風のささやき

夕日に

夕日が川面に落ちている
目を開けていられないくらいの炎の色だ

石を投げた波紋も赤い
広がっていく輪が僕の方へ
親しみをこめてむかってくる
 
空も青さを失って
すっかりと赤茶けた色をしている
一番星も赤い息を吐いている
 
けむくじゃらの犬も赤い装いだ
空を走る電線が
夕日の中に溶け込んでいる
 
どこかへと帰っていく
車の列をすすきが静かに見送っている
 
高速道路の上
随分と速い速度で
まだ遠い道のりを
走らなければいけないのだろうか

そんな疲れもきっと
こんな夕陽の中では燃えてしまい
 
かすかに心に残る灰が
今日のわずかな心残り
風に吹かれればそれも
きっと飛び散ってしまう
 
僕の頬も赤い
口の下の切り傷も赤い
うさぎのように目も
髪の毛さえも赤毛になっている
 
夕日はすべてのものの上に
重なりあって

僕らはただそれを受けて
色を変えるばかり

きっと毎日に人は
たくさんのものと
重なりあい生きている

その度に思いを
時には風采さえも変え
豊かさを少しずつ
胸にため込みながら