風のささやき

訣別の朝

朝に目覚めて
汚れが目立つしみだらけの
白いカーテンを引く
窓を開けると
あちらこちらに
秋が横たわっている
小さな木の葉の
一枚さえも染め抜いて
秋が深く染み着いている
ー夏は消えた
 夏は過ぎさった

今まで変わらずに
見ていた空も
あの並木も
あの家々の軒並みさえも
妙にわびしい
寒いもののように目には映る
ー夏は消えた
 夏は過ぎさった

秋の風が吹いてくる
秋の風は首に冷たい
僕は身を少しかたくして
その風を受ける
ー夏は消えた
 夏は過ぎさった

電線の上には
黒い鉄砲玉のような
カラスが止まっている
ー燕は南へ
 すでに飛び去ってしまった

そのカラスが
翼を広げて
一声大きく鳴いた
飛び立ってゆく前に。

ああ そうだ
カラスはあのように不吉に
寂しげに鳴くものなのだ。