風のささやき

風吹けば

悲しさで一杯の 僕なのに
風は 心地よく僕の肌を流れ
風よ どうしてお前は
こんなに小さな 僕でさえ
いつも忘れずに
お前の懐に 抱き寄せてくれるのだろう
何も言わず そのままの 僕のまま

青空はいつの時も 言葉無き慰め
うなだれた顔を 何度でも天に向けようとする
触れることのできない 永遠の誘い
僕の迷いで がんじがらめの思いも
すべて受け止めて 汚れ無きまま
静けさを一杯に 漲らせて

川の尽きない せせらぎは
楽しい 歌い初めへの招待
誘われて 大きくなっていく歌声の輪唱

陽射しの明るい午後は
穏やかな一時の まどろみの約束
目覚めた後には 新しい生への
一歩が踏み出せる 深い憩いの

一人になったように 思われるやるせなき時間に
そっと僕の肩 闇に溶かし込む夜
僕を悲しみの 研ぎ澄まされた牙から
守ろうとしてくれているのか
そっと闇の中で 息を潜めるように告げながら

静かに 思い返せば
明らかに 僕らに心を
砕いてくれる たくさんのものたち
僕らの生を 肯って止まない
その尽きることの無い 優しさの
奥底にあるものを 
しみじみと 覗いてみたい