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ローズ・イン・タイドランド | ![]() |
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2005年作品。イギリス・カナダ合作。117分。配給=東北新社。監督=テリー・ギリアム。製作=ガブリエラ・マルチネリ、ジェレミー・トーマス。原作=ミッチ・カリン『タイドランド』(角川書店)。脚本=テリー・ギリアム 、トニー・グリゾーニ。撮影=ニコラ・ペコリーニ。プロダクションデザイン=ヤスナ・ステファノヴィック。衣装デザイン=マリオ・ダヴィニョン 、デルフィーヌ・ホワイト。編集=レスリー・ウォーカー。音楽=マイケル・ダナ、ジェフ・ダナ。ジェライザ=ローズ=ジョデル・フェルランド、パパ/ノア= ジェフ・ブリッジス、ママ/グンヒルド王妃=ジェニファー・ティリー、デル=ジャネット・マクティア、ディケンズ=ブレンダン・フレッチャー ミッチ・カリンのファンタジー小説というテリー・ギリアム好みの原作を得て、やりたいように撮影した映画。だから、観客を選ぶ作品だ。このようなわがままな映画も、たまには良いものだ。グロテスクで悪趣味なだけの作品とみるか、空想好きな少女の目線でとらえた独創的な作品とみるか。評価は、まっぷたつに分かれるだろう。私は監督のはしゃぎぶりが面白かった。グロテスクだが、可愛い作品。 指にはめた頭だけのバービー人形を相手に、ひとり遊びを繰り返すヒロイン・ジェライザ=ローズ。ローズ役のジョデル・フェルランドは、独自の存在感を漂わせ、ずいぶんと作品を魅力的にしている。ギリアムをして「この子は普通じゃない」とまで言わしめたという逸話が残っている。父親役のジェフ・ブリッジスは、すぐ死んでしまうけれど、かっこいい。 |
ククーシュカ ラップランドの妖精 | ![]() |
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2002年作品。ロシア映画。104分。配給=シネカノン。監督=アレクサンドル・ロゴシュキン(Aleksandr Rogozhkin)。製作=セルゲイ・セリヤノフ(Sergei Selyanov)。脚本=アレクサンドル・ロゴシュキン(Aleksandr Rogozhkin)。撮影=アネドレイ・ツェガロフ(Andrei Zhegalov)。編集=ユリヤ・リュミャンツェワ(Yuliya Rumyantseva)。音楽=ドミトリ・パブロフ(Dmitri Pavlov)。アンニ=アンニ=クリスティーナ・ユーソ(Anni-Kristiina Juuso)、ヴェイッコ=ヴィッレ・ハーパサロ(Ville Haapasalo)、イワン=ヴィクトル・ブィチコフ(Viktor Bychkov) 第2次世界大戦末期のラップランド地方。フィンランド軍は奪われた土地を奪還するためドイツ軍と同盟を組みロシア軍と戦っていた。フィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコは反戦的態度がわざわいし、ドイツの軍服を着せられ岩に鎖で繋がれ置き去りにされる。反体制という濡れ衣で秘密警察に逮捕されたロシア軍大尉イワンは、護送中に味方の誤爆に遭い、重傷を負う。近くを通りかかったサーミ人のアンニは、イワンを自分の小屋へ連れ帰り手当てする。自力で脱出したヴェイッコも小屋へやって来る。 それぞれロシア語、フィンランド語、サーミ語しか話せない3人の会話は、まったくかみあわない。かみあわないどころか、誤解に誤解を重ねていく。それでも、言葉の通じない3人は奇妙な共同生活を続ける。言葉によらない交流、共存が描かれる。素朴だが、じんわりと心に染みてくるドラマ。大地に根ざしたアンニの図太さが素敵だ。 |
美しい人 | ![]() |
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2005年作品。アメリカ映画。114分。配給=エレファント・ピクチャー=ツイン=博報堂DYメディアパートナーズ。監督=ロドリゴ・ガルシア。 製作=ジュリー・リン。製作総指揮=アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。脚本=ロドリゴ・ガルシア。撮影=ハビエル・ペレス・グロベット。音楽=エド・シェアマー。カミーユ=キャシー・ベイカー、ローナ=エイミー・ブレネマン、サンドラ=エルピディア・カリーロ、マギー=グレン・クローズ、マーティン=スティーヴン・ディレイン、マリア=ダコタ・ファニング、アンドリュー=ウィリアム・フィクトナー、ホリー=リサ・ゲイ・ハミルトン、ソニア=ホリー・ハンター、リチャード=ジョー・マンテーニャ、ラリー=イアン・マクシェーン、ダミアン=ジェイソン・アイザックス、リサ=モリー・パーカー、アルマ=メアリー・ケイ・プレイス、ヴァネッサ=シドニー・ターミア・ポワチエ、ヘンリー=エイダン・クイン、ロン=ミゲル・サンドヴァル、サマンサ=アマンダ・セイフライド、ルース= シシー・スペイセク、ダイアナ=ロビン・ライト・ペン 女性を主人公にした愛と痛みをめぐる9編のオムニバス・ドラマ。最後の作品以外は、長まわしでワンシーン・ワンカットの手法を採用し、リアル感がある。そしてきめこまやかな感情の揺らぎを描き出していく。人生のある場面を切り取る手さばきは、鋭く大胆で、やさしく繊細だ。短編としても完成しているが、登場人物がゆるやかな重なっていることで、広がりや厚みを生んでいる。 どの作品にも、悲しみや切なさが凝縮されている。とりわけ、夜のスーパーマーケットで昔の恋人に再会し、過去の感情がよみがえる第2話「ダイアナ」は、痛いほどに切ない。ロビン・ライト・ペンの名演技も印象的だ。最後の「マギー」は、墓地でのグレン・クローズの静かな演技が、しみじみとした感動を運んでくる。 |
ゆれる | ![]() |
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2006年作品。日本映画。119分。配給=シネカノン。監督=西川美和。 製作=川城和実、重延浩、八木ケ谷昭次。プロデューサー=熊谷喜一。企画=是枝裕和、安田匡裕。原案=西川美和。脚本=西川美和。撮影=高瀬比呂志。美術=三ツ松けいこ。編集=宮島竜治。音楽=カリフラワーズ。照明=小野晃。録音=白取貢。早川猛=オダギリジョー、早川稔=香川照之、早川勇=伊武雅刀、早川修=蟹江敬三、岡島洋平=新井浩文、川端智恵子=真木よう子、丸尾明人検察官=木村祐一、船木警部補=ピエール瀧、裁判官=田口トモロヲ 東京で写真家として成功した猛は、母の一周忌に帰郷。ガソリンスタンドを経営している兄・稔と再会する。ガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に行くが、川に架かる細い吊り橋で、智恵子が眼下の渓流に落下。そばにいたのは稔だった。事故か事件か。裁判が始まり、兄弟の関係は、大きく変化していく。「ゆれる」という生易しいものではない。揺さぶる、えぐる激しい人間ドラマが展開する。 映像から、片時も目が離せない。牙のような言葉が飛び交うが、それ以上に無言の表情が心理的な葛藤、おののきを表現している。オダギリジョー、香川照之の演技は、長く歴史に残る。32歳の女性監督が、ここまで兄弟の屈折を的確に容赦なくえぐり出すとは。幼なじみの女性の哀れさに目もくれず、兄弟関係の深淵へと降りていくとは。第59回カンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品された。ことしの邦画の大収穫。 |
笑う大天使(ミカエル) | ![]() |
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2005年作品。日本映画。92分。配給=アルバトロス・フィルム。監督=小田一生。アクション監督=谷垣健治。プロデューサー=宮崎大、柴田一成 。原作=川原泉『笑う大天使(ミカエル)』(白泉社刊)。脚本=吉村元希、小田一生。撮影監督=岡田博文。美術=花谷秀文。衣裳=北村道子。VFX=小田一生。VFXスーパーバイザー=木村俊幸。ナレーション=広川太一郎 。司城史緒=上野樹里、司城一臣=伊勢谷友介、斉木和音=関めぐみ、更科柚子=平愛梨 お嬢様学園に転校した庶民派ヒロインの活躍を描く少女漫画の実写版だが、トンデモ映画。荒唐無稽だから悪いのではない。作品としてのまとまりがないのだ。そのひどさは「デビルマン」を連想させる。むしろ「ヘリウッド」のような確信犯的な試みなら救われたのだが。広川太一郎のナレーションも全然面白くない。監督の得意分野であるはずのCGのレベルが低すぎる。低予算と言うのではなくセンスの問題。ダミアンというアバウトなCGの犬も納得いかない。 司城一臣役の伊勢谷友介は、空回りしている。斉木和音役の関めぐみもイマイチ。このふたりは「ハチミツとクローバー」では、印象的な演技を見せている。そして主人公・司城史緒役の上野樹里。残念ながら彼女の魅力も引き出していない。コスプレとバトルシーンが満載で、工夫次第ではカルト的な作品になる可能性もあったが。残念でした。 |
ハチミツとクローバー | ![]() |
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2006年作品。日本映画。116分。配給=アスミック・エース。監督=高田雅博。プロデューサー=小川真司、今村景子、多田真穂。企画=豊島雅郎。原作=羽海野チカ(集英社/月刊「YOUNG YOU」連載中)。脚本=河原雅彦、高田雅博。撮影=長谷川圭二 。美術=中村桃子。音楽=菅野よう子。音楽プロデューサー=金橋豊彦、茂木英興。主題歌=スピッツ『魔法のコトバ』。エンディングテーマ=嵐『アオゾラペダル』。 スタイリスト=白山春久。照明=山崎公彦。整音=太斉唯夫。録音=井家眞紀夫。 絵画=MAYA MAXX(はぐみ絵画制作)。彫刻=森田太初(森田彫刻制作)。竹本祐太=櫻井翔、森田忍=伊勢谷友介、花本はぐみ=蒼井優、真山巧=加瀬亮、山田あゆみ=関めぐみ、花本修司=堺雅人、原田理花=西田尚美、藤原ルイジ(兄)=堀部圭亮、藤原マリオ(弟)=宮崎吐夢、幸田先生=銀粉蝶、修復士=中村獅童、喫茶店「風待ち通り」マスター=利重剛、刑事=春田純一、TVレポーター“イケメンハンター”=清水ゆみ、デザイナー=池田鉄洋、美術評論家=真島啓、学生=浜野謙太、原田=田辺誠一 羽海野チカ原作の少女コミックを実写映画化したもの。美大生とは思えない子どもっぽさが、最初は気になったが、中学生くらいの甘酸っぱい片思い思春期ドラマだと割り切れば、なかなか楽しめる作品だと思う。コミックのどたばたギャグを控えめにしたのも正解だ。一途な恋を描いた、懐かしい味わいの青春映画だ。 登場人物が丁寧に描かれ、俳優たちが好演している。花本はぐみ役の=蒼井優が、信じ難いほど可愛い。山田あゆみ役の関めぐみも共感できる演技。才能を持て余す森田忍役の伊勢谷友介は、見事に役にはまっていた。原田理花役の西田尚美の綺麗さにもちょっと驚いた。中村獅童の美味しい役。キャスティングの勝利だろう。輪郭がとぼけた猫もいい。 |
時をかける少女 | ![]() |
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2006年作品。日本映画。100分 。配給=角川ヘラルド映画。監督=細田守 。原作=筒井康隆 『時をかける少女』(角川文庫刊) 。脚本=奥寺佐渡子。美術監督=山本二三 。音楽=吉田潔 。キャラクターデザイン=貞本義行 。制作=マッドハウス。紺野真琴=仲里依紗、間宮千昭=石田卓也、津田功介=板倉光隆、芳山和子=原沙知絵、藤谷果穂=谷村美月、早川友梨=垣内彩未、紺野美雪=戸優希 原作は筒井康隆 『時をかける少女』となっているが、オマージュをささげた別の作品。時間を自由に行き来するタイム・リープというSF的な設定も、高校生の日常の範囲内で行われる。人類の歴史や未来という大きなテーマは、ささやかに添えられているだけだ。SF的な映像が少なく、舞台設定が小さいことに不満を覚える人もいると思う。しかし、学園ドラマを描くためだと割り切れば、欠点は魅力に変わる。 脚本の洗練さと、映像編集のキレが調和して、とてもテンポの良い、それでいて余韻に満ちた展開。この気持ちの良さは格別だ。細田守監督が、ポスト宮崎駿と言われるゆえんだろう。間の取り方、緩急の付け方が絶妙なのだ。雲の動きや河原の風景など背景画にも力を入れて、情感を盛り上げていた。 |
ゲド戦記 | ![]() |
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2006年作品。日本映画。115分。配給=東宝。監督=宮崎吾朗 。プロデューサー=鈴木敏夫 。原作=アーシュラ・K・ル=グウィン 『ゲド戦記』シリーズ(岩波書店刊)。原案=宮崎駿『シュナの旅』(徳間書店刊)。脚本=宮崎吾朗、丹羽圭子。美術監督=武重洋二 。音楽=寺嶋民哉。 主題歌=手嶌葵『時の歌』。デジタル作画監督=片塰満則 。映像演出=奥井敦。効果=笠松広司 。作画演出=山下明彦 。作画監督=稲村武志。 色彩設計=保田道世 。制作=スタジオジブリ 。整音=高木創 。挿入歌=手嶌葵 『テルーの唄』。録音演出=若林和弘 。整音監修=井上秀司。アレン=岡田准一、テルー=手嶌葵(てしま・あおい)、クモ=田中裕子、国王=小林薫、王妃=夏川結衣 、ウサギ=香川照之、ハジア売り=内藤剛志 、女主人=倍賞美津子、テナー=風吹ジュン、ゲド=菅原文太 ル=グウィンのファンタジー「ゲド戦記」をスタジオジブリが映画化。宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗の第一回監督作品。ジブリというアニメ技術集団の力量を背景に、「風の谷のナウシカ」を連想させる絵柄、過去の作品からの引用の数々と、ジブリファンが楽しめる面があることは事実だが、脚本やストーリーが、あまりにもみすぼらしい。アニメとしての躍動感や面白さにかけている。私は原作を読んでいないが、たぶん原作の美味しいところをつないだのではないかと思う。至る所で説明不足や破綻が見える。魅力よりも失敗が目立つ。 多島海世界「アースシー」。西海域の果てに棲む竜が、人間世界である東の海に現れて共食いを始める。そして世界は均衡を失い、さまさまな異変が起こり始めていた。異変の原因を探る旅に出た大賢者ゲド・ハイタカは、父王を刺して国を飛び出してきたエンラッドの王子・アレンと出会う。大きなスケールの物語が期待できる導入。しかし、ストーリーは、上滑りのまま進んでいく。生と死の関係、命の大切さというテーマを、登場人物が直接主張してしまっている。だから、物語が広がらない。心に響かない。心に響いたのは手嶌葵(てしま・あおい)の「テルーの唄」だけ。ただ手嶌葵は、声優としてはミスキャストだ。 |
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