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 DEAD END RUN  「DEAD END RUN」の画像です

 2003年作品。日本映画。59分。5.1chリニア、ドルビー・デジタル。配給=パイオニアLDC、東北新社。監督=石井聰互。製作=長澤佳也。脚本=浦辻純子。撮影=猪本雅三。照明=松隅信一。美術=須坂文昭。音楽=小野川浩幸。サウンド・ミキサー=大川正義。音響効果=小川高松。衣装=北村道子。振付=畠山慎一。タイトルデザイン=中島英樹。プロデューサー=長澤佳也。「LAST SONG」=伊勢谷友介、粟田麗「SHADOWS」=永瀬正敏、ロバート・ハリス「FLY」=浅野忠信、市川実日子、國村隼、田中要次、光石研


 冒頭から音響の凄まじい迫力に圧倒される。非圧縮音源による5.1chリニアサラウンド。初期の石井聰互監督を思わせる暴れ回る映像と共振し、VJ的な映像が展開される。 このまま暴力的に突き進むのかと思っていると、静けさとともに不思議な世界に連れ込まれる。

 3話構成で、走る男が登場するという共通性はあるものの、ストーリーはゆるくつながっているだけ。「LAST SONG」の思わぬ叙情に「SHADOWS」の無気味な笑いが続き、「FLY」のコメディタッチの軽さで締めくくる。「LAST SONG」の意外性、動と静の対比がもっとも印象的だった。2話、3話と後半に進むほど、緊張感がゆるんでくる。「FLY」の結末は、蛇足だと思う。

 


 キル・ビルVol.1  「キル・ビル1」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。113分。配給=ギャガ・コミュニケーションズ。製作・監督・脚本=クエンティン・タランティーノ。製作=ローレンス・ベンダー。アクション・コーディネーター=ユエン・ウーピン。美術=種田陽平。アニメーション=プロダクションIG(中沢一登監督)。撮影監督=ロバート・リチャードソン。ザ・ブライド=ユマ・サーマン、オーレン・イシイ=ルーシー・リュー、エル・ドライバー=ダリル・ハンナ、ビル=デヴィット・キャラダイン、服部半蔵=千葉真一、GOGO夕張=栗山千明


 深作欣二監督に捧げられている。血潮以上に映画へのオマージュがあふれ、日本映画への敬愛が込められている。独創と模倣の奇跡的な融合、A級を笑い飛ばすB級テイスト、血に彩られた並外れたアクションの連続。過剰なまでの熱気をはらんだこの作品の誕生は、一つの事件だろう。中沢一登監督が手掛けたオーレン・イシイの生い立ちを描いたアニメのテンションの高さに驚かされ、栗山千明演じるGOGO夕張(!!)とザ・ブライドのアイデアに満ちた対決シーンの魅力に心がわきたった。

 復讐劇というのは、高水準の闘いをみせるための枠組みに過ぎない。タランティーノが観たいと思っているアクションシーンを私たちも楽しめば良い。ザ・ブライドが北野武の座頭市以上に強すぎるという点や、飛行機の座席にむき出しの日本刀を持ち込んでいる点(本当にアメリカ映画か?)など、突っ込みどころは多いが、それもタランティーノ流のお遊びだ。タランティーノ・ワールドで盛り上がればいいのだ。Vol.2が半年も先というのも、続きを半年待ちわびた昔の冒険活劇のノリだろう。


 フレディVSジェイソン  「フレディVSジェイソン」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。98分。配給=日本ヘラルド映画。監督=ロニー・ユー(Ronny Yu)。製作=ショーン・S・カニンガム。製作総指揮=ロバート・シェイ。フレディ原案=ウェス・クレイヴン。ジェイソン原案=ヴィクター・ミラー。脚本=ダミアン・シャノン(Damian Shannon)、マーク・スウィフト(Mark Swift)。撮影=フレッド・マーフィ。音楽=グレアム・レヴェル(Graeme Revell)。特殊メイク=ビル・テレザキス。プロダクション・デザイン=ジョン・ウィレット。衣装=グレゴリ―・B・マー。フレディ・クルーガー(Freddy Krueger)=ロバート・イングランド(Robert Englund)、ジェイソン・ボーヒーズ(Jason Voorhees)=ケン・カージンガー(Ken Kirzinger)、ロリー=モニカ・キーナー(Monica Keena)、ウィル=ジェイソン・リッター、キア=ケリー・ローランド、ギブ=キャサリン・イサベル、マーク=ブレンダン・フレッチャー、リンダマン=クリス・マークエット、スタッブス代議員=ロックリン・マンロー


 エルム街の大人たちは、子供たちに夢を抑制する薬を飲ませ、過去の事件を封印して、フレディの存在を忘れさせていた。危機感を覚えたフレディは、ジェイソンの夢を操り、ジェイソンを復活させ、エルム街の子供たちを殺させることで、人々に自分の存在を思い出させようとする。しかしジェイソンは次々に子供たちを襲い、フレディの獲物を殺しまくる。計画通りに運ばなくなったので、フレディはジェイソンの暴走を止めようとする。ジェイソンはフレディの策略に気づく。ふたりの壮絶な闘いが展開される。

 いやあ。見ごたえがありました。夢の世界のフレディと現実世界のジェイソンを闘わせるアイデアが鮮やか。後半では、これでもかというくらい濃厚な二人の戦闘シーンが続く。テンポが速すぎるきらいはあるものの、脚本は良くできていた。無機質な殺人マシーン化していたジェイソンの悲しい過去が明らかにされ、珍しくジェイソンに感情移入できる。そして少女の活躍によって、一応のラストを迎える。二人のスター(?)に圧されながらも、人間の怒りの底力を見せる当たり、映画のツボも心得ている。最初と最後のタイトルクレジットも切れが良い。そしてパンフレットの内容も濃かった。


 リーグ・オブ・レジェンド  「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」の画像です

 2003年作品。アメリカ・ドイツ合作。110分。配給=20世紀フォックス。監督=スティーヴン・ノリントン(Stephen Norrington)。製作=ドン・マーフィ、トレバー・アルバート。製作総指揮=ショーン・コネリー、マーク・ゴードン。原作=アラン・ムーア、ケヴィン・オニール。脚本=ジェームズ・デイル・ロビンソン。撮影=ダン・ラウストセン。プロダクション・デザイナー=キャロル・スピア。編集=ポール・ルーベル。衣裳デザイン=ジャクリーン・ウエスト。音楽=トレバー・ジョーンズ。視覚効果スーパーバイザー=ジャネク・シルス。アラン・クォーターメイン(冒険家)=ショーン・コネリー(Sean Connery)、ドリアン・グレイ(不死身の男)=スチュアート・タウンゼント(Stuart Townsend)、ミナ・ハーカー(吸血鬼)=ペータ・ウィルソン(Peta Wilson)、トーマス・“トム”・ソーヤー=シェーン・ウエスト(Shane West)、ロドニー・スキナー(透明人間)=トニー・カラン(Tony Curran)、Dr.ヘンリー・ジキル/Mr.エドワード・ハイド=ジェイソン・フレミング(Jason Flemyng)、キャプテン・ネモ=ナサーラディン・シャー(Naseeruddin Shah)、M=リチャード・ロクスバーグ(Richard Roxburgh)、ダンテ=マックス・ライアン、サンダーソン・リード=トム・ゴールドマン=ヒル、ナイジェル=デイビッド・ヘミングス、イシュメイル=テリー・オニール


 「ブレイド」のスティーヴン・ノリントン監督の待ちに待った新作。19世紀に生まれた架空の有名ヒーロー(?)7人が協力し、20世紀を象徴する悪と戦うという驚くべきファンタスティック・アクション・アドベンチャー。あまりの荒唐無稽さに笑い出したくなるような設定を生かし、畳み掛けるようなサービス満点の展開。映像はアクションシーンに移ると動きが急になるので、動体視力が試される。

 とにかく展開が早い。クライマックスの連続のような派手なシーンが続く。それでいて、時代の移り変わり、ヒーローたちの個性や苦悩をさりげなく描いている。車やノーチラス号の意匠も凝っていた。娯楽作ながら、文明論的な構図は、なかなか骨太。19世紀をじっくり描き、ドリアン・グレイらの生きざまを盛り込んで150分くらいの長さにすれば、味わい深い作品に仕上がったかもしれない。しかし、次から次へと繰り出される趣向を楽しむタイプの作品にしたので、物語が随分と軽くなった。

 この作品、撮影方法で主演のショーン・コネリーとスティーブン・ノリントン監督が衝突。編集段階でも意見が対立し、エグゼクティブ・プロデューサーであるコネリーの意見が採用されたそう。二人の対立関係は、プレミア上映で監督が欠席するという事態になったそう。会見でショーン・コネリーは「この映画で一緒に仕事をした彼以外の人は、みんな素晴らしかった」とノリントン監督を批判したと伝えられている。それでも、作品は面白い。


 マッチスティック・メン  「マッチスティック・メン」の画像です

 2003年作品。アメリカ映画。116分。配給=ワーナーブラザース。監督=リドリー・スコット。製作=ジャック・ラプキ、リドリー・スコット、スティーブ・スターキー、ショーン・ベイリー、テッド・グリフィン。脚本=ニコラス・グリフィン&テッド・グリフィン。原作=エリック・ガルシア。製作総指揮=ロバート・ゼメキス。撮影=ジョン・マシソン,B.S.C。美術=トム・フォーデン。編集=ドディー・ドーン,A.C.E。共同製作=チャールズ・J・D・シュリッセル、ジャニーナ・ファシオ。音楽=ハンス・ジマー。衣装=マイケル・カプラン。ロイ・ウォラー=ニコラス・ケイジ、フランク=サム・ロックウェル、アンジェラ=アリソン・ローマン、ドクター・クライン=ブルース・アルトマン、チャック・フレシェット=ブルース・マッギル、キャシー=シーラ・ケリー


 リドリー・スコットが、コミカルタッチの詐欺映画に挑戦した。新しい分野というだけでなく、タッチもがらりと変わった。映像の質感が軽やかで、ニコラス・ケイジが演じる「超潔癖性の詐欺師」の悪戦苦闘ぶりを、肩の力を抜いたまま、楽しむことができる。そして、二転、三転するラストに、うなった。絶妙の落とし所。うまい。よく練り上げられた素晴らしい脚本だ。

 大どんでん返しがあるので、ネタばらしは避ける。最初から展開が分かってしまっていると、かなり白けるから。しかし、本当のどんでん返しは、悲劇に見えていた展開が、実はハッピーエンドであったという結末だ。この視点の転換は味わい深い。14歳のアンジェラを演じたアリソン・ローマンは24歳。どうみても15歳前後の表情をしている。表面的な若作りではなく、雰囲気そのものがティーンなのだ。驚くべき演技派である。


 

 


 
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