風のささやき

時のなか

初夏になると
小さな庭を明るくするように
高く咲き誇っていた向日葵を
僕の背丈はいつしか
追い越していた
その花影から小さくなって
見上げてみても
僕の上の小さな太陽を
もう眺めることはできなかった。

去って行くものには
いつでも僕は
無力に手を振るばかりだ
それを引き留めるすべも持たずに。

昨日愛していた者の心も
今日は離れたと知って
流した涙の悲しさも
忘れて行くことを
時は生活の中
体に覚え込ませる。

今
頬に感じられる風や
暖かい陽の光りにも覚えた
ときめきを失い
ありふれた生活の中で
喘ぐときに
時の中で浮きつ流れする
自分の姿を思う
僕はとどまらないと
この心も体も
一つのところには。

そうしてそれは僕が
変わることができるということ
今日の醜い僕も
明日の朝日に起こされて
新しい一日を
夢見ることができるということ
今日の悲しみが
明日には喜びに
生まれ変わることが
できるということ。