風のささやき

朝日の中で

レースの細かい網目でも
捕らえ切れない朝日に
横顔を白く燃え立たせている少女
椅子に座って背筋を伸ばした様子は
まるで窓辺に活けられた
一輪の芳しい白百合のようだ

両手には開かれた小さな単行本
その上に注がれる眼差しは
気恥ずかしい程に真面目で
一文字に閉じられた唇は
これから生まれ来る言葉を待っているようだ

うつむいているその面持ちからは
時折希望が零れ落ちている
まるで暗い星空を流れ星が明るませるように

きっとあなたの心には
飛び込んだ一つ一つの文字が
金色の光で火照りだすのだろう
だからあなたは薄い紅に頬を染めて

もう言葉を手垢だらけにしてしまった
僕の心では輝きを失くした言葉
あなたの心は味わいつくしているんだ

今は遅い人々も目を覚まして
朝の食卓へと向う時間
けれどあなたが目を通す本は
どんな美味しい食事よりも
貴方を満たしてくれるのだろう

あなたは時折本をおいて
窓の外に耳を澄ませる
窓の外に続く森の緑へと遠く
そうして何かの音信を聞いては軽く微笑んでいる

それは風の音だったか
昆虫の羽音だったか
あるいは湧き水の透明な色合いだったのか

あなたが手にする本の言葉は
きっと未来からの手紙
あなたを高みへと招こうとする

そうしてそれは
遠い昔の人からの手紙
あなたの人生の幸いを願う
人々の思いの重なった