリング警官=ジョン・C・ライリー、アール・パートリッジ=ジェイソン・ロバース、リック・スペクター=マイケル・ボウエン
ロバート・アルトマン監督の大傑作「ショート・カッツ」を連想させるアンサンプル映画。12人の男女の一日をタペストリーのように精緻に編み上げていく。それぞれの立場は過酷で、追い詰められていくが、みつめる監督のまなざしは不思議に温かい。偶然についての歴史的なエピソードを並べた巧みなプロローグから、手際の良い人物紹介、そして登場人物全員が「Wise Up」の「もうとまらない」という歌詞を口ずさむシーンの素晴らしさはどうだろう。心地よい肩すかしを楽しみながら、3時間7分を過ごすことができる。「マグノリア」という題から、あからさまな華を求めてはいけない。ラストの控えめな微笑み以外は。
私にとっての本当の驚きは、想像を絶したクライマックスシーン(アイデアは浮かんだとしても、実際にやってしまうとは。すべてを洗い流す土砂降りの雨。It rains frogs.)ではない。SEX教祖役のトム・クルーズの名演技だ。「アイズ・ワイド・シャット」(スタンリー・キューブリック監督)でさえ、枠を超えられなかった彼が、群像劇で花開くとは。12人の個性的な俳優たちの中でも、ひときわ存在感のある青年を演じ、強烈な印象を残した。
シュリ |
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1999年作品。韓国映画。124分。配給=シネ・カノン、アミューズ。監督・脚本=カン・ジェギュ。撮影=キム・ソンボク。照明=ウォン・ミョンジュン。編集=パク・コクチ。音楽=イ・ドンジュン。特殊効果=チョン・ドアン。CG=メカド。ユ・ジュンウォン=ハン・ソッキュ、イ・ミュンシャン=キム・ユンジン、パク・ムヨン=チェ・ミンシク、イ・ジャンギル=ソン・ガンホ、オ・ソンシク=パク・ヨンウ、イ・バンヒ=パク・ウンスク
冒頭の北朝鮮での特殊工作員の訓練シーンは、息を飲むほどに壮絶だ。韓国、北朝鮮の緊張関係、民族分断という現実の裏づけがあるだけに、リアリティは痛いほど。北朝鮮の工作員を人間として描いていたのも共感できた。そして、スパイと情報部員の悲劇的な恋が最大の効果を発揮している。ラストのキャロル・キッドが歌う「When I Dream」は、心に染みた。
ハン・ソッキュは「8月のクリスマス」(ホ・ジノ監督)とは180度違う硬派の男を演じきっていて見事。キム・ユンジンも苦悩をうまく表現していた。編集も音響も非常に切れが良い。多くの映画評は絶賛している。傑作なのは認める。ただ、液体爆弾CTXの原理があまりにもお粗末であったり、情報部員としてはかなり不用意な行動が目立つなど、娯楽作としても疑問な点はある。しかし、ハリウッド映画に負けない娯楽作をつくろうというカン・ジェギュ監督の意気込みが全編から伝わってくる。
富江Replay |
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2000年作品。日本映画。95分。配給=東映。監督=光石冨士朗。原作=伊藤潤二。脚本原案=尾西要一郎。撮影=山本英夫。美術=内田哲也。特殊メーク=ピエール須田。音楽=遠藤浩二。編集=宮島竜治。照明=金沢正夫。 富江=宝生舞、森田由美=山口紗弥加、佐藤文仁=窪塚洋介、立花医師=遠藤憲一、木下敦子=冨樫真、森田陽子=金久美子、森田健三=菅田俊、武史=松尾政寿
「富江」(及川中監督)の続編ではなく、オリジナルな作品。原作の「富江」は、男を狂わせ自分をバラバラに解体させて増殖していくが、映画もさまざまに原作を切り刻み、それぞれに変化増殖していくことを期待したい。通常のような続編ではない形でシリーズ化すると面白い。
宝生舞は、なかなか妖しい雰囲気を漂わせていた。冷たい美しさは富江役にぴったりだが、脚本が富江の人間性、死ねない辛さなんかを表現しようと考えたので、恐怖がしぼんでしまった。富江を人間に近付ける必要はない。富江は人間的な感情から離れた存在であってこそ、迫力があるはずだ。
うずまき |
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2000年作品。日本映画。90分。配給=東映。監督=Higuchinsky。原作=伊藤潤二。脚本=新田隆男。撮影=小林元。美術=林田裕至。音楽=鈴木慶一、かしぶち哲郎。Avid編集=遠山千秋。衣装=渡邊シュウジ。五島桐絵=初音映莉子、斎藤秀一=フィーファン、斎藤敏夫=大杉漣、斎藤雪枝=高橋恵子、田村一郎=堀内正美、関野恭子=佐伯日菜子、五島泰雄=諏訪太朗、二田巡査=でんでん、横田育男=手塚とおる
ウクライナ出身、東京育ちのHiguchinsky監督は、ミュージック・ビデオ・クリップで高い評価を得ているが、映画はこの作品がデビュー作。くすんだ色調は「怪奇大作戦」を連想させる。懐かしい雰囲気に最新のCGを持ち込み、ギャグと恐怖を組み合わるセンスは面白い。コミック色が強いが、突然怖いシーンを叩き付けるので、観客は席から飛び上がるくらい驚く。
うずまきだらけで、おもちゃ箱のような構成だが、映画としての収まりの面で、大杉漣、高橋恵子の演技に助けられている。髪を膨張させる関野恭子役の佐伯日菜子は、思い切って漫画チックにデフォルメした演技が笑える。斎藤秀一役フィーファンは、奇妙な味を漂わせてハマリ役。ヒロインの初音映莉子は、演技はこれからという感じだが、清楚な雰囲気で好感が持てた。
リング0〜バースディ〜 |
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2000年作品。日本映画。99分。配給=東宝。エグゼクティブ・プロデューサー=原正人。監督=鶴田法男。脚本=高橋洋。原作=鈴木光司「バースディ」(角川ホラー文庫刊)。撮影=柴主高秀。美術=山口修。音楽=尾形真一郎。編集=須永弘志。山村貞子=仲間由紀恵、遠山博=田辺誠一、宮地彰子=田中好子、立原悦子=麻生久美子
「リング」シリーズの完結編ということだが、「バースディ」の中編「レモンハート」を基にした組み立てに無理がある。あの作品群は、あくまで外伝として楽しむものだ。山村貞子が、呪いのビデオテープをなぜ生み出すことになってしまったのかを解き明かしたと宣伝されているが、私は第1作「リング」自体の説明で十分だと思う。
鶴田法男監督は、恐がらせるテクニックには精通している。しかし、ストーリーが薄いので、恐怖の質も浅いものにならざるを得なかった。仲間由紀恵は、美少女だが山村貞子役としては線が細すぎる。地味な配役だったが、麻生久美子はラストに向けて演技に熱がこもり、「カンゾー先生」(今村昌平監督)の体当たりの演技を思い出させた。
ISOLA |
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2000年作品。日本映画。94分。配給=東宝。監督=水谷俊之。原作=貴志祐介 「十三番目のペルソナ人格ISOLA」(角川ホラー文庫刊)。脚本=水谷俊之、木下麦太。脚本補=桑原あつし、畑島ひろし。撮影=栗山修司。美術=稲垣尚夫、福澤勝広。照明=豊見山明長。ビジュアル・エフェクト=松本肇、杉木信章。録音=山田 均。編集=高橋信之。装飾=湯澤幸夫。音響効果=佐々木英世。音楽プロデューサー=浅沼一郎。音楽= デビッド・マッシューズ。賀茂由香里=木村佳乃、森谷千尋=黒澤優、真部和彦=石黒賢、野村浩子=手塚理美、高野弥生=渡辺真起子
「勝手に死なせて!」、「人間椅子」と、屈折した人間心理を突き抜けた表現で作品化してきた水谷俊之監督。鋭い映像感覚は高い水準にあった。超能力と多重人格を扱った「ISOLA」も人間心理を描いたものだが、阪神大震災への配慮からか、製作上の制約からか、水谷監督としては大胆さが欠けているように感じた。
黒澤優の拒絶的な表情が抜群にいい。演技はこれからだが、目に力がある女優なので、今後が楽しみだ。癒し系の女優と見られていた木村佳乃は、人の心が読める超能力者の孤独を演じて、女優としての幅を広げるきっかけがつかめたのではないか。「 M/OTHER」(諏訪敦彦監督)で強烈な印象を残した渡辺真起子は、激しくはあるが人間としての掘り下げが乏しい役で、かわいそうな気がした。
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