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 ELECTRIC DRAGON 80000V「ELECTRIC DRAGON 80000V」の画像です

 2000年作品。日本映画。55分。配給=サンセントシネマワークス、タキコーポレーション。監督=石井聰亙。製作=仙頭武則。脚本=石井聰亙。撮影=笠松則通。編集=掛須秀一。照明=水野研一。美術=磯見俊裕。音楽=小野川浩幸、MACH 1.67。衣装=高橋ハルカ。ビジュアルエフェクトスーパーバイザー=古賀信明。レコーディングミキサー=大川正義。スーパーバイザーサウンドエディター=小川高松。TATTOO デザイン=ひろき真冬。ナレーション=船木誠勝 。竜眼寺盛尊=浅野忠信、雷電仏蔵=永瀬正敏


 美しくはあるが、石井聰亙監督のハイテンションを味わうことのできなかった「五条霊戦記」は、壮絶な落雷シーンで終わる。真の石井ムービーは、落雷の後にこそ盛り上がる、と思っていたら、本当に浅野忠信と永瀬正敏が共演し落雷で始まるやんちゃなパンクムービーをつくってしまった。「ELECTRIC DRAGON 80000V」。「電気と感応し爬虫類と心を通わせる男=竜眼寺盛尊」と「電気を修理し怪電波をキャッチする謎の男=雷電仏蔵」という2人の、奇想天外な電撃バトルが展開される。久しぶりに出会う石井聰亙の暴力的な映像に、文字通りしびれた。

 そして、ささくれだち、のたうちまわるエンド・クレジットがさらに素晴らしく、「スポーン」のめくるめくような炎のエンド・クレジットを思い出した。音楽がまたいい。本当の主役かもしれないと思うほど、ギンギンに響き渡っている。音楽担当の小野川浩幸と石井監督が結成したバンド「MACH1.67」に、浅野忠信が正式メンバーとして参加し、主題歌「Shock DNA」を熱唱しているのが何よりの証拠だ。


 コレリ大尉のマンドリン「コレリ大尉のマンドリン」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。129分。配給=ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン。監督=ジョン・マッデン(John Madden)。製作=ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ケビン・ローダー、マーク・ハファム。脚本=ジョーン・スロボ。原作=ルイ・ド・ベルニエール。撮影監督=ジョン・トール。プロダクション・デザイナー=ジム・クレイ。編集=ミック・オーズレイ。衣裳デザイン=アレクサンドラ・バーン。音楽=スティーヴン・ウォーベック。アントニオ・コレリ=ニコラス・ケイジ、ペラギア=ペネロペ・クルス(Penelope Cruz)、イアンニス=ジョン・ハート、マンドラス=クリスチャン・ベール、ウェーバー=デビッド・モリシー、ドロスーラ=イレーナ・パパス、カルロ=ピエロ・マッジオ


 古典を換骨奪胎する面白さを堪能させてくれた傑作「恋におちたシェークスピア」から、はや3年。再び映画の力をみせつける傑作に出会った。第2次世界大戦下のギリシア・ケファロニア島を舞台にした過酷な状況の中で愛を貫いたイタリア兵と島の娘のラブストーリー。戦火にあってもなお人々を平和につなぐ音楽の美しさを歌い上げている。美しい島の風景と残虐な殺人。イタリアとギリシャの文化の違い。そして、戦争と音楽。「コレリ大尉のマンドリン」という題名には、これらの対比が込められている。

 まず、いつまでも耳に残るマンドリンの愛おしい音楽。スティーヴン・ウォーベックの力作だ。そして医者を目指すペラギア役ペネロペ・クルスの輝き。少女が成長していく姿を自然体で演じ、さわやかさの中に俳優としての底力を感じさせる。父親役のジョン・ハートは、時代を冷静に見つめる老いた医師のえも言われぬ存在感をにじませる。主人公のニコラス・ケイジは、普段の押し付けがましい演技を抑え、誠実で陽気なイタリア人を好演している。その他の俳優も、皆素晴らしい。ジョン・マッデンは、私のお気に入りになりそうだ。


 ファイナルファンタジー「ファイナルファンタジー」の画像です

 2001年作品。アメリカ映画。106分。ギャガ=ヒューマックス共同配給。全米配給=コロンビア・ピクチャーズ。原作・監督・製作=坂口博信。製作=会田純、クリス・リー。COディレクター=榊原 幹典。脚本=アル・ライナー。音楽=エリオット・ゴールデンサル。アニメーション・ディレクター=アンディー・ジョーンズ。ステージング・ディレクター=タニ・クニタケ。VFXスーパーバイザー=レモ・バルセルス。アキ・ロス=ミン・ナ 、グレイ・エドワード=アレック・ボールドウィン、ニール・フレミング=スティーヴ・ブシェミ、ライアン・ウィタカー=ヴィング・レイム、シド博士=ドナルド・サザーランド、ハイン将軍=ジェームズ・ウッズ、ジェーン・プラウドフット=ペリー・ギルピン


 快挙だ。感動した。ハリウッド映画のCGでの新しい時代を切り開きつつ、ゲーム「ファイナルファンタジー」の壮大な生命観、高度な様式美を妥協なく表現している。すべての生命がつながっているというガイア理論は、ゲーム「ファイナルファンタジー」に通底するものだが、映画版でも中核をなしている。坂口博信監督自らが「自分に敵対するものを理解しようとする強さ」と語っている重要なテーマは、ハリウッド流の勧善懲悪とは違う重みを持つ。殺りくを止めようと戦場の最前線に立つ主人公アキ・ロスの姿は、「風の谷のナウシカ」(宮崎駿監督)を連想させる。ファントムと呼ばれる宇宙人の亡霊は腐海の虫たちを思わせるし、青と赤が感情のメタファーになっている点も共通している。

 ゲーム「ファイナルファンタジー」は、ムービー部分の美しさ、優れたデザイン性が高く評価されている。映画版では、その繊細にして迫力ある様式美が大スクリーンに展開する。とりわけ、アキが夢に見る幻想的なシーンのセンスの良さは比類がない。クライマックスでのファントムの不気味で、しかも魅力的な動きにため息が出た。何度観ても飽きることはないだろう。そして、人の表情を細密に表現したCGの見事さ。この点ばかりが強調されるのは問題だが、確かに新しい地平を開いたと言えるだろう。シド博士のシミやしわ、微妙な動きは実写と紙一重の水準に達している。半面、アキはまだ少しつるつるした感じが残っている。

 ハリウッド映画という制約から、いかにもハリウッドSFという設定になっている。宇宙人との戦いというテーマは、一見凡庸にみえるが細部を観ていけば、この作品の優れた独創性が理解できる。しかし、本当はゲーム版「ファイナルファンタジー10」のような象徴性あふれる世界設定、アジア的、幻想的な雰囲気の作品が観たかった。「10」の独創性に触れてしまうと、あの美しさに映画でも出会いたいと願ってしまう。ただ、苦労してつくり込んだ人物データを生かして、いわば俳優のようにさまざまな場面設定で使いまわすことは容易だろう。坂口監督が、そんな「2番煎じ」を許すかどうかだが、私は「2番煎じ」ではなく、それもCGにとっての新しい試みだと思う。


 ウォーターボーイズ「ウォーターボーイズ」の画像です

 2001年作品。日本映画。91分。配給=東宝。監督・脚本=矢口史靖(Yaguchi Shinobu)。製作=宮内正喜・平沼久典・塩原徹。エグゼクティブプロデューサー=桝井省志。企画 =石丸省一郎・藤原正道・遠谷信幸。プロデューサー=宅間秋史・関口大輔・佐々木芳野。撮影監督=長田勇市(J.S.C.)。照明=長田達也。美術=清水剛。装飾=鈴村高正。録音=郡弘道。編集=宮島竜治。音楽=松田岳二(CUBISMO GRAFICO)。鈴木= 妻夫木聡(Tsumabuki Satoshi)、佐藤=玉木宏、太田=三浦哲郁、金沢=近藤公園、早乙女=金子貴俊、静子=平山綾、佐久間先生=眞鍋かをり、磯村= 竹中直人、オカマバーのママ=柄本明、 杉田先生=杉本哲太、校長先生=谷啓、川村貴志、山崎勝之 、杉浦太陽、田中幸太朗、石原誠、松永大司、斉藤直士、北村栄基、山本力、森本政輝、西川祐也、金原泰成、星野広樹、鈴木祐二、斉藤羅慈、高鷹一雅 、影山智昭、西野正宗、平田賢、山本一輝、貴士、前田紘孝、石井洋輔


 埼玉県立川越高校水泳部が、文化祭で行っている男子によるシンクロナイズドスイミングからヒントを得た矢口史靖監督の新作。「裸足のピクニック」「ひみつの花園」「アドレナリンドライブ」といった、これまでのアクの強い、強引な展開とはひと味違う。ブラックなユーモアは、ほどほどに抑え、スポ根ものの素直なストーリー運びに徹している。そして、ラスト10分に及ぶシンクロシーンは、まさに圧巻。女性のシンクロとは、また違った力強くダイナミックな動きに魅せられた。

 最初は不純な動機で始めながら、次第にのめり込んでいく5人の男子が、それぞれ個性的。とくに主人公・鈴木を演じた 妻夫木聡は、はつらつとしていて気持ちがいい。男子たちのどたばた喜劇が中心だが、紅一点のヒロイン静子役・平山綾は、とてもさわやかで愛くるしい。男子たちにシンクロの基礎を教えるイルカの調教師磯村役の竹中直人だけが、『Shallweダンス?』並みの濃い演技を貫いた。しかし今回は、28人によるシンクロが、最も輝いていた。スポーツものの幅を広げる青春映画だ。


 チアーズ!「Bring It On/チアーズ!」の画像です

 2000年作品。アメリカ映画。98分。配給=東宝東和。監督=ペイトン・リード(Peyton Reed)。製作:マーク・エイブラハム、トーマス・A・ブリス、ジョン・ケッチャム。脚本:ジェシカ・ベンディンジャー。撮影:ショーン・モーラー。美術:シャロン・ロモフォスキー。音楽:クリストフ・ベック。衣装:マリー・ジェーン・フォート。トーラス・シップマン=キルステン・ダンスト(Kirsten Dunst)、ミッシー・パントーン=エリーザ・ヂュシュク、クリフ・パントーン=ジェシー・ブラットフォード、アイシス=ガブリエル・ユニオン、コートニー=クレア・クレイマー 、ホィットニー=ニコール・ビルダーバック、ダーシー=シャニーナ・ジェルソン、ケイシー=リニ・ベル、ジャン=ネイサン・ウェスト、レス=ハントリー・リッター、ラヴァ=シャマーリ・フィアーズ、ジェネロープ=ナティナ・リード、ラフレッド=ブランデイ・ウイリアムズ、アーロン=リチャード・ヒルマン、ビッグ・レッド=リンゼイ・スローン、カーヴァー=ビアンカ・カジリッチ、ブルース・シップマン=ホームズ・オズボーン、クリスティーン・シップマン=シェリー・ハーシー、ジャスティンシップマン=コディ・マクマインズ、スパーキー・ポラストリ=イアン・ロバーツ


 元気が出るというよりも、爽快感が味わえる青春映画。スポーツの傍役とみられていたチアリーディングを主役に据えた、新しいスポ根作品といえる。男女混合の妙技は、集団体操と呼べるほどに質が高い。そして派手な衣装を身につけて歌い踊るので、ミュージカルのように華麗に見える。最初から最後まで、楽しませようというサービス精神も嬉しい。ラストの盛り上げ方が今一つだが、押し付けがましくないと評価することもできる。

 主役のトーラス役キルステン・ダンストが、輝いている。なんて、可愛いんだろう。「ヴァージン・スーサイズ」(ソフィア・コッポラ監督)で自殺してしまうアンニュイで小悪魔的な少女ラックスとは対極的な、はつらつとした表情ときびきびとした動きが素敵だ。「インタビュー・ウイズ・バンパイア」(ニール・ジョーダン監督)からのフアンではあるが、ベテラン女優として順調に成長している。ミッシー役のエリーザ・ヂュシュクも大人びた表情が魅力的だった。


 シャドウ・オブ・バンパイア「シャドウ・オブ・バンパイア」の画像です

 2000年。アメリカ映画。93分。配給=日本ヘラルド映画。監督=E・エリアス・マーハイジ(E・Elias Merhige)。脚本=スティーブン・カッツ。製作=ニコラス・ケイジ、ジェフ・レヴァイン。製作総指揮=ポール・ブルックス。共同製作=リチャード・ジョンズ、ジミー・デ・ブラバント。ライン・プロデューサー=ジャン=クローム・シュリム。アソシエイト・プロデューサー=オライアン・ウィリアムズ。プロダクション・デザイナー=アシェトン・ゴートン。撮影=ルー・ボーグ。編集=クリス・ワイアット。美術監督=クリス・ブラッドリー。衣裳デザイナー=カロリーヌ・ド・ヴィヴェーズ。メイクアップ=カチア・レイナート。F・W・ムルナウ(監督)=ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)、マックス・シュレック(ノスフェラトウ役の俳優)=ウィレム・デフォー(Willem Dafoe)、アルビン・グラウ(プロデューサー)=ウド・キアー、フリッツ・ワグナー(2人目のカメラマン)=ケアリー・エルウェス、グレタ・シュレーダー(主演女優)=キャサリン・マコーマック(Catherine mcCormack)、グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム(主演男優)=エディ・イザード、ヘンリク・ガリーン(脚本家)=アーデン・ジレット、ヴォルフ・ミュラー(1人目のカメラマン)=ローナン・ウィバート


 嬉しくて嬉しくてしょうがない。吸血鬼映画の傑作が誕生した。古典的な吸血鬼のイメージを確立した作品である「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年)の撮影現場が舞台。しかも吸血鬼を演じた俳優マックス・シュレックが本物の吸血鬼だったら、というきわもの的なアイデアを膨らませながら、監督という仕事がまさに吸血鬼的であるというブラックユーモアに仕立て上げ、コメディ・ホラーの要素まで盛り込んでいる。思わず笑ってしまった「吸うか、吸われるか」というチラシのコピーは、意外に本質を突いている。

 設定もいいが、映像も凝っている。ドイツ表現主義の質感を楽しみながら、カラーの映像も端正で美しい。そして、なんといってもシュレックを演じたウィレム・デフォーの変身ぶりに驚嘆した。アクの強い役は見慣れているが、これほどまでの怪演に巡り合えるとは。はじめ怖くて、最後は可笑しい。傑作を撮りたいという恐るべき執念に燃えるムルナウ役のマルコヴィッチも凄まじい迫力だ。モルヒネに溺れる女優グレタを演じたキャサリン・マコーマックは、官能的でコミカル。また芸域を広げた。バンパイア役の常連ウド・キアーが出ているのも、無上の喜び。


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