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2005.2

 マシニスト 「マシニスト」の画像です

 2003年作品。スペイン=アメリカ合作。102 分。配給=東芝エンタテインメント。監督=ブラッド・アンダーソン(Brad Anderson)。製作=フリオ・フェルナンデス。脚本=スコット・コーサー。撮影=シャビ・ヒメネス。音楽=ロケ・バニョス。トレヴァー=クリスチャン・ベイル(Christian Bale)、スティービー=ジェニファー・ジェイソン・リー(Jennifer Jason Leigh)、マリア=アイタナ・サンチェス=ギヨン(Aitana Sanchez-Gijon)、アイバン=ジョン・シャリアン(John Sharian)、ミラー=マイケル・アイアンサイド(Michael Ironside)


 とにかく薄気味の悪い作品だ。機械工のトレヴァーは、極度の不眠症で1年間ほとんど眠れずにいた。ある日、新入りの溶接工アイバンに気を取られて、仲間の腕を機械に巻き込む大事故を起こしてしまう。しかし上司や同僚は、アイバンという男は存在しないと口をそろえる。自宅の冷蔵庫には、身に覚えのない首吊りゲームの絵が張られていた。不気味な出来事が頻発しはじめる。不眠症でがりがりにやせたトレヴァーをクリスチャン・ベイルが演じている。医学的に減量可能な限界まで30キロも体重を落として役に挑んだ。すさまじい。

 クリスチャン・ベイルの役者魂は認めるが、不気味に謎が増幅していくと、さてどんな種明かしが待っているのかと、期待も膨らんでいく。映像の不気味な雰囲気は評価するが、結末はあまりにもあっけない。謎解きになっていない。不眠症による妄想で片付けられてはたまらない。結末はもっと「マシニスト」!


 ビフォア・サンセット 「ビフォア・サンセット」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。80分。配給=ワーナー・ブラザース映画。監督=リチャード・リンクレイター(Richard Linklater)。製作=リチャード・リンクレイター、アン・ウォーカー=マクベイ。製作総指揮=ジョン・スロス。原案=リチャード・リンクレイター、キム・クリザン。脚本=リチャード・リンクレイター、ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク。撮影=リー・ダニエル Lee Daniel。編集=サンドラ・アデア Sandra Adair。ジェシー=イーサン・ホーク(Ethan Hawke)、セリーヌ=ジュリー・デルピー(Julie Delpy)、書店主=ヴァーノン・ドブチェフ(Vernon Dobtcheff)、ジャーナリスト1=ルイーズ・レモワン・トレス(Louise Lemoine Torres)、ジャーナリスト2=ロドルフ・ポリー(Rodolphe Pauly)、ウエイトレス=マリアン・プラズテーグ(Mariane Plasteig)


 私は前作「恋人までの距離<ディスタンス>」(1995年)を観ていないが、それでも素晴らしい会話劇をたんのうできた。派手な仕掛けの作品ばかりが映画ではない。このようなウイットに富んだ作品に出会うのも映画の醍醐味だ。9年ぶりに再会した2人が、別れの時間までの85分間にとりとめのない会話を交わしながら、徐々にそれぞれの思いを打ち明け始める。恋愛だけではなく、政治、人生にまで話題は広がる。前向きな生き方をしている2人にも押し寄せている現代の生き難さの感覚に、生々しいリアルさを感じた。イーサン・ホーク、ジュリー・デルピーとも、膨大な会話をこなしているが、とりわけジュリー・デルピーの熱演は感動的だ。

 どきどきしながら結末はどうなるのだろう、と思っていたら、何とも粋な終わり方。会話だけで、こんなにも感激する作品ができるのだとあらためて感心した。「恋人までの距離<ディスタンス>」を観てから、この作品を観賞した人は、もっと感激したと思う。うらやましい。さらに続編がつくられたら、最高。しかし前作が「BEFORE SUNRISE」で、今回が「BEFORE SUNSET」だから、続編はどんな題名になるのだろう。


 オペラ座の怪人 「オペラ座の怪人」の画像です

 2004年作品。 アメリカ映画。143分 。配給=ギャガ・ヒューマックス共同。製作・作曲・脚本=アンドリュー・ロイド=ウェバー(Andrew Lloyd-Webber)。監督・脚本=ジョエル・シュマッカー(Joel Schumacher)。原作=ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」。製作総指揮=ポール・ヒッチコック、オースティン・ショウ。美術=アンソニー・プラット。共同製作=エリ・リッチバーグ。撮影=ジョン・マシソン。キャスティング・ディレクター=デビッド・グリンドロッド C.D.G.。音楽共同製作=ナイジェル・ライト。音楽スーパーバイザー、指揮=サイモン・リー。振付=ピーター・ダーリング。衣装=アレキサンドラ・バーン。編集=テリー・ロウリングA.C.E.。ヘアメイク=ジェニー・シャーコア。ファントム=ジェラード・バトラー(Gerard Butler)、クリスティーヌ=エミー・ロッサム(Emmy Rossum)、ラウル=パトリック・ウィルソン(Patrick Wilson)、マダム・ジリー=ミランダ・リチャードソン(Miranda Richardson)、カルロッタ=ミニー・ドライヴァー(Minnie Driver)、フィルマン=シアラン・ハインズ(Ciaran Hinds)、アンドレ=サイモン・キャロウ(Simon Callow)、メグ・ジリー=ジェニファー・エリソン(Jennifer Ellison)


 あまりにも有名なミュージカルの傑作「オペラ座の怪人」の映画化。総勢100人のフルオーケストラで奏でられるメロディは、確かに迫力がある。映画ならではの華麗さも認める。ストーリーも音楽も素晴らしいのは当たり前。映画としての新しい魅力がなければ、映画化の意味は乏しい。舞台は高くて何時でも見ることはできないが、映画ならDVDで何時でも見ることができる。だから映画化というのは、違うのではないか。

 私は、映画として印象が薄いと感じた。特に中盤は単調に思えた。歌はそれなりに上手かったが登場人物の切ない思いが、あまり心に響かなかった。何もかも、謎を明らかにしてしまう脚本もいただけない。ホラー的な要素ではなく、活劇的に味付けするのなら、シャンデリアの落下シーンなどは、もっと派手に演出すべきだ。ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」の方が、はるかに面白い。


 シネマ秘宝館in札幌2 「シネマ秘宝館in札幌2」の画像です

 シネマ秘宝館in札幌2が、2月5日「シネマカフェ」(札幌市南2西2富樫ビルB1F)で開かれた。アルコールを含むフリードリンク制でスナックも付いて1500円。食べながら、飲みながら映画を楽しむというシネマ秘宝館のスタイルが札幌でも実現した。凝ったタイトルで始まり、斎藤館長と中村犬蔵さんの司会で進行。第1部「斎藤館長のバカ歌謡曲レコードコンサート」は、時間は短かったが参加者の心をしっかりつかんだ。

 第2部「超短編&秀作大集合!」は、ふみはあとスタジオ制作の「森の番人・魚様」「とびうおカックン」「かものはし」ら作品に爆笑。4月に新宿で開催される「シネマ秘宝館26ロボまつり」公開に先駆けCG作品「ロボレンジャー」(前野健一監督)も先行上映した。特に「絶対無双麻雀マン」(山岸剛志監督)の技術力とセンスに驚いた。

 第3部「アクション映画特集」はガンアクション「イリーガル小学生」(太田文平監督)、派手すぎるテーマとCGの「ファイティング八漬くん4〜THE TOKYO WARS」(池田健一郎監督)、本格カンフーアクション「ミュージックドラゴン」(笠原大監督)は、それぞれ個性的な作品に仕上がっていた。

 第4部「禁断の大バカ作品一挙上映」では、まず中村犬蔵&捏造さん特集に圧倒される。デンキネコも良いが、既存の映像を駆使したパロディ作品には、死ぬほど笑わされた。編集ビデオ作品タクラビジョン来襲も、懐かしさと可笑しさに時間を忘れた。「戦え!サザエさん」の爆破シーンに驚嘆し、斎藤館長作の皮肉の効いた「セカチュー」で締めくくった。4時間半が、あっという間に過ぎた。


 レイ 「レイ」の画像です

 2004年作品。アメリカ映画。152分 。配給=UIP。監督=テイラー・ハックフォード(Taylor Hackford)。製作=ハワード・ボールドウィン、カレン・エリス・ボールドウィン、スチュアート・ベンジャミン、テイラー・ハックフォード。製作総指揮=ウィリアム・J・イマーマン、ジェイム・ラッカー・キング。原案=テイラー・ハックフォード、ジェームズ・L・ホワイト。脚本=ジェームズ・L・ホワイト。撮影=パヴェル・エデルマン。編集=ポール・ハーシュ。音楽=レイ・チャールズ、クレイグ・アームストロング。レイ・チャールズ=ジェイミー・フォックス(Jamie Foxx)、 デラ・ビー・ロビンソン=ケリー・ワシントン(Kerry Washington)、ジェフ・ブラウン=クリフトン・パウエル(Clifton Powell)、 ジョー・アダムス=ハリー・レニックス(Harry Lennix)、 ジェリー・ウェクスラー=リチャード・シフ(Richard Schiff)、メアリー・アン・フィッシャー=アーンジャニュー・エリス(Aunjanue Ellis)、アレサ・ロビンソン=シャロン・ウォーレン(Sharon Warren)、 アーメット・アーティガン=カーティス・アームストロング(Curtis Armstrong)、マージー・ヘンドリックス=レジーナ・キング(Regina King)


 レイ・チャールズは、作品の公開を待たずに2004年6月10日他界したが、レイ・チャールズの意向が色濃く反映された伝記映画になっている。迫真の演技と呼ぶふさわしいレイ役のジェイミー・フォックスをキャスティングに指名したのはレイ・チャールズ自身だった。監督のテイラー・ハックフォードはレイ・チャールズと15年にわたる親交があり、密度の濃いストーリーに反映している。レイ・チャールズの天才性と人間的なもろさが見事に描き出されているとともに、アメリカの黒人差別の歴史をも浮かび上がらせた。

 映画の中ではレイ・チャールズ自身の歌声も響いているが、ジェイミー・フォックスの歌とピアノ演奏は、本人としか思えない素晴らしさ。コンサートシーンでは、映画ではなく、ドキュメンタリーを観ているような臨場感があった。ゴスペルとR&Bを融合させた数々のソウル・ナンバーに聞き惚れ、その存在の大きさをあらためて実感した。窓の外の鳥のかすかな羽音を聞き取るシーンが、レイの聴力の非凡さと感性の豊かさを象徴していた。感動のヒューマンドラマだ。


 
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