風のささやき

青い虫

今朝 青い水をなめて
触覚を洗った
青い虫が死んだ

赤い大きな花の影に
風も気づかず通る 
こけももが腐る 湿った土の上
広げた手足は 何を最後に
抱こうと欲した
背中に染み込む 青空の模様は
後悔にひび割れ

突然の 目眩のような墜落
お前の空からの失速を
飛べなきものよと
永く生き長らえる
天と地は笑ったのだろうか

おまえの薄れゆく視点に
どんどんと迫る大地
打ちつけられて 息を止める肺

土くれと見間違うだけの
青い虫の死骸
働き者のありにさえ
気づかれることなく

明日の朝日が 大気から集めた露で
お前の体 レンズのように
光らせるとき

お前は その露に体を清め
かわいた喉を潤して 
空高く 帰るといい
地上で覚えた仕草は
もうお前を 縛りはしないから