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 草ぶきの学校  「草ぶきの学校」の画像です

 1999年作品。中国映画。107分。配給=日本ヘラルド映画。プロデューサー=ツァオ・リン(曹霖)。監督=シュイ・コン(徐耿)。原作・脚本=ツァオ・ウェンシュアン(曹文軒)(原作本「サンサン」てらいんく刊)。撮影=リゥ・リーホァ(劉利華)。音楽=ツォウ・イエ(鄒野)。録音=トゥ・シァオホァ(杜小華)。編集=ロウ・リン(楼玲)。美術=ウー・リーチョン(呉黎中)。桑桑(サンサン)=ツァオ・タン(曹丹)、紙月(ジーユエ)=ウー・チンチン(呉琴琴)、父=トゥ・ユアン(杜源)、陸鶴(ルー・ホー)=シュイ・イェンチン


 1962年の中国の農村にあるヨウマーティ小学校が舞台。この学校の校長を務める父を持つ少年サンサンが主人公。少年の目線で、さまざまな出来事、事件が描かれていく。それぞれのエピソードが、とても面白い。文化大革命という激しい動乱以前の、のどかさに満ちた時間の流れが、甘い郷愁を誘う。最後に病に倒れる物語だけは、やや唐突だった。しかし、それによって父との絆が深まる。1960年前半を懐かしく思い出すのは、中国も日本も同じということか。

 全員が地元で選ばれた演技経験のない小学生だということだが、のびのびとした演技が自然で、小学校時代の雰囲気を良く醸し出していた。サンサン役のツァオ・タンは、愛おしくなるほど可愛い。はげ頭の少年ルー・ホーを演じたシュイ・イェンチンは、屈折した少年期の思いを表現していて、共感した。


 壬生義士伝  「壬生義士伝」の画像です

 2002年作品。日本映画。137分。配給=松竹。監督=滝田洋二郎。原作=浅田次郎「壬生義士伝(みぶぎしでん)」(文春文庫)。製作代表=大谷信義、菅谷定彦、鞍田暹、俣木盾夫、石川富康、増田宗昭、菊地昭雄。プロデューサー=宮島秀司、榎望。企画=石川博、遠谷信幸。脚本=中島丈博。音楽=久石譲。撮影=浜田毅。美術=部谷京子。照明=長田達也。録音=小野寺修。装飾=小池直実、中込秀志。編集=冨田功、冨田伸子。吉村貫一郎=中井貴一、斎藤一=佐藤浩市、大野次郎右衛門=三宅裕司、ぬい=中谷美紀、しづ=夏川結衣、伊東甲子太郎=斉藤歩


 これまで、あまり注目されなかった新選組の隊士・吉村貫一郎を主人公にした時代劇。最初は、尊皇攘夷という義のためというよりも家族のためにお金をためる姿が、新鮮に思えたが、次第に「感動」を押し付けてきて、しらけはじめる。泣かせよう、泣かせようという演出がみえみえで、へきえきする。

 吉村貫一郎をはじめ、みんな良い人ばかり。良い人すぎる。もっと、どろどろした世界のはずが、生ぬるいのだ。だいたい、吉村貫一郎が討ち死にせずに、大野次郎右衛門のところまでやってきて、長々と独白して死んでいくシーンの志の低さは、信じがたいほどだ。滝田洋二郎監督は、いつから、こんなにウェットな監督になってしまったのか。


 T.R.Y.  「T.R.Y.」の画像です

 2002年作品。日本映画。104分。配給=東映。監督=大森一樹。企画=坂上順、永田洋子。プロデューサー=天野和人/野村敏哉。原作=井上尚登(「T.R.Y.」角川文庫刊)。脚本=成島出。撮影=加藤雄大。照明=大久保武志。美術=稲垣尚夫、竹内公一。音楽=住友紀人。伊沢修=織田裕二、パク・チャンイク=孫暢敏(ソン・チャンミン)、関飛虎(ガン・フェイフー)=邵 兵(シャオビン)、丁愛鈴=楊若兮(ヤン・ローシー)、肖丁=ピーター・ホー、喜春=黒木瞳、東正信=渡辺謙


 上海の郊外に第二次大戦前の上海市街を再現した大規模なセットがあり、それを利用した作品。一見、大作に見えるが、スケール感に乏しい。時代のリアリティ、広がりが一向に感じられない。細部を描くというきめ細やかさに欠けるからだろう。最初は良かったが、だんだん日本語ばかり話しはじめるのも、いただけない。

 物語は、中盤までもたつき気味だが、ラストに向かって加速し、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、楽しませてくれる。しかし、どの登場人物も中途半端で人間が描けていないので物足りない。織田裕二に、詐欺師の柔軟さを演じさせるのは、無理。役を選ばないと。


 火山高  「火山高」の画像です

 2001年作品。韓国映画。108分。配給=アミューズピクチャーズ。製作=チャ・スンジェ。プロデューサー=キム・ジェウォン。監督=キム・テギュン。脚本=ソ・ドンホン、チョン・アンチョル、キム・テギュン、パク・ホンス、ホ・キュン。撮影=チェ・ヨンテク。照明=チョン・ヨンミン。美術監督=チャン・グニョン、キム・キョンヒ。CG=チャン・ソンホ。特殊効果=チョン・ドアン。アクション監督=イ・ウンジュン。音楽監督=DAlTA。キム・ギョンス=チャン・ヒョク(関智一)、ユ・チェイ=シン・ミナ(林原めぐみ)、チャン・リャン=キム・スロ(森川智之)、ソン・ハンニム=クォン・サンウ(子安武人)、ソ・ヨソン=コン・ヒョジン(宮村優子)、カタツムリ=チョン・サンフン(山口勝平)、シンマ=キム・ヒョンジョン(檜山修之)、ヨウマ=チェ・シア(城雅子)、学園五人集・数学教師=ホ・ジュノ(磯部勉)、学園五人集・国語教師=チョ・ソングォン(檀臣幸)、学園五人集・音楽教師=パク・トンビン(大塚芳忠)、学園五人集・体育教師=ソ・ボムシク、学園五人集・英語教師=キム・サンミ(朴ろ美)、校長=ユン・ムンシク(石森達幸)、教頭=ピョン・ヒボン(池田勝)、漢文教師=シン・チョルジン(鈴木清信)、保健の先生=チョン・ウォンジュン(茶風林)、学年主任=キム・イル(稲葉実)、ギョンスの父親=チョ・サンゴン(大川透)、ギョンスの母親=チン・ヨンラン(重松朋)、柔道部主将=キム・ヒョク(清水敏孝)、ホッケー部主将=パク・ンヌ(土田大)、マンモス=(梁田清之)、生徒達=(多緒都、三戸貴史、下山吉光、新垣樽助)、ナレーション=(古田新太)


 学園ドラマ・コミックの世界。生徒たちと教師たちとのワイヤーアクションとデジタル画像処理を駆使したスーパー・バトル。過去でも未来でもない異様な雰囲気が良い。まず問答無用のコテコテの設定に呆れるか、盛り上がるかで、この作品の評価は大きく分かれるだろう。私は、古典的な構図で進んでいく展開を楽しんだ。つっこみ所満載。

 韓国映画には珍しく、字幕版と日本語吹き替え版がある。どちらも楽しめると思いが、字数制限のない日本語吹き替え版がオススメかな。聞くところによると、作品自体を日本公開に合わせて手直ししたとか。韓国映画なのに、日本の懐かしい青春映画の香りも漂う。


 ゴーストシップ  「ゴーストシップ」の画像です

 2002年作品。アメリカ・オーストラリア合作。91分。配給:ワーナーブラザース映画。監督:スティーブ・ベック。製作:ジョエル・シルバー、ロバート・ゼメキス、ギルバート・アドラー。脚本:マーク・ハンロン、ジョン・ポーグ。撮影:ゲイル・タッターサル。美術:グラハム・“グレース”・ウォーカー。音楽:ジョン・フリッゼル。ショーン・マーフィー=ガブリエル・バーン、ジャック・フェリマン=デズモンド・ハリントン、モーリーン・エップス=ジュリアナ・マルグリース、グリアー=アイザイア・ワシントン、ドッジ=ロン・エルダード、マンダー=カール・アーバン、サントス=アレックス・ディミトリアデス


 ホラー、スプラッター、パニック、ミステリー映画の美味しいところを盛り込んだ、サービス精神満点の作品。ストーリー展開に、やや首を傾げたくなる点はあるものの、さまざまな映像的な面白さを堪能できるので大目にみたくなる。この種の映画としては、高得点の出来だ。

 豪華客船のまったりとしたダンスホールのシーンから始まる。そして、壮絶な惨劇。最初にすさまじい血まみれシーンを見せて、観客の眼を釘付けにする。すこぶる怖いというわけではないが、程よい緊張をはらんで、派手な爆発シーン、うじ虫ゲロゲロシーン、美しい幻想シーン、お色気シーンが矢継ぎ早に登場する。とにかく飽きさせない。カギを握る少女も、印象的だった。


 ごめん  「ごめん」の画像です

 2002年作品。日本映画。103分。配給=オフィス・シロウズ、メディアボックス。監督=冨樫森(とがし・しん) 。原作=ひこ・田中『ごめん』(偕成社刊)。脚本=山田耕大。製作=岡俊太郎、川城和実、関原二郎、竹中功、佐々木史朗。プロデューサー=藤門浩之、河野聡、吉田晴彦、久保田傑。協力プロデューサー=新谷弘、佐藤美由紀。撮影=上野彰吾(J.S.C.)。照明=上妻敏厚。録音=深田晃。美術=三浦伸一。編集=川島章正。助監督=谷口正晃。製作担当=森井輝。音楽=大友良英。セイ(七尾聖市)=久野雅弘、ナオコ(瓜生直子)=櫻谷由貴花、キンタ=佐藤翔一、ニャンコ=栗原卓也、ナオコの父(瓜生直希)=斎藤歩、セイの母(七尾結芽)=河合美智子、セイの父(七尾正一)=國村隼、セイの祖父=森毅、セイの祖母= 伊吹友木子、ナオコの母=三田篤子、倉田先生=小牧芽美、竹林のおばあちゃん=飯島順子、ユーミ=岡本奈月、福俵尚子=山下真悠、クンコ=今中恵里奈、サツキ=土井玲奈、赤坂=川上翔太、セイキ=花田康次郎、ヨシキ=麻田優真、シゲミ=中川雄哉


 小学6年生の性と恋の目覚め、そして葛藤を描いた、これまでにありそうでなかった物語。巧みな構成が、ラストの疾走へと爽やかにつながる。観終わって、これほど嬉しくなった作品も珍しい。まさに快挙といえる傑作の誕生です。冨樫森監督の映像は、気取っていない。しかし、的確に鋭く感情をすくい取る。静かによどみなく物語を盛り上げる。素朴でありながら、美しさと緊張を保っている。簡単にできることではない。この作品は、冨樫監督があこがれ、かつて助監督を務めた故・相米慎二監督にささげられている。相米監督も、満足していることだろう。

 主人公セイ役の久野雅弘は、掛け値無しの逸材。並みの「天才子役」ではない。最初は、とぼけたしょうもない小学6年生なのだが、ラストの格好の良さはまぶしいほど。やられたなあ。上手な演技が鼻につかないほど、天才的にうまい。ナオコ役櫻谷由貴花も、初出演とは思えない熱演ぶり。そして、セイの父を演じた國村隼が、魅力的なのに驚く。ナオコの父を演じた斎藤歩は、確実にうまくなっている。


 刑務所の中  「刑務所の中」の画像です

 2002年作品。日本映画。93分。配給=ザナドゥー。監督=崔洋一。企画・製作=若杉正明。エグゼクテイブプロデrサー=石川富康、岩城正剛。原作=花輪和一(「刑務所の中」青林工嚢舎刊)。脚本=崔洋一、鄭義信、中村義洋。プロデューサー=榎望。撮影=浜田毅。美術=磯見俊裕。照明=松岡泰彦。録音=鈴木肇。編集=川瀬功。スクリプター=小泉篤美。音響効果=齋藤昌利。助監督=中村隆彦。製作担当=氏家英樹。音楽プロデューサー=佐々木次彦。監督助手=佐和田恵、金成国。撮影助手=小松高志、江崎朋生、大嶋良教。美術担当=林千奈、三ツ松けいこ、露木恵美子。ハナワ=山崎努、伊笠=香川照之、田辺=田ロトモロヲ、小屋=松重豊、竹伏=村松利史、ティッシュマン高橋=大杉漣、掃夫友田=伊藤洋三郎、ミリタリー中田=遠藤憲一、ミリタリー佐藤=浅見小四郎、ミリタリー田村=粟田茂、ミリタリー木下=恩田括、ミリタリー佐伯=小木茂光、医官=椎名桔平、浜村=窪塚洋介、大内=木下ほうか、岸田=長江英和、野口=榎戸耕史、中井=戸田昌宏、加藤=山中聡、戸川=斎藤征義、原山=森下能幸、それじゃさま青島=黒沼弘巳、藤島=草薙良一、工場担当横山=斎藤歩、計算工山本=大橋一三、班長内=田村上連、配食係=中村義洋、クロスワードの受刑者=林海象、佐々木さん=本田徳樹、本島=宮川宏司、モミアゲの受刑者=本間盛行、看守稲川=三原康可、看守杉野=飯島大介、看守水上=田邊年秋、工場区長=小形雄二、看守中村=辰巳浩三、看守北見=旭洋一、看守草野=井上利則、舎房区長=本間典勝、少年時代のハナワ=小野光哉、中学生のハナワ=斎藤祐也


 鉄砲刀剣類等不法所持、火薬類取締法違反による実刑。3年間の刑務所生活を描いているが、暴力シーンがない。管理されながらも、ある意味で快適な日々が過ぎていく。全体に力の抜けた、ほのぼのとした笑いに満ちたストーリー。これまでの刑務所描写の常識を覆す一方、刑務所生活を「体験リゾート」したくなる誘惑に満ちている。これまでの崔洋一作品からはかけ離れた、新たな崔洋一作品。順番は違うものの、原作の内容と雰囲気にそった展開。あっけらかんとしすぎた描写が、少しひっかかるが、まあ素直に楽しんでしまおう。

 それにしても、山崎努はすごい。自在に役になりきりながら、独特な個性を醸し出す。「天国と地獄」から、こんなにも遠くに来たものだ。香川照之、田ロトモロヲ、松重豊、村松利史も、いい味出している。何気ない会話から美味しそうに食べる食事まで、うまいなあ。また椎名桔平の意外な軽さを見て、得した気分になった。


 至福のとき  「至福のとき」の画像です

 2002年作品。中国映画。97分。配給=20世紀フォックス。監督=チャン・イーモウ(張芸謀)。原作=モー・イエン「至福のとき」。脚本=グイ・ズ。製作=チャオ・ユイ、ヤン・チンロン、チョウ・ピン、チャン・ウェイピン。製作総指揮=エドワード・R・プレスマン、テレンス・マリック、ワン・ウェイ。製作補=エリン・オルーク。撮影=ホウ・ヨン。美術=ツァオ・ジュウピン。サウンド=ウー・ラーラー。編集=チャイ・ルー。音楽=サン・パオ。チャオ=チャオ・ベンシャン(趙本山)、ウー・イン=ドン・ジエ(董潔)、フー=フー・ピアオ、同僚=リー・シュエチエン、ニウ・ベン、ドン・リーファン


 工場をリストラされたチャオは結婚に憧れる冴えない中年男性。見合い相手に旅館の社長だと嘘をつき、前夫の連れ子である目の不自由なウー・インの仕事を世話するはめに陥る。そこから、工場仲間を巻き込んだ悲喜劇が始まる。チャン・イーモウの作品としては、小品といえるだろう。しかしながら、新しい映像に踏み込んだようにも感じる。一見「至福のとき」という題名に似つかわしくない結末も、至福の時間のはかなさを際立たせている。希望がないわけではないが、辛いラストだ。

 優柔不断な中年男性をチャオ・ベンシャンが軽妙に演じている。ダメさ加減に呆れながらも、次第に憎めなくなっていく。そして何時の間にか好きになってしまう。うまいなあ。お人好しな工場の仲間も微笑ましい。そして、何といっても映画初出演で盲目の少女を演じたドン・ジエの才能と役者魂に拍手を贈ろう。痩せ細り、凍り付いたような表情の彼女が、人の温かさに触れ、こぼれるような笑顔を見せたとき、強烈なオーラを放った。チャン・イーモウは、女優を育てるのが上手い。いや、女優の個性にあった作品づくりがうまい。

 


 
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