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2006.9

 キンキー・ブーツ 「キンキー・ブーツ」の画像です

 2005作品。アメリカ・イギリス合作。107分。配給=ブエナビスタ。監督=ジュリアン・ジャロルド。製作=ニック・バートン、ピーター・エテッドギー、ザンヌ・マッキー。脚本=ジェフ・ディーン、ティム・ファース。撮影=エイジル・ブリルド。プロダクションデザイン=アラン・マクドナルド。衣装デザイン=サミー・シェルドン。編集=エマ・E・ヒコックス。音楽=エイドリアン・ジョンストン。チャーリー・プライス=ジョエル・エドガートン、ローラ=キウェテル・イジョフォー、ローレン=サラ=ジェーン・ポッツ、ニコラ=ジェミマ・ルーパー、メル=リンダ・バセット、ドン=ニック・フロスト、ジョージ=ユアン・フーパー、ハロルド・プライス=ロバート・パフ


 テレビで活躍してきたジュリアン・ジャロルドの映画初監督作。父親の急死で倒産目前の靴工場を相続した優柔不断な男チャーリー・プライスが、ドラッグクイーンのローラとドラッグクイーン専用セクシーブーツの開発に取り組み、工場の再生に奮闘する姿を描く実話に基づくイギリス産のハートフル・コメディ。「フル・モンティ」「ブラス」と、イギリスの感動ドラマは、こういう傾向の作品が目立つ。しかし、伝統的な靴工場が、キンキーブーツをつくる過程で、職人たちがセクシャルマイノリティへの偏見を解消し、力を合わせていくというストーリーは、特別な面白さがある。そして、対照的に見えるプライスとローラは、父親へのコンプレックスに縛られているという点で共通しているも見逃せない。

 クライマックスは、ミラノの見本市。チャーリーは、全生産ラインをキンキーブーツに絞り、ミラノのドラッグクイーンショーに工場の命運を賭けた。劇的な展開とキンキーブーツが映える華やかなショー。ローラ役キウェテル・イジョフォーの歌声と存在感は、ぞくぞくするほど。魅力的だ。一方の優柔不断だが最後は頑張るチャーリー・プライス役のジョエル・エドガートンも、不思議な魅力がある。若き日のリチャード・ギアに似ているかも。


 紙屋悦子の青春 「紙屋悦子の青春」の画像です

 2006年作品。日本映画。111分。配給=パル企画。監督=黒木和雄。製作=川城和実、松原守道、亀山慶二、多井久晃、鈴木ワタル。プロデューサー=河野聡、内藤和也、杉山登、大橋孝史、磯田修一。企画=深田誠剛、久保忠佳、梅沢道彦。原作=松田正隆。脚本=黒木和雄、山田英樹。撮影=川上皓市。美術=安宅紀史。美術監督=木村威夫。衣装デザイン=宮本茉莉。編集=奥原好幸。音楽=松村禎三。照明=尾下栄治。録音=久保田幸雄。紙屋悦子=原田知世、永与少尉=永瀬正敏、明石少尉=松岡俊介、ふさ=本上まなみ、安忠=小林薫


 劇作家・松田正隆が母親の話を基に書き上げた戯曲を黒木和雄監督が映画化した。黒木監督は本作の公開を控えた2006年4月12日に急死、これが遺作になった。太平洋戦争末期・昭和20年の春、鹿児島の田舎。戯曲が原作だが、映画もほとんどが室内で、カメラもほとんど動かない長回し。舞台のような感じが、最初は窮屈だったが、会話の面白さに引き込まれた。紙屋悦子の兄夫婦の口喧嘩などが実に考え抜かれている。戦時下の貧しい生活の中にもある笑い。そして悲しみ。口に出せない思い。黒木和雄監督が描こうとした等身大の人間の日常、「卓袱台(ちゃぶだい)の戦争」が見事に映像化されていた。派手なシーンは全くないが、見終わった時の充実感は格別だ。そして余韻は長く続いた。

 紙屋悦子役の原田知世の初々しさ、若々しさがまぶしい。とても38歳には見えない。それでいて、抑えた演技は、この作品をしっかりと支えている。彼女の代表作の一つになるだろう。さらに驚いたのは、本上まなみのうまさだ。夫役の小林薫の演技のうまさは折り紙付きだが、ひけをとらない熱演だった。「戦争に負ければいい」と言って夫に怒られる場面は、とりわけ素晴らしかった。


 トランスアメリカ 「トランスアメリカ」の画像です

 2005年作品。アメリカ映画。103分。配給=松竹。監督=ダンカン・タッカー。製作=レネ・バスティアン、セバスチャン・ダンガン、リンダ・モラン。製作総指揮=ウィリアム・H・メイシー。 脚本=ダンカン・タッカー。撮影=スティーヴン・カツミアスキー。プロダクションデザイン=マーク・ホワイト。衣装デザイン=ダニー・グリッカー。編集=パム・ワイズ。音楽=デヴィッド・マンスフィールド。主題歌=ドリー・パートン『Travelin' Thru』。ブリー=フェリシティ・ハフマン、トビー=ケヴィン・ゼガーズ、エリザベス=フィオヌラ・フラナガン、マーガレット=エリザベス・ペーニャ、カルヴィン=グレアム・グリーン、マレー=バート・ヤング、シドニー=キャリー・プレストン


 男性であることに違和感を持ち、肉体的に女性になるための手術を控えたトランスセクシュアル(性同一性障害)が、男性だったときに出来た実の息子とアメリカ大陸を横断する旅に出る。笑える場面を交えながら、深刻にならず、軽くならず。やがて2人の心は柔らかくなり、心が通じ合っていく。とてもハートフルなロードムービー。監督は、新人のダンカン・タッカー。実の子を持つトランスセクシュアルの性転換手術の是非という難しいテーマを選びながら、人と人のつながりを見事に描いた。

 主演のフェリシティ・ハフマンの勇気に拍手を送ろう。普通なら男優が女装するというキャスティングになるところを、女優が女性になりたい男性を演じた。しかも、女装している男性にしか見えないのだ。終始揺れ動く気持ちと身体を、コミカルに演じきった。ゴールデン・グローブの女優賞獲得は、当然だろう。


 
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