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2004.06

 下妻物語 「下妻物語」の画像です

 2004年。日本映画。102分。配給=東宝。監督・脚本=中島哲也。原作=嶽本野ばら。音楽=菅野よう子。キャラクターデザイン=小暮真位子。企画=宮下昌幸・濱名一哉。プロデューサー=石田雄治、平野隆、小椋悟。ラインプロデューサー=鈴木ゆたか。アシスタントプロデューサー=曽根祥子・岡田有正。撮影=阿藤正一。照明=木村太朗 。美術=桑島十和子。ビジュアルエフェクト=柳川瀬雅英。編集=遠山千秋。竜ヶ崎桃子=深田恭子、白百合イチゴ=土屋アンナ、桃子の父=宮迫博之、桃子の母=篠原涼子、一角獣の龍二=阿部サダヲ、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTの社長=岡田義徳、亜樹美=小池栄子、ミコ=矢沢心、八百屋の若旦那=荒川良々、パチンコ屋店長=生瀬勝久、組の兄貴分=本田博太郎、桃子の祖母役で樹木希林


 CM的な手法がふんだんに盛り込まれ、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさが持続、最後にはぐっと感動させてしまう。何年に一度か出現する、突然変異的な傑作。この作品はカルトになる。セットも衣装も最高に面白い。こういう作品こそ、世界中で観てほしい。中島哲也監督万歳。

  それにしても、竜ヶ崎桃子役の深田恭子は、おそるべき演技力だ。白百合イチゴ役の土屋アンナも素晴らしいキャラクターだ。最初から最後までふたりは、とてもキュートで魅力的。ことしの主演女優賞、助演女優賞は、ふたりに決まりだ。ほんの少しだけ登場する小池栄子も存在感があった。


 トロイ 「トロイ」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。163分。配給=ワーナーブラザーズ。監督=ウォルフガング・ペーターゼン。原作=ホメロス。製作=ゲイル・カッツ、ウォルフガング・ペーターゼン、ダイアナ・ラスバン、コリン・ウィルソン。製作総指揮=ブルース・バーマン。脚本=デヴィッド・ベニオフ。撮影=ロジャー・プラット。音楽=ガブリエル・ヤーレ。アキレス=ブラッド・ピット、ヘクトル=エリック・バナ、パリス=オーランド・ブルーム、へレン=ダイアン・クルーガー、トロイの国王=ピーター・オトウール、メネラウス王=ブランダン・グレッソン、アガメムノン=ブライアン・コックス、ブリセウス=ローズ・バーン


 予想通り大味な出来。中途半端のまま、終わってしまった感じだ。おびただしい船と兵士、何万人もの兵隊が戦うシーン。「どうだ、すごいだろう」という声が聞こえてきそうなゆっくりと俯瞰するカメラワークに白けた。登場人物の掘り下げが弱いので、人間ドラマが深まらない。だから2時間43分の大作でも、物足りなさが残る。死亡した兵士を焼く場面は、心に焼き付いたが。

 アキレス役のブラッド・ピットは、シュワルツェネッガーばりの筋肉美。ヘクトル役エリック・バナとの決闘シーンが一番の華。性格がブレ気味のピットよりも、冷静なエリック・バナに共感した人は多いだろう。最初はひよわな王子パリス役だったオーランド・ブルームは、最後には「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラスのように弓の名手になっていた。これは、「リング」へのオマージュか。それとも偶然か。


 天国の本屋〜恋火 「天国の本屋〜恋火」の画像です

 2004年作品。日本映画。111分。配給= 松竹。監督・脚本=篠原哲雄。原作=松久淳+田中渉「天国の本屋」(かまくら春秋社刊)「恋火」(小学館刊)。脚本=狗飼恭子。撮影=上野彰吾(J.S.C)。美術=小澤秀高。照明=矢部一男。録音=岸田和美。編集=川瀬功。音楽=松任谷正隆。主題歌=松任谷由実「永遠が見える日」(東芝EMI)。長瀬香夏子・桧山翔子(2役)=竹内結子、町山健太=玉山鉄二、由衣=香里奈、サトシ=新井浩文、マル=大倉孝二、千太郎=齋藤陽一郎、長瀬妙子=かとうかずこ、長瀬郁朗=あがた森魚、オーケストラマネージャー=齋藤歩、桧山幸=香川京子、ヨネ=吉田日出子、太郎=桜井センリ、瀧本=香川照之、ヤマキ=原田芳雄、天国の喫茶店ママ=鰐淵晴子


 上質のファンタジー、大人のメルヘンである。最初は、荒唐無稽に思われた設定も、地上と天国の人たちが、意外なつながりを見せ始めると、その魅力的な物語に引き込まれていく。天国が北海道のロケというのも嬉しい。不思議な静けさと美しさに満ちた「天国の本屋のセット」も、小樽の倉庫に置かれた。

 ラストの恋する花火の場面が忘れられない。これまで、多くの映画が花火のシーンを効果的に使い、作品を盛り上げてきた。しかし、この作品ほどの至福を演出し得た例を私は知らない。大勢のエキストラを集め、本当の花火大会を開いて撮影した英断は、十分に報われている。竹内結子は、今回も素晴らしい。彼女には泣かされ通しだなあ。


 シルミド 「SILMIDO」の画像です

 2003年作品。韓国映画。135分。配給=東映。監督=カン・ウソク。プロデューサー=イ・ミンホ。原作=ペク・ドンホ。脚本=キム・ヒジェ。撮影=キム・ソンボク。照明=シン・ハクソン。録音=キム・ウォング。編集=コ・イムビョ。音楽=チョ・ヨンソク、ハン・ジェグオン。カン・インチャン(第3班長)=ソル・ギョング、ハン・サンピル(第1班長)=チョン・ジェヨン、イ・グンジェ(第2班長)=カン・シニル、ソン・ウォニ=イム・ウォニ、イ・チャンソク=カン・ソンジン、チェ・ジェヒョン空軍准尉=アン・ソンギ、チョ・ドニル空軍中士=ホ・ジュノ、パク・サングン空軍中士=イ・ジョンホン


 1971年に韓国で実際に起こった、金日成主席の暗殺計画のために結成された特殊工作部隊(684部隊)の反乱事件という史実をもとに製作された。シルミド(実尾島)という無人島に集められた死刑囚ら31人の男たちに告げられたのは「金日成主席を暗殺せよ」という衝撃的な指令。すさまじい軍事訓練に耐え抜き任務遂行の日を迎えた時、突然作戦中止命令が下る。南北情勢が変化し、暗殺計画が白紙になったばかりか、政府は部隊の存在が明らかになるのを恐れ、全員抹殺の指令を出す。

 予告編ほどの興奮が続くわけではないが、135分の間、緊張の糸が切れることはない。特に映画的な緊張感が高まるのは、部隊の抹殺指令が出てから。3年間生活をともにしてきた部隊メンバーと空軍の指導メンバーが殺しあわなければならない残酷な選択が迫られる。前半の過酷な訓練の場面が、後半の切実さを盛り上げている。結末はあまりにも救いがなく無惨で、消化できずに熱いものが胃の中に長く残る。そんな重い作品だ。しかし、映画としてのエンターテイメントも十分に備えている。韓国映画の胆力に驚く。


 21グラム 「21グラム」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。124分。配給=ギャガ・ヒューマックス。監督・製作=アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。脚本=ギジェルモ・アリアガ。撮影=ロドリゴ・プリエト。美術=ブリジット・ブロシュ。音楽=グスターボ・サンタオラヤ。衣装=マーレーナ・スチュワート。クリスティーナ=ナオミ・ワッツ、ポール=ショーン・ペン、ジャック=ベニチオ・デル・トロ、メアリー=シャルロット・ゲンズブール


 ひとつの心臓によって出会う3人の過酷な物語。心臓移植というテーマで、ここまで絶望的な展開を考えだしたギジェルモ・アリアガは、えらい。重いストーリーに加え寒々とした色調で、こちらの心も冷えてくる。劇場の冷房が効き過ぎていたわけではあるまい。

 映像は時系列に並んでいない。最初はとまどうが、じきに相互の関連が見えてくる。ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロという演技派が、ぎりぎりの演技を競い合う。演技の肉弾戦。それが頂点に達したとき、ふいに希望のほのかな光が差し込んで、物語は静かに終わる。


 
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