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2006.7

 ジャスミンの花開く 「ジャスミンの花開く」の画像です

 2004年作品。中国映画。129分。配給=日本スカイウェイ。製作総指揮=ティエン・チュアンチュアン(Tian Zhuang-Zhuang)。原作=スー・トン。脚本=ホウ・ヨン(Hou Yong)、ツァン・シャン。撮影=ヤオ・シャオファン。音楽=スー・ツォン、イン・チン。茉/莉/花=チャン・ツィイー(Zhang Ziyi)、茉の母/茉(花の祖母)=ジョアン・チェン(Joan Chen)、孟=チアン・ウェン(Jiang Wen)、杜=リィウ・イエ(Liu Ye)、偉=ルー・イー(Lu Yi)


「初恋のきた道」「至福のとき」などチャン・イーモウ作品でカメラマンとして活躍してきたホウ・ヨンの監督デビュー作。チャン・ツィイーが、上海に生きる母子3世代の女性を一人三役で演じた物語。茉莉花(ジャスミン)から一字を取って名前を付けられた祖母、母、娘が登場する。チャン・ツィイー・ファンとしては、チャン・ツィイー七変化で、さまざまな表情を観ることができて満足だが、映画としては御都合主義の感じがする。私が理解できないだけで、中国の歴史に対する皮肉が込められているのかもしれないが。

 1930年。映画スターを夢みる18歳の少女・茉(モー)。写真館を営む母と2人暮らしの彼女は、映画会社の孟(モン)社長に見い出され、新進女優として華やかな世界に飛び込む。緑色を基調にした映像美が楽しめる場面だ。1950年。茉の娘、莉(リー)は、労働者階級の青年と結婚するが、悲劇が襲う。1980年。莉の娘、花(ホア)は、茉の反対を押し切り、地方の大学に合格した青年と結婚する。だんだん展開が悲惨になっていく。


 日本沈没 「日本沈没」の画像です

 2006年作品。日本映画。135分。配給=東宝。監督=樋口真嗣 。プロデューサー=中沢敏明 。エグゼクティブプロデューサー=濱名一哉 。原作=小松左京 。脚本=加藤正人 。撮影監督=河津太郎 。美術=原田恭明 。編集=奥田浩史 。音楽=岩代太郎 。VFXスーパーバイザー=佐藤敦紀 、田中貴志、道木伸隆。VFXプロデューサー=大屋哲男 。スクリプター=河島順子。製作統括=近藤邦勝 。特技監督=神谷誠。録音=中村淳。小野寺俊夫=草なぎ剛 、阿部玲子=柴咲コウ 、田所雄介=豊川悦司 、 鷹森沙織=大地真央 、結城慎司=及川光博 、倉木美咲=福田麻由子、田野倉珠江=吉田日出子 、福原教授=柄本明 、野崎亨介=國村隼 、山本尚之=石坂浩二


 科学的検証を駆使しつつ日本の歴史と文化を問う壮大な原作を、良くここまで裏切れたもの。ご都合主義の博覧会といった作品。まず首相専用機が危険な活火山の上空を飛行し、噴火で墜落するという信じ難い展開にあぜん。そもそも北京行きの飛行機は、あんなコースを飛ばないはず。最後に日本沈没を防ぐため世界中の掘削船を導入して、プレート内部に爆薬を仕掛けるが、最も強力な爆弾はどういうわけか潜水艦で潜りわざわざ手作業で投入することに。「アルマゲドン」の真似かい。草なぎの奇跡的な活躍で日本沈没は回避された。めでたしめでたし。こういう甘い認識を切断する重厚な思考実験として「日本沈没」という設定があったはず。小松左京という世界に誇る偉大な作家を多くの人たちが注目するきっかけになった点だけは、このリメイクを評価する。

 肝心の日本各地の破壊シーンも単調なアングルの連続。ぶつ切れのまま、えんえんと続く。そもそも映画の中心はパニックのリアルさではない。日本の歴史を考え直す作品でもない。悲惨な状況の中で芽生えた、草なぎ剛演じる潜水艇パイロット小野寺と、柴咲コウ演じるハイパーレスキュー隊員・阿部玲子のラブストーリーが中心。主題歌「Keep Holding U」にのせて小野寺と玲子が抱き合うシーンのわざとらしさはお笑いだ。感動するはずの最後の別れのシーンもよそよそしい。最近観たラブシーンのワースト。草なぎの役者としての弱さは、目を覆うばかり。いつもの薄っぺらな草なぎくんが、突然命を捨てる覚悟の行動に出る不自然さ。ふたりだけではなく、ほかの人間も描けていない。せっかくの豪華キャストを生かしていないのが本当に残念だ。ただ、豊川悦司と大地真央だけは良かった。


 パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト 「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」の画像です

 2006年作品。アメリカ映画。161分。配給=ブエナビスタ。監督=ゴア・ヴァービンスキー(Gore Verbinski)。製作=ジェリー・ブラッカイマー(Jerry Bruckheimer)。製作総指揮=ブルース・ヘンドリックス(Bruce Hendricks)、エリック・マクレオド(Eric McLeod)、チャド・オマン(Chad Oman)、マイク・ステンソン(Mike Stenson)。脚本=テッド・エリオット(Ted Elliott)、テリー・ロッシオ(Terry Rossio)。撮影=ダリウス・ウォルスキー(Dariusz Wolski)。キャラクター原案=テッド・エリオット(Ted Elliott)、テリー・ロッシオ(Terry Rossio)、スチュアート・ビーティー(Stuart Beattie)、ジェイ・ウォルパート(Jay Wolpert)。プロダクションデザイン=リック・ハインリクス(Rick Heinrichs)。衣装デザイン=ペニー・ローズ(Penny Rose)、リズ・ダン(Liz Dann)。編集=スティーヴン・E・リフキン(Stephen E. Rivkin)、クレイグ・ウッド(Craig Wood)。音楽=ハンス・ジマー(Hans Zimmer)。ジャック・スパロウ=ジョニー・デップ(Johnny Depp)、ウィル・ターナー=オーランド・ブルーム( Orlando Bloom)、エリザベス・スワン=キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)、デイヴィ・ジョーンズ=ビル・ナイ(Bill Nighy)、ビル・ターナー=ステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgard)、ノリントン=ジャック・ダヴェンポート(Jack Davenport)、ギブス=ケヴィン・マクナリー(Kevin McNally)、ティア・ダルマ=ナオミ・ハリス(Naomie Harris)、スワン総督=ジョナサン・プライス(Jonathan Pryce)、ラジェッティ=マッケンジー・クルック(Mackenzie Crook)、ベケット卿=トム・ホランダー(Tom Hollander)、ピンテル=リー・アレンバーグ(Lee Arenberg)、バルボッサ=ジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush)


 唐突に始まって、謎を残して終わる。「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」は、3部作の第2作の位置付け。作品の独立性が気にかかる人は、納得いかないと思うけれど、最初から3部作と思えば、気にならない。1部から2部までには3年かかったけれど、3部は2007年5月26日の全世界同時公開が決定している。

 「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」は、一匹狼の海賊役のジョニー・デップの軽妙な演技で楽しませくれた。新しいタイプの主人公。新しいタイプの海賊映画。しかし全体にディズニー的なお手軽さとファミリー向けの配慮が感じられた。今回はファミリー向けという感じがしない。手を抜かない気迫が感じられる。とことん楽しませようと、次々と見せ場を用意し、畳み掛けてくる。カメラアングルが絶妙で、ハラハラわくわくし続けた。ピカ1の娯楽作品。幽霊船フライング・ダッチマン号のデイヴィ・ジョーンズ船長が良かった。


 ブレイブ ストーリー 「ブレイブ ストーリー」の画像です

 2006年作品。日本映画。111分。配給=ワーナー。監督=千明孝一。アニメーション制作=GONZO。製作=関一由、村濱章司、秋山創一、渡辺純一、小池英彦。プロデューサー=小岩井宏悦、梶田浩司、関口大輔。製作総指揮=亀山千広。原作=宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』(角川書店刊)。脚本=大河内一楼。撮影監督=吉岡宏夫。キャラクター原案=草なぎ琢仁。美術設定=小林誠、村田峻治、平澤晃弘。編集=瀬山武司。音楽=JUNO REACTOR。3D監督=白井宏旨。キャラクターデザイン=千羽由利子。音響監督=鶴岡陽太。色彩設計=内林裕美。総作画監督=千羽由利子。三谷亘(ワタル)=松たか子、キ・キーマ=大泉洋、カッツ=常盤貴子、芦川美鶴(ミツル)=ウエンツ瑛士、運命の女神=今井美樹、三谷邦子=田中好子、三谷明=高橋克実、ユナ婆=柴田理恵、ダイモン司教=石田太郎、犬ハイランダー=堤下敦、若い司教=板倉俊之、小村克美(カッちゃん)=虻川美穂子、小川=伊藤さおり、ラウ導師=伊東四朗、オンバ=樹木希林


 直木賞作家・宮部みゆきの長篇ファンタジー小説をアニメ映画化した。11歳の少年ワタルの異世界ヴィジョンでの冒険の旅。異世界へ向かった動機が、家族の悲劇を元に戻すためという点が、ポイントになる。自分の切実な願いをかなえるためなら、他を犠牲にしても良いのかという、重い問いが立ちはだかる。ひよわな主人公が試練に立ち向かう中で成長していくという物語だが、時間の関係で駆け足になり、うまく描けていない。映画化するのなら、原作を大胆に改変するか3部作にすべきだった。声優に人気俳優を多用した点も、やや疑問が残る。

 しかしながら、ストーリーはしっかりとしている。過酷な設定ではあるが、子どもたちにも伝わるだろう。そして大人たちは、あらためて現実を見つめることになる。GONZOのアニメーションは独創性はないものの、これまでの経験を生かしながら多彩な表現をみせる。少しアンバランスな点もあるが。不満は残るものの、全体としては及第点。健闘したと思う。この作品に、宮崎駿のような作家性を求めるのは酷だろう。


 カーズ 「カーズ」の画像です

 2006年作品。アメリカ映画。122 分。配給=ブエナビスタ。監督=ジョン・ラセター(John Lasseter)。製作=ダーラ・K・アンダーソン(Darla K. Anderson)。脚本=ジョン・ラセター(John Lasseter)、ドン・レイク(Don Lake)。音楽=ランディ・ニューマン(Randy Newman)。ライトニング・マックィーン=オーウェン・ウィルソン(Owen Wilson)、ドック・ハドソン=ポール・ニューマン(Paul Newman)、サリー=ボニー・ハント(Bonnie Hunt)、メーター=ラリー・ザ・ケイブル・ガイ(Larry The Cable Guy)、ラモーン=チーチ・マリン(Cheech Marin)、ルイジ=トニー・シャルーブ(Tony Shalhoub)、グイド=グイド・クアローニ(Guido Quaroni)、フィルモア=ジョージ・カーリン(George Carlin)


 監督は「トイ・ストーリー2」以来6年ぶりとなるジョン・ラセター。そしてピクサーのことだから、また新しい楽しさを運んでくれるだろうとは思っていたが、迫力満点のカー・アクションやかっこ良い生きざまも見せてくれるとは。高速道路への批判など、社会派的側面があり、子どもたちよりも、大人が感動する作品だろう。ピクサーの新作にはいつも驚かされる。

 といっても、ピクサーらしいユーモアは健在。オンボロ・レッカー車のメーターなど、個性豊かな車たちの振る舞いに笑わされる。この辺のつくり込みは、さすがだ。そして、エンドクレジットでは、「トイ・カー・ストーリー」など、これまでの作品の「カーズ」にちなんだパロディが流れる。ここで一番笑った。最後まで面白い映像があるので明るくなるまで席を立たないこと。

 「カーズ」の前に上映された4分20秒の短編アニメ「ワン・マン・バンド」も傑作。演奏合戦が見物。ひとつの作品として、立派に仕上がっている。得した気分。2007年夏公開予定の次回作の主人公が「ねずみ」というのは、買収されたディズニーへのオマージュかな、皮肉かな。


 プルートで朝食を 「プルートで朝食を」の画像です

 2005年作品。アイルランド・イギリス合作。127分。配給=エレファント・ピクチャー。監督=ニール・ジョーダン(Neil Jordan)。製作=ニール・ジョーダン(Neil Jordan)、アラン・モロニー(Alan Moloney)、スティーヴン・ウーリー(Stephen Woolley)。製作総指揮=フランソワ・イヴェルネル(Francois Ivernel)、ブレンダン・マッカーシー(Brendan McCarthy)、キャメロン・マクラッケン(Cameron McCracken)、マーク・ウッズ(Mark Woods)。原作=パトリック・マッケーブ(Patrick McCabe)。脚本=ニール・ジョーダン(Neil Jordan)、パトリック・マッケーブ(Patrick McCabe)。撮影=デクラン・クイン(Declan Quinn)。プロダクションデザイン=トム・コンロイ(Tom Conroy)。編集=トニー・ローソン(Tony Lawson)。音楽=アンナ・ジョーダン(Anna Jordan)。パトリック・“キトゥン”・ブレイデン=キリアン・マーフィ(Cillian Murphy) 、リーアム神父=リーアム・ニーソン(Liam Neeson)、チャーリー=ルース・ネッガ(Ruth Negga)、アーウィン=ローレンス・キンラン(Laurence Kinlan)、バーティ・ヴォーン=スティーヴン・レイ(Stephen Rea)、ジョン・ジョー・ケニー=ブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson)、ビリー・ハチェット=ギャヴィン・フライデー(Gavin Friday)、PC・ウォリス=イアン・ハート(Ian Hart)、シルキー・ストリング=ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)


 アイルランド問題は、イギリスに深く刺さった鋭いトゲだが、この作品は、血なまぐさいアイルランド問題を背景にしながらも、最後には軽やかで清清しい味わいを残す。政治的なテーマを真正面から取り上げるのではなく、一見お気楽に見えるゲイのキトゥンの生き方を通じて、相対化してみせたニール・ジョーダンの手法に共感する。

 真剣、堅さの政治の時代を生き抜くキトゥン。彼の信念というよりも持ち前の華やかさや柔らかさが印象的だ。深刻なテーマを、コミカルにさらりとまとめた監督のかっこよさ。アッと驚くような芸達者な名優を脇役にそろえて魅力も倍加し、懐かしいナンバーも効果的に作品を盛り上げていた。素晴らしくバランスの取れた作品だ。


 
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