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2004.04

 コールド マウンテン 「コールド マウンテン」の画像です

 2003年作品。イギリス・イタリア・ルーマニア合作。155分。配給=東宝東和。監督・脚本=アンソニー・ミンゲラ(Anthony Minghella)。原作=チャールズ・フレイジャー「コールドマウンテン」(新潮文庫刊)。製作=シドニー・ポラック、ウィリアム・ホーバーグ、アルバート・バーガー、ロン・イェルザ。製作総指揮=イアイン・スミス。共同製作=ティモシー・ブリックネル。撮影監督=ジョン・シール。編集=ウォルター・マーチ。美術=ダンテ・フェレッティ。衣装=アン・ロス。音楽=ガブリエル・ヤールインマン=ジュード・ロウ(Jude Law)、エイダ・モンロー=ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、ルビー・シューズ=レニー・ゼルウィガー(Renee Zellweger)、モンロー牧師=ドナルド・サザーランド(Donald Sutherland)、セーラ=ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)、ヴィージー=フィリップ・シーモア・ホフマン、ジュニア=ジョヴァンニ・リビシ、ティーグ=レイ・ウィンストン、スタブロッド=ブレンダン・グリーソン、サリー・スワンガー=キャシー・ベイカー、エスコー・スワンガー=ジェームズ・ギャモン、マディ=アイリーン・アトキンス、ボジー=チャーリー・ハナム、渡し舟の少女=ジェナ・マローン、パングル=イーサン・サプリー 、ジョージア=ジャック・ホワイト、オークリー=ルーカス・ブラック


 南北戦争末期の1864年。南軍兵士としてヴァージニア州の戦場に送られたインマンは、瀕死の重傷を負って病院に収容される。戦争の理不尽さと恋人エイダへの思いにかられ、インマンは脱走兵として死罪に問われるのを覚悟で故郷コールド マウンテンに向う。インマンの旅と帰りを待つエイダが、交互に描かれる。多少の不満は残るものの、アンソニー・ミンゲラらしいスケール感のある作品だ。ラブストーリーを中核にすえながら戦争の愚かさ、残酷さ、空しさを見事に浮き上がらせている。

 インマンとエイダ。ジュード・ロウとニコール・キッドマンが演じると絵になる。ただ、ふたりの人間造形はやや弱い。むしろ、エイダを助けるルビーの方が、丁寧に描かれている。レニー・ゼルウィガーの熱演もあり、アカデミー賞助演女優賞に輝いた。インマンを助ける未亡人や老女たちも、多くは語られないにも関わらずおのおのの歴史を感じさせる。戦争の悲惨さが底流にあるので重苦しさはあるが、壮大な自然風景とバンジョーの音色が暗さをカバーしている。


 CASSHERN 「CASSHERN」の画像です

 2004年作品。日本映画。141分。配給=松竹。監督・撮影監督・編集・脚本=紀里谷和明。脚本=菅正太郎、佐藤大。コンセプチュアルデザイン・プロダクションデザイナー=林田裕至。コンセプチュアルデザイン・VFXスーパーバイザー=木村俊幸。VFXスーパーバイザー=野崎宏二。コンセプチュアルデザイン・CGスーパーバイザー=庄野晴彦。コンセプチュアルデザイン・DK。衣装=北村道子。ヘア&メイクアップデザイン=稲垣亮弐。バトルシーンコンテ=樋口真嗣。東鉄也(キャシャーン)=伊勢谷友介、上月ルナ=麻生久美子、東博士=寺尾聰、東ミドリ=樋口可南子、上月博士=小日向文世、アクボーン=宮迫博之、サグレー=佐田真由美、バラシン=要潤、上条中佐=西島秀俊、内藤薫=及川光博、坂本=寺島進、上条将軍=大滝秀治、老医師=三橋達也、ブライ=唐沢寿明


 1970年代に製作され、日本アニメ史に大きな足跡を残したタツノコプロの「新造人間 キャシャーン」を紀里谷和明が初監督して実写版「CASSHERN」を制作した。樋口真嗣ら注目のクリエイターらがスタッフとして参加。伊勢谷友介、麻生久美子、唐沢寿明をはじめ、寺尾聰、樋口可南子、大滝秀治などキャスティングも豪華だ。

 ミュージックビデオなどで、独創的な美意識を発揮してきた紀里谷和明。「CASSHERN」の映像でも、独自の世界観を見事にビジュアル化している。あまりにも濃密なデザインにへとへとになる。141分という時間を考えると、章分けしてめりはりをつけるなどの工夫が必要だった。映像は評価できるが、脚本はいただけない。派手な戦闘シーンと会話劇がかみ合わず、バラバラな印象を受ける。反戦のメッセージが言葉に頼り過ぎている。思いの強さは伝わってくるだけに残念だ。


 アップルシード 「アップルシード」の画像です

 2004年作品。日本映画。103分。配給:東宝。原作=士郎正宗(青心社刊)。監督=荒牧伸志。プロデュース=曽利文彦。音楽=Boom Boom Satellites。参加アーティスト=坂本龍一、Paul Oakenfold、Basement Jaxx、Akufen、Atom Heart、T.Raumschmiere 。脚本=半田はるか、上代務 。エグゼクティブプロデューサー=三宅澄二 。プロデューサー=植木英則、渡邊直子 。共同プロデューサー=小西規夫 。CGプロデューサー=豊嶋勇作 。CGディレクター=大塚康弘。キャラクターデザイン=山田正樹 。音楽プロデューサー=安井 輝 。オリジナルスコア=高橋哲也。音響監督=鶴岡陽太 。音響制作=楽音舎 。制作=デジタル・フロンティア 。製 作=アップルシードフィルムパートナーズ。モーションアクター=三輪明日美、秋本つばさ。デュナン=小林 愛、プリアレオス=小杉十郎太、ヒトミ=松岡由貴 、アテナ=小山茉美、ニケ=山田美穂


 「この映像が映画の未来を変える。」という宣伝コピーは、偽りではなかった。ダイナミックでシャープ、そしてなめらかで柔らかな映像に陶酔した。見事なまでに高いクオリティに仕上がっている。ハリウッドが、そのオリジナリティにひれ伏したのも無理はない。アニメ映画の歴史に、間違いなく新しい1ページを刻み込んだ。サウンドトラックも、そこいらのハリウッド映画以上にハイセンスでかっこいい。

 士郎正宗の原作だが、ストーリー展開は、ハリウッド好みに変えられている。しかし、その点は今回大目に見ようと思う。世界に向けて配給するためには、仕方のないことだ。すでに「2」の制作が始まっている。畳み掛けるように公開し、アニメの新しい地平を世界に示してほしい。


 赤目四十八瀧心中未遂 「赤目四十八瀧心中未遂」の画像です

 2003年作品。日本映画。159分。配給=赤目製作所。監督=荒戸源次郎。原作=車谷長吉(文藝春秋刊)。撮影=笠松則通。照明=石田健司。美術=金勝浩一。音楽=千野秀一。生島与一=大西滝次郎、綾=寺島しのぶ、岸田勢子=大楠道代、彫眉=内田裕也、犀=新井浩文


 昨年、多くの賞を受賞し海外公開も決まった「赤目四十八瀧心中未遂」。「あかめしじゅうやたきしんじゅうみすい」と読む。4月18日に札幌のアーバンホールで行われたシアターキノ12周年記念特別上映会で観ることができた。会場は超満員。多くの人たちが傑作を期待していた。

 観ていて「長いな」と感じてしまう作品は傑作ではない。159分のうち、何度か「長い」「無駄が多い」と思った。情念の物語のはずが、拡散している。重苦しさがない。平凡すぎる映像が続き過ぎる。閉塞的な尼崎と赤目四十八瀧の対比も、十分に生かされていない。

 内田裕也と大楠道代の存在感、俳優としての艶は見事なものだったが、主役の2人が軽すぎる。生島与一役の大西滝次郎は、下手なうえに精悍すぎて、疲れてうらぶれた雰囲気が乏しい。好演が評価された綾役の寺島しのぶも、それほど上手いとも魅力的とも思えない。各賞は、御祝儀ではないのか。


 殺人の追憶 「殺人の追憶」の画像です

 2003年作品。韓国映画。130分。配給=シネカノン。監督:ポン・ジュノ(Pong Jun-Ho)。脚本=ポン・ジュノ、シム・ソンボ。撮影=キム・ヒョング。助監督=ハン・ソングン。音楽=岩代太郎。照明=イ・ガンサン。編集=キム・ソンミン。製作=チャ・スンジェ、ノ・ジョンユン。パク・トゥマン=ソン・ガンホ、ソ・テユン=キム・サンギョン、チョ・ヨング=キム・レハ、新捜査課長=ソン・ジェホ、旧捜査課長ピョン・ヒボン、ペク・クァンホ=パク・ノシク、パク・ヒョンギュ=パク・ヘイル、ソリョン=チョン・ミソン、ギオク=コ・ソヒ、チョ・ビョンスン=リュ・テホ


 猟奇的な連続殺人事件の犯人を追う対照的な2人の刑事という設定は、ハリウッド映画では定番的なものだが、韓国映画「殺人の追憶」は、「セブン」をはじめとするハリウッドの一連の作品を上回る出来と言える。実際に起きた衝撃的な事件をもとにしながら、丁寧に脚本を練り上げていった周到さが感じられる。さりげない伏線が、後で大きなショックをもたらす。じつに見事な伏線の数々。こんなに映画的な面白さがつまった作品には、そう出会えるものではない。俳優たちもうまい。ことし最大の収穫の一つだ。

 事件は錯綜し、人々は錯乱していく。最後まで犯人は分からない。しかし、たっぷりと濃厚な人間ドラマを見せてくれるから、見終わって物足りなさは残らない。「ミスティック・リバー」と似ているようでいて、その視線は正反対だと思う。「ミスティック・リバー」は高みから見下ろすが、「殺人の追憶」の視線は地を這う。だから監督の姿勢に共感できる。

 死体描写の手も抜いていない。実にリアル。冒頭に登場する全身虫だらけの死体から刺激的。そのテンションの高さは「クリムゾン・リバー」(マチュー・カソヴィッツ監督)以上だ。死体役の女優に同情したが、死体に這っている虫はCGで作ったものだった。こんなところにも、CGが効果的に生かされている。


 イン・ザ・カット 「イン・ザ・カット」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。119分。配給=ギャガ・ヒューマックス共同。監督=ジェーン・カンピオン(Jane Campion)。製作=ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、ローリー・パーカー(Laurie Parker)。製作総指揮=エフィ・ブラウン、フランソワ・イヴェルネル。原作=スザンナ・ムーア。脚本=スザンナ・ムーア、ジェーン・カンピオン。撮影=ディオン・ビーブ。音楽=ヒルマル・オルン・ヒルマルソン。美術= デヴィッド・ブリスビン。衣装= ベアトリス・アルナ・パスツォール。フラニー=メグ・ライアン(Meg Ryan)、マロイ=マーク・ラファロ(Mark Ruffalo)、ジョン・グラハム=ケヴィン・ベーコン(Kevin Bacon)、ポーリーン=ジェニファー・ジェイソン・リー(Jennifer Jason Leigh)、リチャード=ニック・ダミチ(Nick Damici)


 スザンナ・ムーアのベストセラーを映画化したサイコ・スリラー。脚本にもスザンナ・ムーアが参加している。しかし、それほど優れた脚本には思えない。サイコ・スリラーの定石通りに物語が進んでいく。猟奇殺人に巻き込まれていく中で孤独な中年女性が性的に変化するという点がポイントになるのだろうが、ジェーン・カンピオン監督らしい苛烈さがない。猟奇殺人の残虐性を凌駕するほどの迫力ある性的描写はなかった。

 メグ・ライアンがヌードを披露し熱演という触れ込みだったが、崩れ始めた身体よりも疲れ切った表情が印象に残った。「死と処女」のシガニー・ウィーバーの裸くらいに無惨だと迫力があったが、中途半端。演技的にも煮え切っていない。ロマ・コメの女王からの脱皮には成功しなかった。むしろカンピオン監督が彼女に気を使い過ぎているように思う。もっと、心をずたずたにしなければ、挑戦した意味がない。

 全体的には評価できないものの、終始やり切れなさが漂う映像センスは、認める。さまざまな映像的なアイデアも見ごたえがある。特に、父と母を回想するスケートシーンには、カンピオンらしい切れがあった。


 
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