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 クロスファイア 「クロスファイア」の画像です

 2000年作品。日本映画。115分。配給=東宝。監督=金子修介。原作=宮部みゆき『鳩笛草』『クロスファイア』(光文社刊)。脚本=山田耕大、横谷昌宏、金子修介。製作=柴田 徹、原田俊明。プロデューサー=瀬田一彦、本間英行、濱名一哉、田上節朗。撮影=高間賢治。美術=三池敏夫。音楽=大谷幸(サントラ盤=日本コロムビア)。主題歌=「THE ONE THING」Every Little Thing(avex trax)。録音=宮内一男。照明=斉藤薫。編集=冨田功。視覚効果=小川利弘。ビジュアルエフェクトスーパーバイザー=松本肇、岸本義幸。音響効果=佐々木英世。キャスティング=田中忠雄。助監督=村上秀晃。製作担当者=前田光治。青木淳子=矢田亜希子、多田一樹=伊藤英明、牧原康明=原田龍二、倉田かおり=長澤まさみ、木戸浩一=吉沢悠、小暮昌樹=徳山秀典、長谷川芳裕=永島敏行、石津ちか子=桃井かおり


 「ガメラ3 邪神イリス覚醒」などのガメラ・シリーズで、新しい怪獣映画の地平を切り開いた金子修介監督だけに期待していたが、超能力者ものの新境地を開くまでには至らなかった。「ナイト・ヘッド」(飯田譲治監督)につながる異能者の苦悩を描いたものだが、矢田亜希子の演技力の限界とエンターテインメント性を追求するあまり、十分に深められていない。一方、少年の凶悪犯罪と裏でつながる警察幹部率いる闇の殺人集団という設定もイマイチ説得力に乏しいまま終ってしまった。最近目立ち過ぎる少年法改正の感情的な流れに迎合するようなストーリーも気になった。

 注目していたのは、念力発火能力=パイロキネシスを、どのように描くかだった。激しいアクションの特撮には迫力ある「炎」が不可欠であり、その表現は既に一定の水準にある。しかし今回は超能力による発火だけに、その新しいスタイルが見せ場となる。アイデア次第では、クローネンバーグの「スキャナーズ」のようにその後のトレンドになる可能性もあった。現実の身体発火は、写真で見る限り身体が内側に向けて焼尽していくように崩れている。それが映像で表現できればとの思いがあったが、残念ながら火炎の派手さに頼るばかりで、うなるような表現には出会えなかった。


 M:I-2 「ミッション:インポッシブル2」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。120分。配給=UIP。監督=ジョン・ウー(John Woo)。製作総指揮=ポール・ヒッチコック、テレンス・チャン。製作=トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー。脚本=ロバート・タウン。撮影=ジェフリー・L・キンボール。衣裳デザイナー=リジー・ガーディナー。プロダクション・デザイン=トーマス・E・ザンダース。視覚効果スーパーバイザー=リチャード・ユーリッチ。特殊視覚効果=シネサイト、マネックス・エンターテイメント。音楽=ハンス・ジマー。サウンドトラック=リンプ・ビスキット“テイク・ア・ルック・アラウンド”(『M=I-2』のテーマ)、メタリカ、フー・ファイターズ。イーサン・ハント=トム・クルーズ(Tom Cruise)、ショーン・アンブローズ=ダグレイ・スコット(Dougry Scott)、ナイア・ホール=サンディ・ニュートン(Thandie Newton)、ルーサー・スティッケル=ヴィング・レイムス、ヒュー・スタンプ=リチャード・ロックスバーグ、ビリー・ベアード=ジョン・ポルソン、マックロイ=ブレンダン・グリーソン、ドクター・ネロルヴィッチ=レイド・セルベッジア、スワンベック=アンソニー・ホプキンス


 「ミッション・インポッシブル」は遠くに来たものだ。人を傷つけることなく、頭脳プレイで任務を遂行する点が爽快だった「ミッション・インポッシブル」は、「ミッション・インポッシブル」(ブライアン・デパルマ監督)でアクロバット・シーンが登場し、知的な趣を失った。そして「2」では全編がアクションの連続。時には現実性さえもかなぐり捨ててしまう。はっきり言ってストーリーは古臭い。それでも、冒頭からハラハラし通しで最高に楽しめる。ジョン・ウーの映像マジックに、一段と磨きがかかった。娯楽作としては、申し分のない仕上がりだ。大スクリーン、大音響で観るべき作品。

 情感豊かなイーサン・ハントを演じるトム・クルーズ。前作よりも数段輝いている。セクシーで切れがあるアクション。「マグノリア」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)での傑出した演技とは別のタレント性を発揮し、俳優としての幅と存在感を増している。「インタビュー・ウイズ・バンパイア」(ニール・ジョーダン監督)でトム・クルーズと共演したサンディ・ニュートンは、多面性を持ったヒロインを手堅く演じた。その他の俳優も国際色豊かで、個性を競っている。音楽も充実していて映像を引き立たせている。


 蛇女 「蛇女」の画像です

2000年作品。日本映画。88分。配給=メディア・スーツ。監督=清水厚。企画=石川博、円谷粲。プロデューサー=瀬戸恒雄、今井朝幸、太田裕輝。脚本=小中千昭。音楽=中川孝。主題歌=「冷たい月を抱く女〜蒼い記憶のグノス」。歌=佐伯日菜子(ヒートウエーブ)。撮影=西久保維宏。照明=赤津淳一。録音=三澤武徳。美術=吉田直哉。特殊メイク=若狭新一。助監督=神園浩司。制作担当=高橋誠喜。矢野文=佐伯日菜子、守宮一樹=石橋保、猪瀬昌寛=諏訪太郎、フォトグラファー=大川浩樹、森宮匡子=夏生ゆうな


 ダリオ・アルジェントほど徹底してはいないが、恐がらせてやろうという意志に支配されたスタイリッシュな映像は、観続けるうちにそれなりの効果を上げ始める。「蛇女」という古典的な題名も、内容を考えてみればいいかげんなものだが、監督の意図は伝わってくる。怪奇の世界と呼ぶにふさわしいB級作品。たぶん、部屋でひとりで見るべきタイプの映画だ。エリック・サティの曲「Gnossiennes」が巧みに使われている。

 それにしても佐伯日菜子は張り切っている。新進モデル・矢野文として前半で神秘的な美しさを発散しつつ、中盤では恐怖に絶叫し、終盤に至っては感情の糸が切れた過激な演技を見せる。「催眠」「富江」の菅野美穂に迫る振幅。いや「ピノキオ ルート964」で見せたヒミコの驚愕の演技を連想させる。夏生ゆうなもなかなか凄みがあったが、佐伯日菜子の魅力にはかなわない。


 MAN ON THE MOON 「マン・オン・ザ・ムーン」の画像です

2000年作品。アメリカ映画。119分。配給=東宝東和。監督=ミロシュ・フォアマン(Milos Forman)。 製作総指揮=マイケル・ハウスマン。共同製作総指揮=ジョージ・シャピロ、ハワード・ウエスト、ボブ・ズムダ。製作=ステイシー・シェーア、ダニー・デビート、マイケル・シャンバーグ。脚本=スコット・アレクサンダー、ラリー・カラズウスキー。撮影監督=アナスタス・ミチョス。プロダクション・デザイナー=パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン。編集=クリストファー・テレフセン、リンジー・クリングマン。キャスティング=フランシ−ヌ・メイズラー。衣装=ジェフリー・ガーランド 衣装。音楽=R.E.M.。アンディ・カフマン=ジム・キャリー(Jim Carrey)、ジョージ・シャピロ=ダニー・デビート、リン・マーグリース=コートニー・ラブ、ボブ・ズムダ=ポール・ジアマッティ、メイナード・スミス(ABC重役)=ヴィンセント・スキアヴェリー、ド・ウェインバーガー=ピーター・ボナース、スタンリー・カフマン=ジェリー・ベッカー、ジャニース・カフマン=レスリー・ライルス、クラブ経営者=ジョージ・シャピロ、ジャック・バーンズ=ボブ・ズムダ、本人自身がカメオ出演=ジェリー・ロウラー、J.アラン・トーマス、ランダル・カーヴァー、ジェフ・コナウェイ、バド・フリードマン、メリル・ヘナー、ジャド・ハーシュ、キャロル・ケイン、デビッド・レターマン、クリストファー・ロイド、ローン・マイケルズ、ポール・シェーファー


 35歳でこの世を去ったアメリカの過激な天才コメディアン「アンディ・カフマンAndy Kaufman」(1961.01.17-1984.05.16)の生涯を描いた作品。ミロシュ・フォアマン監督は、出だしからエンドタイトルを始めるというカフマン顔負けの演出を見せる。ほとんど寺山修司のノリだ。その後は、彼の成功と挫折、そして死期が近いことを自覚したカレが仕組んだ念願だったカーネギーホールの華やかなショー、そして荘厳と呼びたくなるような葬儀までを一気に見せる。涙でスクリーンが見えなくなるほど泣いた。「グリーンマイル」(フランク・ダラボン監督)以上に涙が止まらなかった。ラストは、一捻りして、またまたカフマンらしい終わり方だった。

 アンディ・カフマンが、多くのコメディアン、俳優に影響を与え、不滅の輝きを放っているように、ジム・キャリーは、この作品とともに生き続けるに違いない。いつもの押し付けがましい演技ではなく、カフマンに内面から近付こうとする姿勢が、見違えるような名演技となって映画を輝かせている。ともに1月17日生まれというだけでなく、二人が映画という奇跡の中で共演しているように見えた。脇役も曲者ぞろい。多くの本人がカメオ出演して花を添えている。


 大いなる幻影 「大いなる幻影/Barren Illusion」の画像です

 1999年作品。日本映画。95分。配給=ユーロスペース。監督・脚本=黒沢清。プロデューサー=堀越謙三、松田広子。撮影・照明=柴主高秀。照明協力=渡部嘉。録音=菊池信之。美術=松本知恵。特殊美術=松井祐一。美術協力=木村将裕、五十嵐正行、ウォーターメロン。スタイリスト=水谷郷。スクリプター=御園生涼子。音楽=相馬大。編集=大永昌弘。ハル=武田真治、ミチ=唯野未歩子、佐竹=安井豊、村井=松本正道、健二=稲見一茂、秋子=億田明子、不良A=市沢真吾、不良B=相馬大、不良C=元宮正吾、団地の女=陳黛英、団地の男=リ・コウジ、ミチの隣人=モハメッド・ムーサ、不良に襲われる男=諏訪太朗、カフェのカップル女=吉野晶、カフェのカップル男=山口博之、郵便局の同僚=村主暢子、中田美紀、ミチを誘う男=山下正人、カフェで絵葉書を売る女=野村律子、カフェの美少女=福井廣子、空港カウンターの係員=長門かおり、空港カウンターの上司=大島功嗣、空港カウンターの客=石田道人、郵便局の配送係=山本直輝、犬を連れ去る保健所の係員=小西八恵、サポーターたち=東京外国語大学ブラジル研究会、ファシスト=青山真治、泉雄一郎、熱海史郎、石住武史、柴野淳、浦井崇、川口俊平、谷口二郎、マスクをつけた家族=鈴木章浩、鈴木瞳李、小口容子、看護婦=近藤麗子、ハルの後輩=佐野淳子、志水健一、佐竹の部下=小林妙子、山口哲史


 この作品は、映画美学校の生徒たちとともに撮ったもの。2005年という近未来を舞台にしている。友人が作った音楽を売っているハルと郵便局で働いているミチの淡いラブ・ストーリー。さまざまな場面が描かれているが、それぞれをつなぐ説明はない。登場人物には厚味がなく、ストーリーにも重みがない。「カリスマ」のような不安に満ちた緊張は乏しい。浮遊する不安を描くために、意識して弛緩しているようにさえ見える。それにしても、ハルの輪郭が、ときどき薄れていく描写はお手軽な感じだ。

 それぞれの場面は、考えてみるとなかなか面白い設定なのだが、見せ方がストレートすぎる。ミチが夢を膨らませていた海外から兵士らしい死体が海岸に流れ着き、ミチが取り乱すシーンがある。「このまま終っちゃうの」「僕がいるだろ」「どこにいるの」「ここだよ」「どこ」「僕はやっぱりどこにもいない」。二人のすれ違いを象徴する優れた場面だが、心に染みてこない。二人が、それぞれ生殖能力が失われる危険がある花粉症の新薬のモニターになっているという設定も、監督の意図ほど新しい愛の形を突き付けてはこない。何もかもがあいまい。とらえどころのない軽い焦躁が残った。


 THE INSIDER 「インサイダー」の画像です

 1999年作品。アメリカ映画。158分。配給=東宝。監督=マイケル・マン(Michael Mann)。脚本=エリック・ロス&マイケル・マン。製作=マイケル・マン&ピーター・ジャン・ブラッシ。撮影監督=ダンテ・スピノッティ。プロダクション・デザイナー=ブライアン・モリス。衣装=アンナ・シェバード。編集=ウィリアム・C・ゴールデンバーク、ポール・ルーベル、デヴイッド・ローゼンブルーム。音楽=リサ・ジェラード&ピーター・バーグ。共同製作=マイケル・ワクスマン。キャスティング=ポニー・タイマーマン。ローウェル・バーグマン=アル・パチーノ(Al Pacino)、ジェフリー・ワイガンド=ラッセル・クロウ(Russell Crowe)、マイク・ウォーレス=クリストファー・ブラマー(Christopher Plummer)、リアーン・ワイガンド=ダイアン・ヴェノーラ、ドン・ヒュイット=フィリップ・ベイカー・ホール、シャロン・ティラー=リンゼイ・クローズ、デビー・デ・ルカ=デビ・メイザー、エリック・クラスター=スティーヴン・ドボロウスキー、リチャード・スクラックス=コーム・フィオレ、ロン・モトリー=ブルース・マクギル、ヘレン・カベレッリ=ジーナ・カーション、トーマス・サンドファー=マイケル・カンポン、ジョン・スカンロン=リップ・トーン、ミセス・ウィリアムス=リン・シグペン、バーバラ・ワイガンド=ハリー・ケイト・アイゼンバーク、ノーマン=カメラマン=マイケル・ポール・チャン、ミセス・ワイガンド=リンダ・ハート、マーク・スタイン=ロバート・ハーパー、ロバートソン(FBlエージェント)=ネスター・セラノ、ニューヨーク・タイムズ記者=ピート・ハミル、タバコ訴訟の弁護士=ウィングス・ハウザー、シェイク・フェテラーラ=クリフォード・カーティス、デホラ・ワイガンド=レネ・オルステッド、マイケル・ムーア(本人)=マイケル・ムーア、ジャック・パラディーノ(本人)=ジャック・パラディーノ


 たばこ産業が隠しているニコチン中毒に関する真実を明らかにしようとする解雇された科学者とTVディレクターの熱き男たちの物語。実話、しかも皆実名である。派手なシーンはないが、ストーリーは最後まで緊張している。アメリカは金で真実が買える国だが、たまにこのような美談が生まれ、アメリカの株をバブル化する。たばこ会社の脅迫にたじろき、迷い、家族を失いながらも証言するジェフリー・ワイガンドという老け役を、ラッセル・クロウが静かにしかし的確に演じている。熱血ディレクター・ローウェル・バーグマンは、アル・パチーノが最高にかっこよく再現している。その点では見ごたえ十分だ。

 それにしても、マイケル・マンは女性が全く描けない監督だ。前作「ヒート」の女性たちは「付け足し」だったが、「インサイダー」の女性たちも「添うもの」だ。ワイガンドとバーグマンの妻は、普通の作品なら、役にかなりの重さがあるはず。しかしこの作品では、血が通った人間になっていない。ハリウッド映画は、女性の描き方には特に敏感なはずだが、マイケル・マンは頑に男だけの美学を描きつづける。最近珍しい古いタイプの監督なのだろうか。ここまで徹底すれば貴重な存在だ。


 アメリカン・ショート・ショート・フィルム
フェスティバル2000in札幌
 
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 札幌で初めてのアメリカン・ショート・ショート・フィルム・フェスティバルが開かれた。4日間の上映期間中に3,000人以上が参加し、ショートフイルムへの関心の高さを裏付けた。上映作品は、3プログラムで30作品に上り、その他札幌だけのスペシャルプログラムも組まれた。3プログラムと好対照の内容で、興味深かった。詳しい報告は、ここをクリック!


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