風のささやき

故郷にて冬を迎える

おやすみ・・・・・
窓の外を静かに降る雪の下
冷たくなる大地が
一冬の眠りにつく
山肌に骨のような木々は身を細く
田畑の間に家々は
白い重さを受けとめるため
その背丈を低くする。

(気まぐれに冬が
 頬を押しつけて覗く室内には
 小さな電球が一つ点り
 まだ温もりの残るストーブの側では
 猫が背中を丸めて
 うたた寝をしている)

眠れない冴えた頭で
布団の中に忍び込んでくる
冷気を感じながら
目をつむる僕は
まぶたの暗闇に
風に散り散りになり
野山にと降り落ちて行く
雪の舞いを
思っていた・・・・・

(また雪が降っているね
 また降っているね・・・・・)

僕らの祖先もその身を置いた
時間の中に紛れ込み
僕はひっそりと
息をひそめて
その白さに埋もれてゆく・・・・・。

日々の慌ただしさに
忘れかけている
生の営みの重さと確かさを
穏やかに息を吸い込む
胸のあたりに感じながら
おやすみ大地よ
めぐりくる春がまた
お前の上に
新しい顔を与えてくれる時まで。