風のささやき

いつの間にか雨は

いつの間にか外には 雨が降っていた
僕はそれと 知らずに
穏やかな夢に 眠り続けていただけ

いつの間にか外には 雨が降っていた
いつまでも 目を閉じていたいままの
僕の耳の奥 忍び込む雨音に
生贄の震えた声が 蘇る

夜半のいつから 冬の空濡らす
冷たい雨の 降り始め
軒下の猫の毛並みも 小枝に眠る小鳥の羽も
葉の一枚さえつけない街路樹
公園のブランコ 滑り台も
身震いをしながら
みんな空を眺めていた 恨めしげに
当たり前のことさと  雨だけは
おかまいなしに 屋根の上に音を立て

人生にも気づいた時には 雨が降っていた
いつの間にか見る人の顔は 涙に濡れたようだった
きっと最初から みんなの顔には
休むことなく 冷たい雨が降っていた

けれどそれを 気がつかないままの
僕は誰の傘の中 雨宿りをしていたのだろう
その人は雨音さえも 僕の耳から遠ざけた
きっとその人の呪文が 僕の耳栓になってくれていたから

ほんとは雨は 降り続いていた
いつの頃でも 降り止もうとはせず
音を立てながら しとしとと

そうして今の僕には 子守唄よりもはっきりと
目をつむればいつの時も 雨音が耳に沸いてくる
コポコポと 夜半に
尽きることない 誰かの涙のように