フリークスも人間も |
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1998年作品。ロシア映画。93分。配給=アップリンク。監督・脚本=アレクセイ・バラバノフ。撮影=セルゲイ・アスタホフ。録音=マクシム・ベロヴォロフ。編集=マリーナ・リパルチア。衣装=ナージャ・ワシリエフ。総指揮=マクシム・ボロジン。製作=セルゲイ・セリヤノフほかセルゲイ・マコヴェツキー、ディナラ・ドルカロワ、リカ・ネヴォリナ
セピア色に染めあげられた性的倒錯の世界、隠された欲望が暴かれる屈折したストーリーだが、けっして下品ではない。映像は、古典的なまでに品格がある。しかし、どこかにいかがわしさも感じさせる。一見映画や人間に対する悪意を秘めているように思えるが、それらを慈しんでいるようにも思える。不思議な宙づり感覚を味わうことができる。貴重な才能だ。
ベンゴ |
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2000年作品。スペイン・フランス映画。89分。配給=日活。監督=トニー・ガトリフ(Tony Gatlif)。オリジナル脚本=トニー・ガトリフ。脚色&セリフ=トニー・ガトリフ。撮影=ティエリー・プジェ。カメラ・オペレイター=クロード・ガルニエ。音響=レジス・ルロウ 。協力=フィリップ・ウェルシュ。編集=ポーリーン・デルー。カコ=アントニオ・カナーレス、ディエゴ=オレステス・ビリャサン・ロドリゲス、いとこのアレハンドロ=アントニオ・ペレス・デチェント、いとこのアントニオ=ボボーテ、いとこのトレス=フアン・ルイス・コリエンテス、フェルナンド・カラバカ=フェルナンド・ゲレロ・レボリョ、フランシスコ・カラバカ=フランシスコ・チャベロ・リオス、カラバカ家のいとこたち= ホセ・ラミレス・エル・チェリ、フアン=ルイス・バリオス・リョレンテ、ヘスス・マリア・ベントゥラ 、ペペ・サルディナ=エル・モロ、アンセルモ=マヌエル・ベガ・サラサル、ラ・カタラナ=マリア・ファラコ、アルマ=ナスターシャ・マイギーン、ラ・コネハ=マリア・アルテア・マヤ&トマティート、シャイフ・アマド・アル・ トゥニ、ラ・カイータ、 グリトス・デ・ゲラ、レメディオス・シルバ・ピサ、ラ・パ ケーラ・デ・ヘレス
ストーリーは、「ゴッド・ファーザー」を連想させるファミリーの血なまぐさい対立が基本になっているが、映像からわきあがるような数々のフラメンコのシーンこそ、この作品の華である。フラメンコとスーフィー音楽の出会いという素晴らしい冒頭シーンから、フラメンコが多彩な文化と共存し、吸収してきたことを見事に示している。「ラブユー東京」がフラメンコと化す衝撃の場面も、この文脈からすれば、当然の流れだ。映画を観た後、CDを買いに走ったのは、言うまでもない。
千と千尋の神隠し |
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2001年作品。日本映画。125分。配給=東宝。製作総指揮=徳間康快。原作・脚本・監督=宮崎駿。 音楽=久石譲。主題歌=木村弓「いつでも何度でも」。作画監督=安藤雅司。美術監督=武重洋二。プロデューサー=鈴木敏夫。製作=スタジオジブリ 。千尋=柊瑠美、ハク=入野自由、湯婆婆=夏木マリ、千尋の父=内藤剛志、千尋の母=沢口靖子、青蛙=我修院達也、釜爺=菅原文太、番頭台=大泉洋
うすっぺらで、つかみどころのない現代を生きざるをえない子どもたちに、歴史と文化の豊かさを示そういう宮崎監督の熱い思いに嘘はないだろう。日本のみならず、世界の多彩なファンタジーを、未消化を顧みずに盛り込んだ意図も分かる。妄想に近い奔放なイマジネーションの世界は、眠っていた想像力を刺激する。これまでの宮崎アニメの凛とした緊張感はいくぶん失われたが、新しい歩みを始めたということなのだろう。
レクイエム・フォー・ドリーム |
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2000年作品。アメリカ映画。102分。配給:ザナドゥー。監督・脚本=ダーレン・アロノフスキー(Darren Aronofsky)。原作・脚本=ヒューバート・セルビーJr.(原作「夢へのレクイエム」)。撮影=マシュー・リバティーク。編集=ジェイ・ラヴィノウィッツ。美術=ジェイムズ・チンランド。衣装=ローラ・ジーン・シャイン。音楽=クリント・マンセル。演奏(弦楽四重奏)=クロノス・クァルテット。サラ・ゴールドファーブ=エレン・バースティン、ハリー・ゴールドファーブ=ジャレッド・レト、マリオン・シルヴァー=ジェニファー・コネリー(Jennifer Connelly)、タイロン・C・ラヴ=マーロン・ウェイアンズ
クロノス・クァルテットの音楽と映像が見事な相乗効果を上げ、登場人物も生き生きとしている。独創的な映像処理も効果的だ。作品としての出来は、高く評価していいだろう。しかし、私にとっては「π(パイ)」の衝撃の方がはるかに大きかった。この作品も、容赦のないいたぶりに満ちているが、本当に吐きそうになったのは「π(パイ)」の方だ。
トゥルーシズ・エイ・ストリーム |
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1999年作品。日本映画。182分。製作・配給=アート・オブ・ウイズダム。監督・脚本・美術・音楽・編集・製作=槌橋雅博。撮影=中本憲政。音楽=掘越昭宏。美術=久野浩志。橘響子=山下葉子、冴木峻一=馬野裕朗、折原智美=中江絵美、樋口香織=中村優子、折原徹=河田義市
槌橋雅博監督の頑固さに貫かれた、それでいてしなやかな映像は、そのまま生きるスタイルを提示しているかのようだ。言葉と映像と音とが、響きあい、調和しつつ争っている。映画の独自のリズムに乗れば、圧倒的な強度に全身が共振する。希有な体験。そう映画を体験するという近年忘れかけた機会にめぐり合えた。
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