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2005.6


 美しい夜、残酷な朝 「美しい夜、残酷な朝」の画像です

 2004年作品。香港=日本=韓国共同製作。124 分。配給=角川映画=エンジェル・シネマ。監督=三池崇史 「box」、パク・チャヌク「cut」、フルーツ・チャン(Fruit Chan)「dumplings」。製作=ピーター・チャン(Peter Chan)「dumplings」。撮影= 川上皓市「box」、ジョン・ジョンフン「cut」、クリストファー・ドイル(Christopher Doyle)「dumplings」。脚本=Haruko Fukushima「box」、パク・チャヌク「cut」、リリアン・リー「dumplings」。「box」=長谷川京子、渡部篤郎。「cut」=イ・ビョンホン、カン・ヘジョン、イム・ウォニ。「dumplings」=ミリアム・ヨン(Miriam Yeung)、バイ・リン(Bai Ling)、レオン・カーフェイ(Leung Kar-fai)。


 日本・韓国・香港の共同製作で手掛けられたオムニバス。3人の奇才監督が、それぞれの世界観で人間の愛憎、狂気、欲望を描く。そこまでやるかと思う作品ばかり。グロテスクと美がせめぎあう映像体験だ。

 フルーツ・チャン監督の香港篇「dumplings」が、もっともインパクトがあった。リー夫人(ミリアム・ヨン)は事業家の夫(レオン・カーファイ)と結婚したが、夫は若い愛人に夢中になっている。ふたたび若さを取り戻すため、大陸からやってきた女メイ(バイ・リン)が作る美と若さの特製餃子を食べ続ける。その餃子の中身は...。目新しくはないが、ミリアム・ヨンが美しい餃子を食べるときの、軟骨を砕くような咀嚼音が怖い。恍惚とした顔が怖い。ミリアム・ヨンの熱演とともに、バイ・リンの名演技も光る。バイ・リンは、秘密に撮影したヘアヌード写真を、「スター・ウォーズ エピソード3」の公開に合わせるようにアメリカの雑誌「PLAYBOY」6月号に掲載。ジョージ・ルーカス監督ら製作サイドの逆りんに触れ「スター・ウォーズ エピソード3」出演全シーンがカットされたことでも、有名。

 パク・チャヌク監督の韓国篇「cut」は、一番派手な展開。若手映画監督のリュ・ジホ(イ・ビョンホン)を、エキストラしていた男が破滅させるという展開。かなりのエグさと強引さ。イ・ビョンホンも甘いイメージをぶち壊す演技だったが、妻役のカン・ヘジョンも信じられない汚れ役。三池崇史監督の「box」は、正直失望した。一番力がない。ラストもお笑いになっている。いろいろと仕掛けをこらしてはいるが、物語が破たんしている。このテーマでの長谷川京子の主演は無理がある。


 スター・ウォーズ エピソード3
シスの復讐
 
「スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐」の画像です

 2005年作品。アメリカ映画。141分。配給=FOX。監督・製作総指揮・脚本=ジョージ・ルーカス(George Lucas)。製作=リック・マッカラム(Rick McCallum)。撮影=デヴィッド・タッターサル(David Tattersall)。プロダクションデザイン=ギャヴィン・ボケ(Gavin Bocquet)。衣装デザイン=トリーシャ・ビッガー(Trisha Biggar)。編集=ロジャー・バートン(Roger Barton)。音楽=ジョン・ウィリアムズ(John Williams)。オビ=ワン・ケノービ=ユアン・マクレガー(Ewan McGregor)、パドメ=ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)、アナキン・スカイウォーカー=ヘイデン・クリステンセン(Hayden Christensen)、ドゥークー伯爵=クリストファー・リー(Christopher Lee)、メイス・ウィンドゥ=サミュエル・L・ジャクソン(Samuel L. Jackson)、ヨーダ=フランク・オズ(Frank Oz)、パルパティーン最高議長=イアン・マクディアミッド(Ian McDiarmid)、ベイル・オーガナ元老員議員=ジミー・スミッツ(Jimmy Smits)、C-3PO=アンソニー・ダニエルズ(Anthony Daniels)、R2-D2=ケニー・ベイカー(Kenny Baker)、チューバッカ=ピーター・メイヒュー(Peter Mayhew)、ジャー・ジャー・ビンクス=アーメッド・ベスト(Ahmed Best)、マス・アメダ=デヴィッド・バワーズ(David Bowers)、ルーウィー・ナベリー=グレーム・ブランデル(Graeme Blundell)、キ=アディ=ムンディ&ヌート・ガンレイ=サイラス・カーソン(Silas Carson)、マレ=ディー=キー・チャン(Kee Chan)、オーウェン・ラーズ=ジョエル・エドガートン(Joel Edgerton)


 2005年6月25日は、歴史的な日だ。「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」の先先行上映。その初回に、多くのファンとともに観ることができた。今回も、驚異的な俯瞰シーンをはじめ、一切の手抜きを拒絶しとことん描き尽くしている。ひとつひとつがデザイン的にも素晴らしい。震えるような感銘を受ける。物語的には、すべてのつじつまが合う快感に浸った。神話的叙事詩が完結する。

 マグマの上でのアナキンとオビ=ワン・ケノービの最後の決戦シーンは、まぎれもなく歴史に残る場面だった。最初から、戦闘シーンの連続。ヨーダは「エピソード2」以上にかっこいい。CGレベルも最高だ。地味に見えながら肝心なところで活躍しているのがR2-D2。最大の功績者かもしれない。

 ジョージ・ルーカス監督は、長年あたためていた壮大なドラマを着実に映像化している。そして、その中に巧みに現在のアメリカのあり方への批判を折り込んでいる。普遍的でありながら、現代的である。その監督の姿勢は、別の意味で感動的だった。

 素晴らしいシリーズ完結作であることは間違いない。しかし、疑問な点がないわけではない。最大のなぞは、何故アナキンがあっさりオビ=ワン・ケノービとの闘いに負けたのかだ。ジェダイたちが、あっけなく殺されていく場面もふに落ちない。時間が限られていたためか。

 上映時間141分だから「エピソード2」と、ほぼ同じ長さ。「エピソード2」でも感じたが、「エピソード3」も、かなり展開を急ぎ過ぎている。今回は、3時間かけて、ゆっくりと描いてもらいたかった。「ロード・オブ・ザ・リング」のようにスペシャル・エディションが登場するのだろうか。


 バットマン ビギンズ 「バットマン ビギンズ」の画像です

 2005年作品。アメリカ映画。140分。配給=ワーナー。監督=クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)。製作=ラリー・J・フランコ(Larry J. Franco)、チャールズ・ローヴェン(Charles Roven)、エマ・トーマス(Emma Thomas)。製作総指揮=ベンジャミン・メルニカー(Benjamin Melniker)、マイケル・E・ウスラン(Michael E. Uslan)。キャラクター創造=ボブ・ケイン(Bob Kane)。原案=デヴィッド・S・ゴイヤー(David S. Goyer)。脚本=クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)、デヴィッド・S・ゴイヤー(David S. Goyer)。撮影=ウォーリー・フィスター(Wally Pfister)。プロダクションデザイン=ネイサン・クロウリー(Nathan Crowley)。衣装デザイン=リンディ・ヘミング(Lindy Hemming)。編集=リー・スミス(Lee Smith)。音楽=ジェームズ・ニュートン・ハワード(James Newton Howard)、ハンス・ジマー(Hans Zimmer)。ブルース・ウェイン/バットマン=クリスチャン・ベイル(Christian Bale)、アルフレッド=マイケル・ケイン(Michael Caine)、ヘンリー・デュガード=リーアム・ニーソン(Liam Neeson)、ルシウス・フォックス=モーガン・フリーマン(Morgan Freeman)、ゴードン警部補=ゲイリー・オールドマン(Gary Oldma)、ラーズ・アル・グール=渡辺謙(Ken Watanabe)、レイチェル地方検事補=ケイティ・ホームズ(Katie Holmes)


 ティム・バートン監督の「バットマン」「バ ットマン・リターンズ」は、重苦しい近未来の雰囲気の下でどきつい毒を持つ敵とバットマンの憂鬱が、独特の世界を築いていた。バートン監督からバトンタッチしたジョエル・シュマッカー監督の「バットマン フォーエヴァー」「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」は、派手なコスチューム合戦に変質していった。バットマンもロビン、バット・ガールという仲間を得て孤独ではなくなった。そして8年。「バットマン ビギンズ」は、深い心の傷を持つバットマンという原点に返った。しかし、あまりにも重苦しい。荒唐無稽な派手さがない。すべてを理詰めで進めていけば、面白くなるというわけではない。真面目なだけでは、かえってしらける。しょせんは大富豪ゆえに可能な「お遊び」なのだから。

 クリスチャン・ベイル演じるバットマンは堅い。強いがスマートさが足りない。レイチェル役のケイティ・ホームズは、地方検事補が似合わないばかりか、ヒロインとしての魅力も感じない。渡辺謙が演じた悪役ラーズ・アル・グールは、中途半端に奇妙。もっと派手な忍者で登場してほしかった。リーアム・ニーソンも地味で悪役になり切れていない。一方、近年ひねった役が多かったゲイリー・オールドマンは、普通の警官を淡々と演じて新鮮だった。マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンは、いつもながら演技に艶がある。


 キングダム・オブ・ヘブン 「キングダム・オブ・ヘブン
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 2005年作品。アメリカ映画。145 分。配給=FOX。監督・製作=リドリー・スコット(Ridley Scott)。製作総指揮=リサ・エルジー、ブランコ・ラスティグ、テリー・ニーダム。脚本=ウィリアム・モナハン。撮影=ジョン・マシソン。美術=アーサー・マックス。衣装デザイン=ジャンティ・イェーツ。編集=ドディ・ドーン。音楽=ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。スペシャルエフェクト・スーパーバイザー=ニール・コーボールド。バリアン・オブ・イベリン=オーランド・ブルーム(Orlando Bloom)、シビラ=エヴァ・グリーン(Eva Green)、ゴッドフリー・オブ・イベリン=リーアム・ニーソン(Liam Neeson)、ティベリアス=ジェレミー・アイアンズ(Jeremy Irons)、エルサレム王ボードワン4世=エドワード・ノートン(Edward Norton)、 ザ・ホスピタラー=デヴィッド・シューリス(David Thewlis)、ルノー・ド・シャティヨン=ブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson) ギー・ド・リュジニャン=マートン・ソーカス(Marton Csokas)、サラディン=ハッサン・マスード(Ghassan Massoud)


 物語の展開はときに荒削りな印象も与えるが、ハイセンスな映像は揺るぎない。残酷な戦火の映像からは監督の嘆きが聞こえる。キリスト教徒とイスラム教徒が共存しているエルサレムという設定には、祈りが込められている。作品の完成度では「グラディエーター」には及ばないかもしれないが、監督の真摯な気迫と現実批判の鋭さという点では、この作品が上だ。イスラム教指導者サラディンの礼節と気高さをしっかりと描ききっている。監督の礼節だろう。ただ、恋愛劇という側面は物足りない。エヴァ・グリーンが残念がったのも無理はない。

 民の命を何よりも大切にする主人公バリアンをオーランド・ブルームが演じた。彼の誠実さと知性が生かされた配役だ。少しぎこちないが、空回りはしていない。王女シビラ役のエヴァ・グリーンは、運命に耐える気高さを好演。不思議な美しさに魅せられる。終始仮面を付けて演じたエルサレム王ボードワン4世役のエドワード・ノートンが、抜群の演技を見せる。聖職者・ホスピタラー役デヴィッド・シューリスも奥が深い演技だった。サラディンを演じたハッサン・マスードはいぶし銀の味わい。


 ミリオンダラー・ベイビー 「ミリオンダラー・ベイビー
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 2004年作品。アメリカ映画。133 分。配給=ムービーアイ=松竹。監督=クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)。製作=クリント・イーストウッド、ポール・ハギス、トム・ローゼンバーグ、アルバート・S・ラディ。製作総指揮=ロバート・ロレンツ、ゲイリー・ルチェッシ。原作=F・X・トゥール『テン・カウント』(早川書房)。脚本=ポール・ハギス。撮影=トム・スターン。美術=ヘンリー・バムステッド。編集=ジョエル・コックス。音楽=クリント・イーストウッド。フランキー・ダン=クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)、マギー・フィッツジェラルド=ヒラリー・スワンク(Hilary Swank)、エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス=モーガン・フリーマン(Morgan Freeman)、ビッグ・ウィリー=マイク・コルター(Mike Colter)、アーリーン・フィッツジェラルド=マーゴ・マーティンデイル(Margo Martindale)


 アカデミー賞で作品賞をはじめ主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞。危うさはあるが、悪い作品ではない。私は「ミスティック・リバー」よりも評価する。無駄のない展開や印象的な会話が素晴らしいからではない。慎重なはずのクリント・イーストウッドが、マギーの家族のひどさをあまりにも誇張して描き、宗教的な論争が起きるであろうラストシーンをあえて選んだ「脇の甘さ」に、ほっとしたからだ。 冷徹と感傷、崇高とあざとさが紙一重で共存している。

 マギーを演じたヒラリー・スワンクの演技を超えた演技は、鬼気迫るものがある。物語の展開とともに鍛えられていく身体。ボクシングも上達していく。そして、試合で鼻骨を折られたり、自分の舌を咬み切ったりするシーンは、スプラッターのようにすさまじい。フランキー・ダン役のクリント・イーストウッドも、枯れた演技に収まらない熱情をみせた。

 


 
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