風のささやき

ギャラリーにて

丁寧な手仕事の上には
秋の午後の陽射しは止まる
ただ穏やかな陽だまりは時空を超える

一生懸命な指先の作業は
日々の物との対話
それぞれの指にはいつの間にか
金色の神仏が宿り
微笑んでいる金輪宝が光り輝く

その技はもはや人を超えている
自然が図らずも生み出す
豊穣の造形以上に高められて

それは真剣な日々の営みの
単調な繰り返しの先に
花開いた野の花であり
脈々と続くより良い暮らしへの希求
憧れでありその中に見出す慰め
美しさであり日々の喜びであり

あけびが口を開けて笑った
山ブドウを摘んだ指先が紫に化粧した
赤とんぼの空
色づく縁取りの山々の木々
渋柿でも美味しく食べられる方法を考え
新米の恵みのありがたさ
すすきは風に揺られて
色なき手触りを伝えている

すべてが混ざり合った
この土地の透明な空気を
胸一杯に吸い込んで
子供は笑いながら走る
その血の中にいつの間にか
取り入れられている酸素の泡沫は
いつしか記憶として蘇るために
暫しを眠り

ありがとうその営みを
積み重なる美しさの堆肥の中から
ひっそりと美しき蕾は花開き
やがて棚蒔く時を夢見る
まだ見ぬ次の人のために