風のささやき

通り雨

突然に空を 黒く変えた通り雨は
翼光らせる つばめの羽ばたきに
連れ去られて 遠のいた
濡れた鉢植えの 緑が洗われてまぶしい 
つつじに隠れていた
蜜蜂が恐る恐る羽ばたくと
それを見送る僕の顔には
置いてけぼりで 迷子になった
涙のような 最後の雨粒

その冷たい 驚きが
小さく 僕の心に弾けた
透明な音色をたて
木々の緑をひきながら
頬の熱を奪い滑って行く 水滴

突然に 胸に飛び込んでくる
毎日の新しい驚きは
僕の胸に 投げ込まれ
波紋を広げる 小さな石つぶて
誰がそれを 投げかけているのか
分からないままに

受け取る 僕の心が
青く静かな 水たまりのようであれば
すべてが 僕の心を震えさせてくれる出来事

投げこまれ 生まれる音色は
一つ一つの 言葉の断片に姿を変えて
僕の目の前の世界を
見たことのない場所へと 押し広げてくれる

きっと僕がまた
新しい驚きに 震えていられる場所に