クレイドル・ウィル・ロック |
---|
1999年作品。アメリカ映画。134分。 配給=アスミック・エース エンタテインメント。脚本・監督・製作=ティム・ロビンス(Tim Robbins)。製作=ジョン・キリク、リディア・ディーン・ビーチャル。製作総指揮=ルイーズ・クラコワー、フランク・ビーチャム、アラン・ニコルズ。撮影監督=ジャン=イヴ・エスコフィエ。美術監督=リチャード・フーヴァー。編集=ジェラルディン・ペローニ。衣装=ルース・マイヤーズ。挿入曲=マーク・ブリッツスタイン。音楽=デイヴィッド・ロビンス。キャスティング=ダグ・エイベル。マーク・ブリッツスタイン=ハンク・アザリア、ディエゴ・リヴェラ=ルーベン・ブラデス、ヘイゼル・ハフマン=ジョーン・キューザック、ネルソン・ロックフェラー=ジョン・キューザック、ジョン・ハアウスマン=ケアリー・エルウィズ、グレイ・マザーズ=フィリップ・ベイカー・ホール、ハリー・フラナガン=チェリー・ジョーンズ、オーソン・ウェルズ=アンガス・マクファデン、トミー・クリック=ビル・マーレイ、ラグランジェ伯爵夫人=ヴァネッサ・レッドグレイヴ、マルゲリータ・サルファッティ=スーザン・サランドン、ジョン・アデア=ジェイミー・シェリダン、アルド・シルヴァーノ=ジョン・タトゥーロ、オリーヴ・スタントン=エミリー・ワトソン
歴史を複眼的に取り上げようという狙いは理解できる。しかし、そのためには3時間は必要だろう。さまざまな魅力的な人物が登場し、俳優たちも熱演しているが、駆け足の展開ではやはり物足りない。もっとじっくりと人間を描いてほしかった。感動的な舞台をそれだけに終らせるのではなく、資本家たちの思惑に抗した表現者たちの誇りとして位置付けたかったのだろうが、多くの話を盛り込み過ぎて焦点がぼけてしまいがちだった。歴史の多面性は伝わるが散漫な印象も残った。
初恋のきた道 |
---|
2000年作品。米中合作映画。89分。 配給=ソニーピクチャーズエンターティンメント。 監督=チャン・イーモウ。 脚本=パオ・シー。製作=チャオ ・ユイ。美術=ツァオ・ジュウピン。サウンド=ウー・ラーラー。 編集=チャイ・ルー。音楽=サン・パオ。撮影=ホウ・ヨン。製作総指揮=チャン・ウェイピン。製作=チャオ・ユイ。衣装=トン・ホアミアオ。チャオ・ディ(若)= チャン・ツィイー(Zhang Ziyi)、ルオ・ユーシェン=スン・ホンレイ、チャオ・ディ= チャオ・ユエリン、ルオ・チャンユー=チェン・ハオ、祖母=リー・ピン
チャン・ツィイーのデビュー作である。いち早くツィイーの才能を見つけたチャン・イーモウ監督の慧眼に感心する。私は、先に「グリーン・デスティニー」(アン・リー監督)の勝ち気で意志の強いチャン・ツィイーの演技を知っている。だから、「初恋のきた道」での素朴な笑顔やちょこちょこ歩きが、自然なしぐさではなく演技であることも分かる。それでも、彼女の愛くるしい表情は、私の胸をときめかせる。私にとってツィイーは、2000年の新人賞だ。
Party7 |
---|
2000年作品。日本映画。104分。配給=東北新社。監督・原作・脚本・編集=石井克人。撮影=町田博。美術=都築雄二。編集=土井由美子。音楽=ジェイムス下地。アニメーション制作=マッドハウス。三木シュンイチロウ=永瀬正敏、オキタソウジ=浅野忠信、フグタハンモリ=原田芳雄、ソノダシンゴ=堀部圭亮、トドヒラトドヘイ=岡田義徳、ミツコシカナ=小林明美、若頭=我修院達也、出崎親分=島田洋八
会話劇を盛り上げているのは、コミカルなキャラクターに徹した俳優たちの努力のたまもの。浅野忠信は、どんな役にも難なく入り込んでしまうが、今回の役はそんな中でもピカ一だろう。「風花」での文部省官僚役よりも驚いた。そして、特筆すべきなのは原田芳雄のおかしさ。これまでのハードなイメージを一変させている。くすりとさせるユーモアのセンスは持っていたが、今回は抱腹絶倒の演技。60歳の原田芳雄、恐るべし。
Dancer in the Dark |
---|
2000年作品。デンマーク映画。140分。 配給=松竹、アスミック・エース。監督・脚本=ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier) 。音楽=ビョーク(Bjork)。製作=ヴィベケ・ウィンデロフ。撮影監督=ロビー・ミュラー。振付=ビンセント・パターソン。美術=カール・ユリウスン。衣装=マノン・ラスムッセン。編集=モリー・マレーネ・ステンスガード&フランソワ・ゲディギエール。セルマ=ビョーク(Bjork)、キャシー=カトリーヌ・ドヌーブ (Cathrine Deneuve)、ビル=デビッド・モース、ジェフ=ピーター・ストーメア、オールドリッチ・ノヴィ=ジョエル・グレイ、サミュエル=ビンセント・パターソン、リンダ=カーラ・セイモア、ノーマン=ジャン・マルク・バール、ジーン=ブラディカ・コスティク、ブレンダ=ジョブハン・ファロン
ミュージカルを愛しつつアメリカミュージカルの浅さ、いいかげんさを認識していたトリアー監督は、思いもかけない方法で、ミュージカルを蘇らせた。これほどまでにミュージカルを生かしながら、既存のミュージカルを批判しえた作品は初めてだ。ミュージカルの国アメリカに移り、ミュージカルの舞台に立つことを夢見ていたセルマは、最も過酷な場面で、その夢を実現する。想像するだに恐ろしいアイデア。そして、打ちのめされるラストシーンが、ひとつの希望の形態、セルマの勝利だということに気がつくのだ。
THE END OF THE AFFAIR |
---|
1999年作品。イギリス映画。101分。配給=ソニー・ピクチャ一ズエンタテインメント。監督・脚色=ニール・ジョーダン(Neil Jordan)。製作=スティーブン・ウーリー、ニール・ジョーダン。原作=グレアム・グリーン。撮影監督=ロジャー・プラット。プロダクション・デザイナー=アンソニー・プラット。編集=トニー・ローソンA.C,E.。作曲・指揮=マイケル・ナイマン。衣装デザイナー=サンデイ・パウエル。モーリス・ベンドリックス=レイフ・ファインズ(Ralph Fiennes)、サラ・マイルズ=ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)、ヘンリー・マイルズ=スティーブン・レイ、パーキス=イアン・ハート、スマイス神父=ジェイソン・アイザックス、サベージ=ジェームズ・ボーラム、ランス・パーキス=サミュエル・ホールド
「イングリッシュ・ペイシェント」(アンソニー・ミンゲラ監督)で、忘れがたい演技を見せたレイフ・ファインズ。ベットシーンを含めて、どんな場面でも品位を醸し出す存在感は貴重だ。ジュリアン・ムーアは高級官吏の妻にしては、崩れかけた雰囲気が強すぎるものの、不倫の関係に溺れていく姿は説得力があった。マイケル・ナイマンの音楽が、悲劇を盛り上げるが、どの作品も同じように聞こえるのはいただけない。
What Lies Beneath |
---|
2000年作品。アメリカ映画。130分。配給=20世紀フォックス。監督=ロバート・ゼメキス(Robert Zemeckis)。脚本=クラーク・グレッグ。ストーリー=サラ・ケノシャン、クラーク・グレッグ。製作=スティーブ・スターキー、ロバート・ゼメキス、ジャック・ラプケ。製作総指揮=ジョーン・ブラッドショー、マーク・ジョンソン。撮影=ドン・バージェス、A.S.C.。プロダクション・デザイナー=リック・カーター、ジム・ティーガーデン。編集=アーサー・シュミット。音楽=アラン・シルヴェストリ。衣裳デザイナー=スージー・デサント。視覚効果スーパーバイザー=ロバート・レガート。ノーマン・スペンサー=ハリソン・フォード(Harrison Ford)、クレア・スペンサー=ミシェル・ファイファー(Michelle Pfeiffer)、ジョディ=ダイアナ・スカーウィッド、ドクター・ドレイトン=ジョー・モートン、ウォレン・フューアー=ジェームズ・レマー、メアリー・フューアー=ミランダ・オットー、マディソン・エリザベス・フランク=アンバー・バレッタ、ケイトリン・スペンサー=キャサリーン・トーネ、ドクター・スタン・ポーウェルー=レイ・ベイカー、エレナ=ウェンディ・クルーソン
ハリソン・フォードが、ノーマンという名前で登場したときから、ただならぬ展開が予想された。これまでの俳優像を利用して、意外性を高めていく知能犯的な配役だ。ハリソン・フォードにとっても、大きな位置を占める作品となっただろう。そして、ミシェル・ファイファー。最初からラストまで、彼女の演技にくぎ付けになった。不安が増殖していく過程を、美しい表情の変化でみせる。「恋のためらい」とは、まったく別の新しいファイファーがいた。ぞくぞくするほど魅力的だ。
TITUS |
---|
1999年作品。アメリカ映画。162分。配給=ギャガ・ヒューマックス。監督・脚本=ジュリー・テイモア(Julie Taymor)。原作=ウィリアム・シェイクスピア。衣装=ミレーナ・カノネロ。美術監督=ダンテ・フェレッティ。撮影監督=ルチアーノ・トポリ。音楽=エリオット・ゴールディング。タイタス=アンソニー・ホプキンス(Anthony Hopkins)、タモラ=ジェシカ・ラング(Jessica Lange)、カイロン=ジョナサン・リース・マイヤーズ(Jonathan Rhys Meyers)、ディミトリアス=マシュー・リース、アーロン=ハリー・レニックス、ルーシャス=アンガス・マクファーデン、サターナイナス=アラン・カミング、バシアヌス=ジェームズ・フレイン、マーカス=コーム・フィオール、ラヴィニア=ローラ・フレイザー(Laura Fraser)
何と言ってもタイタス役アンソニー・ホプキンスの名演技をたたえなければならない。彼の存在感がなければ、この作品は総花的なイメージの乱舞に拡散していたかもしれない。強引な展開にリアルさを与える力には脱帽する。個性的なキャステイングだが、ラヴィニア役のローラ・フレイザーが鮮烈に印象に残った。まずタイタスの従順な娘として可憐な美しさを見せる。やがて、彼女は強姦され、舌を抜かれ、両手首を切り落とされて、そこに小枝を刺される。血を吐きながら無言で嘆く悲壮な姿は、痙攣的な美しさに満ちていた。文句なく残酷美と呼べるのは、このシーンくらいだろう。
1996年 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1997年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
1998年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
1999年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2000年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |