風のささやき

夢の続き

いつからか 僕は
眠っているらしい
青く涼しい 昼の蝉が
耳の奥 静かに降り続いている

これは夢の続き
僕はまだ まどろんだまま
縁側には すだれが風に揺れ
時折 熱い息を吐く
陽射しをさえぎる 仕事には疲れ

手足の黒い少年が
その合間に 見え隠れする
冷えたスイカを 食べては笑う
聞こえない会話の 真っ白な歯が
迷いのない声を 空に送っている

庭に取り残されて
ぐったりとした ダリア
容赦のない陽射しに
こげた匂い漂わせる 野の草

陽射しが和らいで
花が背筋 またのばす夕方に
懐かしい人の
お墓まいりに 行こうかと思う

田畑には 黄金色に実った稲
もう刈られるのを 待つばかりの
案山子は やる気を無くすばかりで

通りすぎる 二両編成の列車を
いつまでも 待ちわびて鳴る
閉まったままの 踏み切りの音
夢の中にも 忘れてきてしまったものへの
諦めきった 警笛のように

白いシャツ 一枚だけの
肌の上 流れて行く
汗の一滴にも 
まばゆい 夏の太陽が宿り

その汗を 拭い去ってくれた指は
僕の指 それとも母の
そのまた父の あるいは
みんなが溶け込んだ 柔らかな風の指

寝返りをうつ手足も ものうい
僕は いつまで
夢と夢の間を 漂えばいいのだろう
どこかで風鈴が なっている・・・・・