風のささやき

手紙

僕は
手紙を書いている
白い便せんに
何度も何度も
言葉を重ねて
嘘のない思いを
伝えたくって
白い紙が
真っ黒になるまで
費やされて行く
幾千もの言葉のなかから
一つの言葉が
結晶のように
生み出されるまで
僕は
震える手で
手紙を書いている
白い便せんに
何度も何度も
言葉を重ねて
受取人の
体の中にくいこんで
生きていって
くれるような言葉で
ぎっしりと連ねた
ずっしりとした重さの
手紙を書きたくって
人々や自然のなかで
閉ざされたり
ぶつかったりをしながら
きしむ小さな心の中から
幾つも幾つも
言葉をつかみとってきて
僕は
手紙を書いている
震える手で
幾千もの言葉に
長い時間を費やし
時折は
寒さに目眩を感じながら
今日も僕は
手紙を書いている