詩編:未完のスケッチ
青のスケッチ
群青のスケッチ
灰色のスケッチ
降りなかった駅
今しがた 通った線路の沖合いの夜
沖合の夜 コールタールの人生の澱
静かに 雪は降り積もる朝に
夢の中に夕暮れ
血の滴るような夕べ一日
一日は今日も隔たり
肩を落としながら二人雨の夜に
雨粒が白い糸を引きながら野辺にて
野辺には夕暮れ
その時悲しみ
悲しいのはとある日
こぎれいな白い椅子の三月の一礼
みんな風の中で
歩き疲れ手紙
僕は公園で
もうすぐ花
柔らかな今朝の街で
春の日の時のなか
初夏になると春の日に
空からしたたる朝に
夕暮れよりも春の日に
今日一日の終りに
今日という日の労働を終えてある日
人も訪ねない故郷にて冬を迎える
おやすみ・・・・・遠くで
柔らかい緑の草地が続くある日
今日一つの思いが草原に身を横たえて
もう浮かび来るな朝に
やがて生まれ来る夜に
やがて落日
釣りをする人の竿の先に未完のスケッチ
12月の終わりの交差点で
また新しい朝だみんな何に耐えながら心の底の青空に
君の心の奥底には眠れない夜に
本当に朝は来るのだろうか有り難いこと
詩を綴り始めてからもうギャラリーにて
丁寧な手仕事の上には茫々とした風に
茫々とした風が休むことなく底知れず
思いはどれ程に溢れてくるものなのだろう笑い
笑いは憂い手品師
その日 心の煩いを祝福に
シェードランプから漏れたような仄かな明かりの中に高原にて
標高1800メートルの燕はとある朝に
目覚めれば僕を悲鳴
芽吹いたばかりの葉が風にもぎ取られてゆくときの悲鳴が迷い子
少しの間迷子になっていた朝霧
目覚めとともにまた忘れ行く日々に
忘れ果てて行くこと白い羽
可憐な花の下にも影がある革の鞄に
この見窄らしく小さな革の鞄にクローバー畑に寝ころんで
野原の一隅をポケット時間
優しい春雨に隠された部屋で欅に
すみれ色の空が裸の欅の梢に夕日に
夕日が川面に落ちている雨の朝に
いつの間にかもう朝だ桜色の夕日に
車は帰路にあって風が吹いてくる
風が吹いてくる夕暮れの野原に
楕円の夕日が稜線に落ちて行くと雨の一滴に
さっきまで降っていたにわか雨が悲しみと雨と
雨が降っている雨の朝に
高い雨音に目覚めた朝小さな窓
駅舎の高いところに見つけた小さな窓列車に乗って
先ほどから降り始めた雨は少し冷たく朝日の昇る頃に
暗く凍りついた水面に触手を拡げ25年後の春に
25年後の春の空はとある日に
野球場に歓声がこだましている君が走っている
君が走っている冷たくはない雨に
いつの間にか降り出した雨が朝日の中で
レースの細かい網目でも眠れる処
眠りの中にも青空を見上げながら
大きく枝を広げた物語の終わりに
僕はそこでいつの間にか雨は
いつの間にか外には 雨が降っていた一冊の本に
もうカバーも取れて銀色の時計に
逃れるように僕の腕から引越し
1年僅かの短い暮らしが時間の化石
いつの間にか針を止め風吹けば
悲しさで一杯の 僕なのに通り雨
突然に空を 黒く変えた通り雨は飛行機に
今朝あますことなく 大地を濡らした青い虫
今朝 青い水をなめて公園で
あれはさっきまで 僕が座っていた木のベンチ夢の続き
いつからか 僕は春の岬
灯台の光も届かない水平線に目の中から
もうそれは 持っていられなくなって風の委託
僕の詩は魂の買い物
ベランダにはじょうろが投げ出されていた