風のささやき

街で

春の日の
暖かかった午後が
終わりかける
淡い陽射しの夕暮れに
家路へと帰る道を
流れて行く人波が
すれちがう合間
見覚えのある顔を
見たような気がして
心臓をつかれたように
急いでいた足を止めた
僕の瞳には
けれど
いつもの人ゴミがあって
一瞬の間
帰れることのない日々へ
呼び帰された心は
戻りたがっていた
あの時の
あの顔をした僕へ
あれはもう昔に
はりつけられたままでと
告げる静かなあきらめに
しめつけられるように
夕日に肩を
落とすようにして