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2005.3

 エターナル・サンシャイン 「エターナル・サンシャイン」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。107分。配給=ギャガ・ヒューマックス共同。監督=ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)。製作=アンソニー・ブレグマン(Anthony Bregman)、スティーヴ・ゴリン(Steve Golin)。製作総指揮=デヴィッド・ブシェル(David Bushell)、チャーリー・カウフマン(Charlie Kaufman)、ジョルジュ・ベルマン(Georges Bermann)、グレン・ウィリアムソン(Glenn Williamson)。原案=チャーリー・カウフマン(Charlie Kaufman)、ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)、ピエール・ビスマス(Pierre Bismuth)。脚本=チャーリー・カウフマン(Charlie Kaufman)。撮影=エレン・クラス(Ellen Kuras)。美術=ダン・リー(Dan Leigh)。衣装=メリッサ・トス(Melissa Toth)。編集=ヴァルディス・オスカードゥティル(Valdis Oskarsdottir)。音楽=ジョン・ブライオン(Jon Brion)。ジョエル・バリッシュ=ジム・キャリー(Jim Carrey)、クレメンタイン・クルシェンスキー=ケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)、メアリー=キルステン・ダンスト(Kirsten Dunst )、スタン=マーク・ラファロ(Mark Ruffalo)、パトリック=イライジャ・ウッド(Elijah Wood)、Dr.ハワード・ミュージワック=トム・ウィルキンソン(Tom Wilkinson)


 「マルコビッチの穴」の脚本家カウフマンが仕掛ける奇天外なストーリーかと思っていたが、主人公の脳内イメージが映像になっていることを理解すれば「エターナル・サンシャイン」は分かりやすかった。ゴンドリー監督は、現実の場面と脳内イメージを巧みに操って物語をころがしていく。基本的にコミカルさよりもシニカルさが目立つ。ジム・キャリーよりもウィンスレットの印象が変わっていて驚いた。ちょっとウイノナ・ライダー入っていない?。

「記憶除去」という肝心のテーマの動機が弱い。別に大失恋した訳ではないのに、2人に関する記憶を消そうとする。重大なことを安易に実行してしまうという現状批判なのだろうか。記憶が消され始めて、やっと記憶の大切さ、かけがえのなさを知るという展開も、やや幼稚。それぐらい分かるだろう。最初は、なかなか意欲的な試みと評価していたが、見終わったときには空しい気持ちになっていた。


 バンジージャンプする 「バンジージャンプする」の画像です

 2001年作品。韓国映画。100分。配給=IMX。監督=キム・デスン。製作=チェ・ナックオン、ハ・ソングン、ノ・ジェスン。脚本=コン・ウンニム。撮影=イ・フゴン。照明=ウォン・ミョンジュン。美術=チャン・チュンソプ。音楽=パク・ホジュン。衣装=パク・ヒョンジュン、キム・ムンヨン、イ・ウンジン、ジャン・ユンジョン、ホン・ギウォン。ソ・インウ=イ・ビョンホン、イン・テヒ=イ・ウンジュ、イム・ヒョンビン=ヨ・ヒョンス、 オ・ヘジュ=ホン・スヒョン


 イ・ビョンホン人気にあやかって2001年の作品「バンジージャンプする」が日本公開された。しかし2月22日のイ・ウンジュ自殺によってイ・ウンジュ遺作としても注目された。と言っても観客の95%は女性だったが。生まれ変わりをテーマにした恋愛劇だが「性別が変わってしまっていたら」というひねりを効かせているところがユニーク。国語教師の担任した男子生徒がかつての恋人の生まれ変わりと気づき、激しく動揺する。細かな伏線が巧みに生かされている。ロケしたニュージーランドのたゆたう自然が美しい。

 イ・ビョンホンは、甘いマスクだけの俳優ではない。不器用な大学生と17年後の落ち着いた中年男性を演じ分ける。しかも、その中年が取り乱す姿を熱演した。イ・ウンジュは、物静かながら芯が強い女性を好演。派手さはないが、端正で不思議な存在感のある俳優だ。地道に俳優としてのキャリアを積んでいくタイプに見えた。自殺しなければ、きっとそうなったと思う。イ・ウンジュは生前、この作品が一番好きと言っていたらしい。追い詰められる中で輪廻転生を信じ、来世にジャンプしたのかもしれない。


 ロング・エンゲージメント 「ロング・エンゲージメント」の画像です

 2004年作品。フランス映画。134 分。配給=ワーナー。監督=ジャン=ピエール・ジュネ(Jean-Pierre Jeunet)。製作総指揮=ビル・ガーバー(Bill Gerber)、ジャン=ルイ・モンチュー(Jean-Louis Monthieux)。原作=セバスチャン・ジャプリゾ(Sebastien Japrisot)『長い日曜日』(東京創元社刊)。脚本=ジャン=ピエール・ジュネ(Jean-Pierre Jeunet)、ギョーム・ローラン(Guillaume Laurant)。撮影=ブリュノ・デルボネル(Bruno Delbonnel)。美術=アリーヌ・ボネット(Aline Bonetto)。編集=エルヴェ・シュネイ(Herve Schneid)。音楽=アンジェロ・バダラメンティ(Angelo Badalamenti)。マチルド・ドネイ=オドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)、マネク=ギャスパー・ウリエル(Gaspard Ulliel)、エスペランザ=ジャン=ピエール・ベッケル(Jean-Pierre Becker)、アンジュ・バシニャーノ=ドミニク・ベテンフェルド(Dominique Bettenfeld)、ブノワ・ノートルダム=クロヴィス・コルニヤック(Clovis Cornillac)、 ティナ・ロンバルディ=マリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、ゴルド伍長=ジャン=ピエール・ダルッサン(Jean-Pierre Darroussin)、ヴェロニック・パッサヴァン=ジュリー・ドパルデュー(Julie Depardieu)、ピエール=マリー・ルヴィエール=アンドレ・デュソリエ(Andre Dussollier)、 ジャルマン・ピエール=ティッキー・オルガド(Ticky Holgado)、バストーシュ=ジェローム・キルシャー(Jerome Kircher)、シ・スー=ドニ・ラヴァン(Denis Lavant)、ベネディクト=シャンタル・ヌーヴィル(Chantal Neuwirth)、シルヴァン=ドミニク・ピノン(Dominique Pinon)、郵便配達人=ジャン=ポール・ルーヴ(Jean-Paul Rouve)、 プチ・ルイ=ミシェル・ヴュイエルモーズ(Michel Vuillermoz)、エロディ・ゴルド=ジョディ・フォスター(Jodie Foster)


 13年間、映画化への思いをあたためてきたジャン=ピエール・ジュネ監督が、ワーナーの参加で50億円以上の製作費を投じた大作「ロング・エンゲージメント」。フランス映画史上破格の製作費となった。63 万人以上の戦死者を記録した第1次世界大戦の凄惨なソンムの戦いを描いている。観ているだけで苦しくなるような戦場の雰囲気。戦争の悲惨さ、やりきれなさが映像から直接伝わってくる。さすがはジュネ監督だ。そして対照的なブルターニュ地方の陽光の輝き。全編にわたる色彩設計の見事さ、構図の卓抜さに、ジュネ監督の意気込みが感じられる。

 監督としては満足のいく出来だっただろう。ただし、作品的な完成度と映画的な面白さは比例しない。「アメリ」のような、わくわくする面白さがあるわけではない。ラストもあまりに予想通りで、映画的な興奮は少ない。ジョディ・フォスターが意外な役で登場したシーンや、冷え冷えと突き放したギロチンの場面では、どきりとさせられたが。


 ベルヴィル・ランデブー 「ベルヴィル・ランデブー」の画像です

 2002年作品。フランス=カナダ=ベルギー合作。80分。配給=クロックワークス。監督= シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)。製作=ディディエ・ブリュネール(Didier Brunner)。脚本=シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)。音楽=ブノワ・シャレスト(Benoit Charest)。絵コンテ=シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)。グラフィックデザイン: シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)。声の出演:ジャン=クロード・ドンダ(Jean-Claude Donda)、ミシェル・ロバン(Michel Robin)、モニカ・ヴィエガ(Monica Viegas)


 フランス人アニメーター、シルヴァン・ショメの長編デビュー作。マフィアに誘拐された孫シャンピオンの救出に奔走する祖母と飼い犬の大冒険。極端にデフォルメされた濃いキャラクターと乾いた毒のあるストーリー展開が、とてもユニーク。音楽も独創的。フランス・アニメの最良の味わいがある。ここまで、自己のセンスを生かし切ることが、どれほど困難なことか。ハリウッドでも日本でもないアニメ制作の可能性と古くて新しいアニメの魅力を見せつけた意義は大きい。

 この作風に拒否反応を起こす人がいるかもしれない。しかし、既存のスタイルに縛られることなく、このアニメの世界に浸れば、素直に楽しめるはず。おばあちゃんも、飼い犬ブルーノも、いとおしくなる。三姉妹の振る舞いが素敵に見えてくる。アニメを通して、世界の多様性、豊かさを実感した幸せな80分だった。


 カナリア 「カナリア」の画像です

 2004年作品。日本映画。132分。配給=シネカノン。監督:塩田明彦。製作:佐々木史朗、中川滋弘、川城和実。プロデューサー:松田広子。脚本:塩田明彦。撮影:山崎 裕。照明:佐藤 讓 。編集:深野俊英。音楽:大友良英。イメージソング=浜田真理子『銀色の道』。エンディングテーマ=向井秀徳『自問自答「カナリア」ミックス』。照明=佐藤讓。録音=郡弘道。岩瀬光一=石田法嗣、新名由希=谷村美月、井沢彰=西島秀俊、咲樹=りょう、梢=つぐみ、プラーナ=渡辺真起子、岩瀬道子=甲田益也子、都村芳雄=水橋研二、吉岡=戸田昌宏、芳江=井上雪子


 1995年3月20日東京地下鉄サリン事件から、ちょうど10年。カルト教団の施設で過ごした少年の、その後を描いた「カナリア」を観た。ヒット作「黄泉がえり」の後に、あえてこのテーマを選択した塩田明彦監督の志の高さに驚かされる。子どもたちの視線で、カルト教団の意味を問うという視点は、いかにも塩田監督らしい。「銀色の道」の歌詞が、実に効果的に使われている。

 物語は、深い傷口を無理に縫い合わせるように終わる。塩田監督がこの事件から受けた衝撃の大きさが分かる。だから、何としても縫い合わせようとした。しかし、無理に縫い合わせると、さらにひどい傷口が開く。鮮烈な傷口を直視し続けるしかないのではないか。「害虫」のラストのように。時代の最前線としての「カナリア」。子どもたちだけが「カナリア」ではない。事件全体が「カナリア」だった。10年が経過し、さらにひどい傷口が開いている。

★「銀色の道」(塚田茂作詞・宮川泰作曲)
遠い遠い はるかな道は
冬の嵐が 吹いてるが
谷間の春は 花が咲いてる
ひとりひとり 今日もひとり
銀色の はるかな道

ひとりひとり はるかな道は
つらいだろうが 頑張ろう
苦しい坂も 止まればさがる
続く続く 明日(あした)も続く
銀色の はるかな道

続く続く はるかな道を
暗い夜空を 迷わずに
二人の星よ 照らしておくれ
近い近い 夜明けは近い
銀色の はるかな道


 サイドウェイ 「サイドウェイ」の画像です

 2004年作品。アメリカ・ハンガリー合作。130分。配給: 20世紀フォックス映画 。監督=アレクサンダー・ペイン(Alexander Payne)。 原作=レックス・ピケット(Rex Pickett)。製作=マイケル・ロンドン 。脚本=アレクサンダー・ペイン、 ジム・テイラー。撮影=フェドン・パパマイケル 。編集=ケヴィン・テント。 音楽=ロルフ・ケント。マイルス=ポール・ジアマッティ(Paul Giamatti)、 ジャック=トーマス・ヘイデン・チャーチ(Thomas Haden Church)、マヤ=ヴァージニア・マドセン(Virginia Madsen)、ステファニー=サンドラ・オー(Sandra Oh)、マイルズの母=メアリールイーズ・バーク(Marylouise Burke)


 離婚のショックから立ち直れない中年の小説家を目指す国語教師マイルスは、結婚を1週間後に控えた大学時代からの親友ジャックとともに、カリフォルニアへとワイン・ツアーの旅に出る。マイルスは、オタク的なワイン通。旅の途中でワイン好きの魅力的な女性マヤと出会うが、気持ちを素直に伝えられない。ワインに関する蘊蓄を絡ませながら中年男たちのこっけいなロードムービーを巧みにみせる。見事な脚本だが、大絶賛すべき作品とは思えない。「中年男なんて、こんなものよ」という、したり顔が気に入らない。

 たしかに中年男の身勝手さや可愛らしさは、うまく描かれている。ダメ男を演じたポール・ジアマッティの哀れな表情は忘れ難い。しかし類型的すぎる。また「人生は極上のワインのように、そのピークを迎える日まで日ごとに熟成し、複雑味を増す。それからはゆっくりと坂を下っていくが、ピークを過ぎた味わいも捨てがたい」などという台詞は、あまりにも月並みではないか。道を極めれば、そこに人生が重なって見えてくるのは当然だ。おおげさに感動する名文句とは思わない。


 
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