風のささやき

時間の化石

いつの間にか針を止め
時を語ることをやめた
セピア色に煤けた時計

螺子を巻いてみたところで
もう秒針さえも
動かす力をなくした
時間の化石

「いつまでも動いていたかったよ」と言い
「もうこれ以上は動けなかったよ」とも呟く

そのため息とも後悔ともつかない声を
耳の奥に聞いている僕は
一人時計を眺めながら慰めとも
諭しともつかない言葉で囁く

「それでも もう
 君の時間は
 終わりは終わり」と

この古ぼけた時計を
僕はどこかに
処分しなければいけないね
いつまでも文字盤を眺めては
一人クヨクヨと
思い馳せてしまいそうだから

できることならばまだ
クヨクヨとしていたい未練はあるけれど

もう 終わりは終わり
どんな呪文を唱えても
化石となってしまった時間は
動き出すことはないのだから