風のささやき

星が見えない。
暗い夜空に。
切りとられた狭い
ビルの谷間の視野から。
星が見えない。
咳こむような工場の煙や
車のガスが覆い隠して。
星が見えない。
毒々しいネオンや
街灯の明かりに目を奪われて。
星が見えない。
騒がしいだけのこの街の空には。

(美しいものが消されかけてゆくのに
 どうしてそんな
 馬鹿騒ぎをしていられるんだ)

空が回転をして
朝になる。
車や人間達が地上をまた
我が物顔に蠢き出す。
空には薄墨色の青空。
わずかに残っていた星も
また見えなくなった。