風のささやき

冬の日に

冬の日の午後の
ベンチの上に
そこだけが切り放された
空間のような
暖かな日溜まりができていて、
僕はその中に体を温め
葉を落とし尽くした木立の
きめの荒い肌を眺めていた。

執拗に続く
苦しみに煩う者には
死は一つの優しい慰めに思われるから
柔らかな光りを浴びながらこのまま
何も思わずに僕が
朽ち果てて行くことができるのならば
何も騒がない静けさのほとりに
安らかな気持ちで
眠り続けられるのならば、
けれどもその時に
僕の苦しんだ生は
誰にも知られず何処へ
ゆくのだろうか
赤い血潮を流しながら
空の一番深い所まで
昇ってゆくのだろうか。

生きている者達は彼らの時間の中で
死を迎えた人々を忘れ果ててゆくから
彼らが語り得るのは
彼らの記憶に残る
死者たちの面影だけだとしたら
生きている時に感じていた痛みなど
何処にもなかったのだろうと
だから
悲しむ思いは堪え忍ばれて
死を迎えればいいんだ
愛そうとするものを
損なってしまうような
罪深い心と伴に・・・・・